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七人の魔女と一人の転生者。  作者: しじみかん。
嫉妬の魔女
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第七話 勇姿

「おはようございます。夢乃あゆむさん」


「おっす! おっす!あゆむっち!」


 ……? 朝か……寝た気分がまったくと言っていいほどしなかった。それもそのはずで、両サイドに美少女が二人寝ているのだから、そこで寝ろ! と言う方が無茶な話だわな。

 起きても今いるところに日差しは入ってこない。そもそもこの世界に来てから時間と言うものが全くと言っていいほどわからないでいた日付も含めて。それでも大体の時間の把握はあたりを見渡せばよいとしているために、必要性というものが全く感じられないでいた。


 携帯電話を持っている意味がほぼなくなっている気がするな。このような江戸時代のような世界だとある方が不便なのかもしれない。便利と不便も紙一重のような感じがしてならない。要は携帯はこの時代では、お荷物の可能性が非常に高いということだ。


 起きてからアーロンがすでにいなかった。どうやらもう街に出かけているらしく、いつも朝早い時間になれば、そのように偵察や情報収集のために街にでているみたいだ。熱量が俺を超えているのは、確かにあるし、俺が入っていい争いなのかも不安になってきていた。



「あゆむっちって寝坊助? なんか笑えるんだけど!!」


「あゆむさん、ボーっとしていますね。疲れ取れてないように見えます」


 

 まさかの突っ込みをされ、驚く俺に笑うフローラとリアムの両名。ふと、この生活を見て楽しさも少なからず抱き始めているのもあったりする。環境や場所は非常に悪いところで、明日よりも今日を生き抜くのに必死なのにも関わらず、こうして笑顔だけが満ち溢れている。本当は嫉妬の魔女がしていることは、正当性あってのことなのかもしれない。そう、考えるようなところが少しあるのかもしれない。

 ただ、思い返せば牢獄に閉じ込められている子たち、民衆は非常に魔女に怯えている毎日、それらを見て今のこの環境にYES! とはとても言いずらい。


 悩めば悩むほど、悩みが増えていく気がして、頭を掻きむしりヤッケになって立ち上がる。



「あ~! とりあえず、俺も街散策しにいくわ!」


「それはいいけど、あゆむっち、今街では警備体制が機能よりも高くなっているらしいよ?」



 しまった。昨日のことが今日にやってくることは誰しもがわかることだったじゃん。

 思いっきり立ち上がった俺は、その事実を知るや否や胡坐をかき始める。すると、フローラから料理ができたと話してくる。


 三人で食べ始める。昨日のようにリアムは俺に向かって食器を渡してくる。怯えている表情はないのだが、俺は手をず~っと睨むところを見ては、変な顔をし話してくる。



「やっぱり、冷たいのかもしれない?」


「手を触らせて、そこから判断する」


「わかった」



 思った以上に冷たい。俺には、身体的な機能に関しては、からっきしなので冷たさの度合いもわからない。ただ言えることとしては、明らかに人とは違う冷たさが感じ取れるということだけだ。

 フローラはこちらを不思議そうに見つめる。彼女の手を触り、温度を確かめるのもありなのだが、なぜか俺にはそれだけはできずにいた。単純に好きになってしまいそうだからしかない。


 そもそもリアムの手に触れてる時点で変態なのかもしれないのだが、そこはおいておいて欲しい。俺の考えもある。ないかもしれないけど……


 食事を終え、やはり街を見に行きたい俺は二人に話す。



「正直俺も突入するわけだし、今の街も知りたい。だから、いけないかな?」


「ん~アーロンが何ていうかわからないけど、とりあえず無茶なことをしなければいいかもしれない」


「よし! じゃーいこう!」


「あゆむさん。さすがにそのままはアウトに近いので、布被るだけでもしましょう!」


「そうだな」



 軽い感じで決まる。アーロンがここにいたら、どうなっていたかなんて見当が付かないが、それでも現場を見たいのが何よりも強い。


 俺とフローラは軽い身支度を済ませ、リアムの後に続き城下町らしきところに出た。人は結構いるし、賑わいを見せているが、どこか悲しさが感じ取れる。質素という言葉よりも質素であるように見てわかるくらいに貧相な国だ。一番上のお偉いさんは、悠雅に紅茶なんか飲んでいるのなんて、ここに住んでいる人達は知っているのかだろうか? 知らない可能性の方が高いのかな~


 そう思いつつ歩き続けていると、一枚の紙が上から流れ落ちてくる。何かと思い広い見てみる。



「なんだこれ……」


「どうしたのあゆむっち?」



 そこに書かれていたのは、俺とフローラの特徴だった。どのような見た目をしているのかも書かれているために、ある意味指名手配のレベルの状態だと、それを見て気づく。

 横にいたフローラも落ちていた髪を見て驚く。


 すると間髪入れずに、兵士の流れがこちらに向かって歩いてくる。それを見た民衆は膝を付き顔を見せないようにして、お辞儀をしていた。兵士が去るまで永遠と。

 リアムも俺とフローラに同じようなことをするように話されるので、端により同じことをする。そのまま立ち去ると思いきや、まさかの俺とフローラの目の前に先頭の兵士が立ち止まる。


 現状相手の足しか見えてないのだが、それだけ見てもこちらに体が向いているのがわかる。絶対絶命とも思えるような状況に、朝一発目にして遭遇する。もしここで正体がばれれば一貫の終わりだ。なんとかして、立ち去るように願うだけしかできずにいた。

 だが、不運なことに兵士は俺らに向かって話し始める。



「そこの布に覆われし者たち、顔をあげよ!」



 やばい、終わったかもしれない。そう思いながら、顔をあげ兵士を見つめる。大体30人くらいがそこに整列していた。先頭の一人だけがこちらを見るや否や持っていた紙と俺とフローラを見つめた。

 その後に兵士は俺たちに問いただす。



「この紙に書かれている者を知らないか? 旅人よ」


「知りません」


「そうか、ただ特徴が非常に酷似している。そなたたちではないかね?」



 さすがにまずい質問された。結局このパターンかよ。

 非常に絶体絶命の状態の中、ある者たちが俺に勇気を与えていた。左側にリアム、右側にフローラこの二人が、俺の来ている布の端部分を少しだけ握っていた。

 俺は引っ張られる感覚が少しあったために気付いたことだった。それを知ってから、なぜか安心という感情に逆に支配された。


 支配なんていう言葉を良い意味で使ったのなんて、今日が初めてだわ。それにこれが最後にしたいわ。

 俺はなぜか、自分でも不思議なくらいに戦士に向かって普通に話始めていた。



「絵も描かれていないし、そのように文字だけでしか書かれていないと、似ているものばかりだ。それに俺たち旅人のようなものは、この地に住んでいないので、余計に酷似することもあるだろう。第一に俺たちは今日初めてこの地にやってきた。初めて来た土地で疑われたら、きついものがあるぜ?」


 兵士は、俺のいった言葉に対して考え込むようになり、次なる質問がやってくる。


「なら、証明が欲しいのだが? 何か今日来たという痕跡が欲しいあるはずだろう?」



 この地も証明が欲しいのですね。きっついわ~

 どうしようか考えた矢先ポケットの中に携帯があるのを思い出す。今考えたことを一か八かで使ってみることにした。



「今俺が持っているこの小型のものは、記録するものだ。この地では普及されているように見えないから、一応伝えておくけど、他の国ではもう必需品のようなものなんだ。こうして、画面を点灯させて、数字が表示される。二つ表示されるのだが、下の数字はこの地に来たときの数字で、上の大きい数字は今を表す数字だ。この差が少ないと感じないか?」


「そうだな。10しか違いがない」


「そうだろ? だとしたら、この地に来てまだ10しか目盛りが進んでいないんだわ。わかるだろ? 俺の言いたいこと」


「つまり、ここに来てまだそんなに経っていないということか……」


「御名答! 素晴らしい答えだ。これが今俺にできる唯一の証明だ」


「申し訳ない。証明できている。ではこの場を去ることにしよう。疑って申し訳ない旅人よ」


「いえいえ。わかってくれればいいんですよ。わかってくれればね?」



 その後兵士たちは、何事もなかったかのように去っていった。クッソ見たいな嘘つきで……

 やっべ、またやっちまった。嘘ついてしまった。咄嗟の判断で出てきたこれで、引っ掛かる相手も相手だけどな。たまたま、カレンダーと時間の差がそこまでなかったにせよ。結構無茶苦茶な嘘だよな~


 気分落ちている俺を置いて、両サイドの二人の行動に俺は腰が抜け、地面に落ちる。


「「すっご~い!!」」


「いた!! 何!? どうしたの!?」



 フローラもあまりしない口調が出てくるものだから、より驚く俺。まさかの両サイドからの抱き着きで尻餅をつく、二人の顔を見ていると、癒されると同時に何かの達成感を抱き始める。

 目を輝かせて、俺を見ている。救ったのかもしれない。もしかしたら……っと思っていたが周りの人たちが、こちらに向けて拍手をしてきた。



パチパチパチ


「素晴らしい。素晴らしいよ。あんちゃん」


 一体何が起こっているのかわからず、ボー然とその光景を見ている俺にリアムは話す。


「今の行動は、本当だったらやられるんだよ。兵士に目を付けられたら、そのままあの世生きだよ。それが、まさか生きているだなんて。信じられないよ。これは周りの人達も例外じゃないよ。かくまった。それだけでやられかねないんだもの!」



 なんだかよくわからないけど、一部の人たちだけの盛り上がりだったが、非常に俺自身もうれしい感じを抱くようになった。人助けをまた意図もせず達成した瞬間だった。


 その後、兵士との対面もなく、単純に気分があがっていたリアムは色んな人から情報を聞きまわっていた。それも、楽しそうにしていた。それを見てはフローラが通訳のようにして俺に話す。



「初めの私と同じです。リアムさんも同じように救世主を求めていました。昨日あゆむさんが来たことにより、アーロンさんたちは非常に活気に満ち溢れていましたが、怪しがっていたというのが本音何でしょう。怪しいというのも、本当に達成できるかわからない感情が渦巻いている状態、でも、あゆむさんはやってくださると信じていたのですから、あのように気分が跳ね上がるのは普通のことですよ」


「そっか、俺の力なのか……」


「はい! あゆむさんの力です! これでまだ魔法の力をだしていないとなると、ん~ 果たしてどれくらい素晴らしいものなのでしょうかね? 興味湧きます。でも、秘密にしておいてくださいね。楽しみがなくなってしまうので!」



 フローラでさえも、この調子。俺の魔法の力、俺の力か……

 自分自身でも、考えれば考えるほどそれは謎であったりする。そもそもそんな力がどこにもないと考えているため、嘘をつき続ける状態が続くのが非常心では辛いものではあった。


 これを誰かに言えば、俺だけではなく他の人も瞬時にあの世に逝くことになりかねない。そもそも出会った村人たちも嘘と知れば、軽蔑するに違いない。俺はどこか大切なものを失う可能性があると、心での葛藤が日に日にましていった。


 その日の夜、アーロンの持ってきた情報を踏まえて食事をしていた。まずは、アーロンからの情報で、俺らの知っている情報である。指名手配そして、城内のルートについて事細かく記されていた紙を出した。

 そこに非常に有意義なものが書かれていたメモがあり、アーロンはそれについて話す。



「この食事が終わったら、また外にでよう。今日の夜にスーは飛び立つ」



 そう言われ、俺たちは外に出る。すると、城から爆音が響き渡り、スーを筆頭に兵士たちが列をなして城門からでる様子が見て取れた。その数は非常に多く、俺がいた村の最初に来ていた兵士の何百倍もそこにはいた。アーロンによると、大量の兵士で行き帰りをするらしく、途中で別れて生贄を捕まえに行くようになっており、ただ、森に入ることが絶対条件な村も存在するため、行きの兵士と帰りの兵士では、かなりの数が絶えていると話す。


 それくらいに魔獣はひどく強く、数も多い。そこまでして魔女は生贄が欲しいのだとアーロンは話す。

 俺らは元のアジトに戻り、リアムの今にでも話したそうな雰囲気をアーロンが読み取る。内容は、先ほどあったものだ。


 それを聞いてから、アーロンの表情は硬いものから驚きのものへと変わる。



「さすがだ。本当に欲しい人だった。この人がいれば、間違いなく!」


「そうだよ! あゆむっちがいれば、間違いなく攻略できるよ!」



 アーロンも喜びに満ち溢れているのが見て取れた。


 っという状態の中、寝床につく本番は明日なのだが、俺の本番は今日になりそうだった。何が何なのか?という疑問が浮かぶとは思うのだが……


 昨日以上に寝床がある意味窮屈になった。位置は変わらずだが、昨日とは違い腕を抱くようにしてリアムは睡眠を始める。予想というものがつくかもしれないのだが、まずは腕が胸と胸の間に入り、伸ばしている指の第二関節付近が下半身の位置にあるのが、俺にはわかった。


 それを見ていたのか知らないが、フローラも同じような体勢になる。先ほどと同上だ。第三のは空を見上げている状態で、息をするのもツライと思えるくらいに心臓がバクバク脈を打つのがわかった。

 ここまでされて、行動しない俺も俺だが、どうしても一線を超えるのは何よりも勇気が必要だと、昨日そして今日踏まえて感じるのだった。


 俺……持つかな……

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