第六十八話 決意
「ちょっとまってくれ! ルーシィは自らを封印したって……」
この世の七人の絶大な魔法の力を持つものたちは、その力を支配し、支配され、互いに戦争を繰り広げていた。当初の目的を蔑ろにした結果、放漫の魔女ルーシィは異を唱え、全体に広がる条約と言う名の縛りを付けた。そして、彼女自身は自らを封印したとされている。
これはラスティにも言われ、伝書にも書かれていることだ。まさか、目の前のくまのぬいぐるみが、それに該当するなんてはずは……
「事実です。あなたの過去に聞いたことはすべてが真実です。今の私は仮初の姿でしかありません。ですので、本体であるということを伝えることはできません。ただ、意思として存在していると考えてもらえると助かります」
「意思としてか……」
「そもそも、私もフローラも事象の根本的な存在によって抹消される寸前でした。結果として、そこを突かれ、記憶だけはマリリンの元へと封印され、身体は光の使徒によって封印させました」
「光の使徒……」
「あなたもご存知のお方ですよ。今はその話よりも目の前に集中いたしましょう」
「ああ……あとでたっぷり聞かせてもらう」
くまのぬいぐるみ、自称ルーシィは、目の前の現在の敵である強欲の魔女マリリンの方に目をやる。初めて聞くようなことがつらつらと聞かされたが、この戦いが終わり次第に聞くことにした。
強欲の魔女マリリンは、なぜか時間経過とともに力を失っているように見えた。やはりこの魔法の力は自身の体力に比例する。ならば、いつまでも高い魔法を維持し続けるのも厳しいはず。
このルーシィの力がどれほどかわからないが、一瞬。先ほどのマリリンの魔法を打ち消した力を見ると本物である可能性は非常に高い。
そんなとき来客が現れた。
ズドン!!バチバチバチバチ!!
突如強欲の魔女マリリンと俺らに壁を作るかのようにして、無数の槍が降ってくる。その後に電気が走り出す。
「結局はそうなるのですね……」
ルーシィがそういい、攻撃してきた方向を見る。そこにいたのはフローラだった。並々ならぬ地場のようなものが彼女の周りを包み込み、近寄りがたい雰囲気を醸し出している。
不敵な笑みと共にこちらに宣戦布告するかのような態度にでる。
「夢乃あゆむさん。選択のお時間です」
「どういうことだ?」
「フローラの魔法の力は、七魔女の中で1~3を争うレベルです。私は体を持っていない以上、高等攻撃魔法を使うことができません。しかし、次元魔法や無属性魔法を使い箱を作ることが可能です。洗脳魔法を解くすべは、主に二つ。術者からの解除か、本人による解除かです」
「箱ってことは……」
「あなたも知っての通りだと思います。そして、洗脳魔法を解けるのはあなたしかいません。私がここからいなくなれば、スーだけでマリリンと戦わなければいけません。それは極めて難しいお話です。何より、アスモ……いや、フローラをよくご存じなのは、あなただけです。お願いできませんか?」
「いわれなくても、俺は進む。ここまで来た理由がそれだしな」
「お願いします……それでは、キューブ……イデア……」
ルーシィは右手から透明な四角い箱を出現させる。それをフローラめがけて投げる。そこから光が放出し、視界が奪われた。最後に見えたのは、フローラの何も抵抗せず、ただ見入るだけの姿勢だったということだけ……