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七人の魔女と一人の転生者。  作者: しじみかん。
色欲の魔女
73/120

第七十二話 決意5

 近寄ることは容易ではない。相手は七魔女の中でも上位に君臨するほどの力を持つ。フローラの内側の世界では、もっと激しい戦いを繰り広げているはずだろう。

 俺はそう確信しつつ、こちら側の外側からでの対処を講じる。


 今から実行する作戦は決して生半可な精神では行動が出来ず、下手すれば死ぬ。先ほどのようにわざと命中させないということは、今の彼女の精神状態では不可能だろう。

 俺は少しずつ隠れているために使っている柱から離れる。

 一歩ずつ、ゆっくりと相手に気付かれないようにと進んでいく。


 しかし、フローラ自体は察知能力が凄まじいほどに長けており、すぐさま見つかる。


ドガン!!


 隠れるようにと使っていた柱めがけて攻撃が放たれる。回避するが、爆風と共に吹き飛ぶといった方があっているほどに転げる。起き上がると同時に相手側を見た瞬間に察する。



「やばい……!!」


 こちらめがけてすでに魔法陣が展開されていた。中腰の状態で、魔法が発射されると同時に右側へと受け身を取る。立つことさえ困難である状況。

 すでに強欲の魔女マリリンの時からそうだが、疲労が限界を超えていた。ただの一般人が、ここまで攻撃を回避し、その風圧で吹き飛ばされていると、疲労以外にも身体の異常がところかしこに点在する。

 それでも無理やりに体を起こそうとした矢先。


 こちらを見入るフローラの魔法はすでに放たれていた。


カキーン!!


 俺は咄嗟に膝を付きつつも、右手に持っていたペンダントを振りかざす。対象の攻撃はかき消されていたのがわかった。


「まじか……」


 一つの安堵と共にペンダントには亀裂が多少なりとも見えたことに対して焦りも膨らんでいった。


「回数制限あるか……」


 現状のペンダントとフローラの魔法の威力を考えうるに、これが壊れるまでに残り4回ほどと推測した。

 たった4回ほどで彼女の元へと滑り込まなければいけない。だが、すでに考える時間はもうない。考える時間のうちに回数をすべて使い切ってしまいかねないからだ。

 

 俺は意を決し、表に出る。



ドガン!!


 フローラ自身の魔法の命中率は非常に低いものとなっていた。今までとは違った何かが彼女の中で起きていると予想する。そのまま命中せずに済めばいいと思ったのだが……


ズドーン!!


「うわぁ!!」


 勢いの混じった暴風が俺を襲い、対象と離れる。これまた咄嗟の判断で、ペンダントが発動し、事なきを得た。しかし、今の衝撃により、俺自身は無傷ということがなくなった。

 左側の攻撃による爆風により、左足に違和感を抱く。何かがおかしくなった。そう考えたが、そこを見れば精神の不安定さがみられると思い、痛みに耐えながらも突き進む。


 フローラの攻撃は更なる過激さを増した。そのたび、距離がひらきは、怪我をする。ペンダントの効力をまたしても使ってしまう。

 ここまで無駄に使用すること3回が費やされた。残りは2回ほど。

 すでにペンダントの色は微かなものとなっており、現状の自分自身の命の灯のような感覚に襲われる。


 しかし、俺の中では諦めるということはさらっさらなかった。どうしても救いたい命がある。守りたい存在がいる。今までとは決別をし、新しい自分自身になるためにもここで負けることができなかった。


 だが、現実はそう簡単には良い結果をもたらしてはくれなかった。


ドガアアアアン!!


「え……」


 爆音とともに散っていく目の前の光景、その衝撃になすすべなくふさぎ込む。ペンダントは残りの1回を消費し、俺の手元から離れていった。

 フローラの攻撃は、徐々に威力を増していく。それは、もはやペンダントどうのというお話はすでに消え去っていた。


 右側の数メートル先に点在するペンダント。目の前の数メートル先には魔法陣を展開し、大きな球体をした禍々しい紫色をした魔法弾が待ち構えていた。

 万策尽きた。そう考えてしまう絶対的状況の中、俺は何かが目の前に見え始めた。


 これは―――――――――――


『起きましたか? 体調どうです?』


『あわわ、はうぅぅ~~そこはお胸ですよ。さすがに初対面ではアウトですよ』


『驚くのも無理ないですよね。こんなおんぼろで、がらくたのような見た目をしている人に膝枕されるなんて、さすがに、こちらが謝らなくてはいけないです。本当に申し訳ございません、悪い菌が移ってしまいますよね。ごめんなさい』


 俺は―――――――――――


 目の前に広がる光景は、懐かしくも儚い夢のようなものだった。今となっては記憶の片隅にある欠片。しかし、そこからスタートした大切な物語。


 走馬灯のようなものを見た俺は……つぶやく……


「助けるんだ……あの子を!!」


 気が付けば体は動き始めていた。

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