第七十六話 決意9
強欲の魔女マリリン、彼女が本当に欲しがっていたものは、愛であり、正しき道を作ってくれる勇者を欲しがっていた。それは、誰にでもあり得る話であり、何事にも自分自身で道を作っては、それが果たしてちゃんとした道なのか? 過去にすがり、過去を憎んだ結果作った先の見えない真っ暗な道。
どこに正解があるかもわからないその道を不安と恐怖を抱えながらひっそりと一人歩き続けている。それは現在の俺も同じ話だ。今回の出来事を通して、下手に彼女を責めることはできない。なぜなら、正解だと思うところがあるからだ。真実を知らず、他人に従っていた方が何倍も気持ちが楽だ。
操作された方が、裏で操られていた方が、もしかしたら本当に楽しいと思える人生が歩めるのではないのか? そう考えた。街は決して悪い雰囲気ではない。ちゃんとした国が形成されており、外からの侵入者は兵士含め、魔女の力で壁が作られている。
自給自足の国だ。中には尊厳や自己の想像だったりと、不信感を抱くものも現れる。だが、果たしてそれで崩壊させた国を1からスタートするとしたら、本当にそれは良い国なのか?
これは嫉妬の魔女レヴィアのときも変わらない問題だ。あの周辺を見れば魔獣ばかりだ。だからこそ、力で統治をし、外から介入されないような作りをしていたのかもしれない。
人の考えること、律する道がちゃんとあるのならば、付き従うものだ。
下を見つつ考える俺を横目に、フローラは笑顔で手を繋いでくる。
「大丈夫です。真実話しましょう」
嫉妬の魔女のときと同じ。俺はフローラから元気をもらった。これは恩とかで考えるのもおかしいのかもしれない。正しい今俺がそう思う道の答えなのかもしれない。
「俺は、お前を怒ることは出来ない。していることに対してちゃんとした意義を申すことができそうにない。知らない方が良いこともある。従ったほうが楽なこともある。街自体そこまで悪い環境ではない。良くもないが、まだ互いに笑える場所がある。自らの思想のために外部の排除は誰だってするさ。だから、俺が今回強欲の魔女マリリンに告げるのならば、一つだ」
「一つ……」
「そうだ。一つ。何も力になれずに申し訳ない」
「……!?」
本心はすべて語った。マリリンの期待するものではないのは明白だ。俺の言葉を聞くなり、両手を付き、涙が零れ落ちる音が聞こえた。
ルーシィはそれを見るなり、こちらを一度振り向き、再度マリリンの方へと告げる。
「マリリン、事象解決。これを手伝っていただけるのならば、今までのは不問といたします。いかがなさいます?」
「……はい」
案外すんなりと事象解決に関して反応を見せる。俺自身これでよかったのかはわからない。
幻惑世界の魔法が解け、案外何も進んでいなかったことに正直驚きを隠せないでいた。
女王の間からは一歩たりとも動いていない。戻された俺たち三人は互いを見つめ、終わったことに安堵する。
そして、目の前には下を向いて膝を付いている従者マークの姿があった。彼は、俺ら三人に階段に上るように促す。ゆっくりとその階段を上る。
代り映えのしない光景、頂上に椅子がおかれており、そこに座っていたものが声を出す。
「これがわたちだ」
それを見るなり、表情が引きつり、声が漏れる。
「うそだろ……」