第七十五話 決意8
バタン!!
扉は開かれる。キューブの中に入っていた俺とフローラはそこから脱出をし、強欲の魔女マリリンのいる女王の間に進んでいた。
そして、宣言する。
「私は、色欲の魔女アスモデウス。すべては戻りました。強欲の魔女あなたに処罰を下します」
強欲の魔女マリリンは、今さっきまで戦闘していたであろう体勢から膝を崩す。
「おっせーよ……まったく……」
「よくやりました。信じてました。夢乃あゆむ」
「ああ……」
スーの安堵に満ちた声とルーシィの声、ようやく道が開かれたと確信した。強欲の魔女マリリンはこれ以上の戦いが不毛だとし、白旗をあげ、自身で首の治療をする。
「不可能……これは、すでに勝敗は決まっています。アスモデウスの復活、それがすべてを物語っている。
なぜ? どうして? 私の思い通りにいかないの? 一体あなたは何者なの? 夢乃あゆむ」
そう語ると、俺は素直に話す。
「何者なのかは、わからない。ただ俺がしたいから動いただけの話」
「そうですか……私の術よりも長けていると……」
「あなたは、最初に俺に話したことがある。能力がないわけではないと。俺はひたすら魔法に執着しすぎていた。だからこそ、術中にはまり、当てのない道をさまよい続けていた。それが、すべて間違いでもあり、正しき道への近道でもあった。強欲の魔女マリリン、お前は今までに類を見ない強敵だった」
強欲の魔女マリリンは、淡々とその話を聞いていた。意見することもなく、ただ受け入れるかのように聞いていた。
そして、それはフローラに対しての問いにもなった。
「アスモデウスはどのようにして、呪縛から解放されたのですか? 私はそれを知りたい! 知っておきたい。 同時に、今までとは違い封印前よりも力が強く感じます。なぜ?」
「私は色欲ですよ。愛によって強化されるのです」
笑顔でそう答えるフローラ。それを聞きマリリンは自らの本心を語った。
「私は、事象の根源である。邪念体に強く執着していました。光の使徒はそれを良いと思わなかったのでしょう。私の体は、夢乃あゆむさんの考える通りです。この幻惑魔法の外では、原型がほぼありません。そして、何より人から愛が欲しかった。得られるものはすべて得ましたが、結局愛は得られなかった」
「愛……?」
「愛です。あなた方が今それを持ち合わせている完成された存在。私が魔法を持つ前は、いつか話した通りです」
強欲の魔女マリリンは、魔法を持つ前は身売りの子どもだった。それが、憎悪や執念となり、光の使徒から魔法を授かり、今のようになった。俺はそれが事実だったことに対して、今さらながら理解した。
「私が本当に欲しかった。ただそれがあなたにはあった。手に入らない。ここまでしても、叶わない。私の何が悪かったのでしょうか? 教えてください。夢乃あゆむ」
俺はそれを聞くなり、周りを見渡す。誰もがマリリンの語る声に対して、耳を傾け、ルーシィはそれが事実であるかのように、頷いた。
そして俺はこの国での出来事含めて話した。