第七十七話 決意10
そこに現れたのは、これまた小さい少女だった。くまのぬいぐるみであるルーシィ筆頭に、フローラと俺も互いを見ては、驚く。
「原型ないといっちゃろ」
「あまりにも幼女が過ぎる。これが本来のマリリンなのか……」
「そうだじょ!」
「この国に来てから、魔女の性格は嘘偽りってことがわかった。どこにも本当はいない!」
俺はつい、本音を吐露した。それを後ろから気に食わないような表情をしながら凝視する視線を感じた。
「あゆむさん。そういうこと言うのは、時と場合がありますよ」
ルーシィはそういう。
「ソウデスネ……」
今はそれどころでないことを知ってか、俺は一言発しては、その場は終わる。そして、今後のことに関して話し合われた。魔法はある程度の制限を付けるが、そのままだとすることから、マリリンは微量ながらも、こちらに力を渡すようなことまで。
様々なことが話合われた。どうやら、マリリンの本来の姿は、幻惑の中で表れたモデルさんのようだ。魔法を下手に使いすぎて、小さくなったらしい。
もともとそこまで魔力がなく、いつもひいひい言いつつ発動していたとのこと。
そしてこの国での幻惑の中で起きていたレジスタンスは、マリリンの所属していた部隊だということも知る。
過去を聞けば聞くほど、その生い立ちを考えさせられる内容だった。魔女の大半はそれだからなおのこと辛いところがある。スーのことに関しては、気が付けば幻惑の国の中に入っていたこともあり、今もどこかにいるが、終わったこともあり、姿を見せる間もなく国から去ったとルーシィは察知能力を用いて情報を俺に知らせた。
強欲の魔女マリリンは、思った以上に話のわかるもので、なおのこと、暴走していたことに対して、こちらの胸が痛くなる。ただ、机を挟み会議している場で一つ気がかりなのが、その立ち位置だ。
「なぜ、そこなんですかね? 殺しますよ?」
「過去からかわりましぇんね~ さすが無差別殺戮魔女」
「あなたに言われたくはないのですが……」
フローラとマリリンは仲が良くなさそうで、ただ、位置が位置というのが関係しているのは俺もわかる。何せ、俺の膝の上にマリリンが座り、机を挟み目の前にフローラが座ることになっているからだ。
ホワイトボード付近にくまのぬいぐるみのルーシィが話をしており、従者マークはマリリンの姿を見ては、ぶつぶつと話している。
この光景が非常に意味不明となって実は混乱している。
やがて会議では話がとりあえずはまとまり、次の目的地が決まった。
「次は、怠惰の魔女の元へと進みます」
「やっぱり、怠惰の魔女ですよね。私もそう思います」
「わたちの魔法はとっくに解けている。それでも音だたないとなるとやっぱり……」
「元はと言えば、マリリンのせいでしょうに……」
「わたちはニート生活を助けてやってるだけっですぅ~」
フローラとマリリンの口論? は変に続いていく。それを横目で見ながら、七つ魔女ということで、暴食の方を優先しない理由を聞いた。
だが、それが一つの間違いだったのかもしれない。その言葉を発した瞬間に、場の空気は一瞬にして凍り付き、時計の針の音がなるほどの静けさになった。
やがて、ルーシィは話す。
「七魔女の中で、表立って驚異的とされていたのは誰だかわかりますか?」
「今俺の膝の上に乗ってる子とは聞いた」
「そうです。強欲の魔女は表立っては驚異的とされていました。それはまだあくまで攻略可能であるということ他なりません」
「攻略可能って、それってどういうことだ……?」
「あゆむん! 暴食の魔女は、事象問題の根源である。邪念体と契約してる唯一の魔女なんだじぇ……」
「え……?」
どうやら、暴食の魔女の驚異的な力は、フローラで対等になれるかどうかのレベルらしく、それに加えて始めて邪念体との契約を交わし、その力は未知数とされた。
だからこそ、最後とされ、現役ニート生活を謳歌しているとされている怠惰の魔女に決定した。
こっちもこっちで厄介とは言われている。どうやら、この世界の用語ではない未知の言葉を使うようだった。
七魔女は残り二人となったが、その二つとも、これまでと同様難易度は桁外れとルーシィは語った。