第六十六話 戦闘4
高威力の魔法、そもそもの前提が間違っていた。従者マークの召喚体がすでに異形である事実。これがある以上、俺自身が考えられるほどのレベルをゆえに超えている。強欲の魔女マリリンのこの部屋のほぼすべての範囲に通じるほどの威力を誇る魔法。
どうやら、何かの動作、時間、何かしらが確実に合わされば、玉座にある光が点灯する。こんなものがそう何度も打たれてしまえば、いくらくまのぬいぐるみであろうが、ただでは済まない。
俺は倒れたスーの方を見る。彼はふんばりさらにはまだ戦うそぶりを見せていた。くまのぬいぐるみも同じだ。今現状玉座にいき、この高威力の魔法を根本的に何とかできるのは俺しかいない。
やれるか……? いや、やるしか方法がない。
意を決し、俺は魔女の座っていた階段の頂点にまで進むことを決意する。だが一番の問題は、階段前に魔女マリリンが居座っているということ。これを何とかできなければ、先に進むことは不可能。
近くにいるのはくまのぬいぐるみのみ……できるのならば、ぼろぼろだがスーにも手伝ってもらいたい。仕方ない……
「二人とも!! 俺は今からそこの階段の上にいく! 何とか強欲の魔女の攻撃を凌いでくれ……」
「夢乃あゆむ!! キサマ!!」
思った通り、強欲の魔女マリリンは俺に視点を切り替える。こちらに向かって攻撃を仕掛けてくるに違いない。くまのぬいぐるみ、スーには非常に悪いことをするが、これしか方法がない。もう一度あんなバカでかい威力の魔法を使われたら、次は立ち直れる保証何てない。
今でさえも厳しい状況下である以上、こうしてはおけない。俺もいつまでもただ立っているだけでは世界なんて、いや愛する一人の女の子さえも殺めてしまいかねない。
わかれは即行動!!
ドガガガガ!!
魔女マリリンは俺に向かって攻撃を放ってくる。無数の攻撃、先ほどまでは遠くから見ているだけだった。それが、今や自分の方に向けられている。正直これ相当恐ろしいと初めて感じた時だった。
こんなのが今までほかの人たちは受け続けていたのだと思うと、戦いの恐ろしさを少しながらも実感することとなった。
攻撃は激しさを増す。俺は蝋燭の灯る柱に隠れながらも階段に向かって進む。思った通り、この部屋は下手にド派手な攻撃をしなければ壊れることがない。十分盾になりえるのだ。そこに安心と信頼を抱きながら、階段を目指す。
「くっそ!! 夢乃あゆむ!!」
「まずい!!」
俺はタイミングをついたと思った矢先の出来事だった。柱から出たとたん目の前には魔法の玉が迫っていた。このまま回避しようにも、体がそこまで早く動かない。
すると……
ガギイン!!
「あゆむ。君が何をしようとしているのかはわかっているさ。何とかそこに到達させるよ」
「くま……さんきゅー!」
「いくよ!!」
くまのぬいぐるみが間一髪で助けてくれた。だが、本題は終わりではない。後方からスーの支援もやってきており、再度マリリンは窮地に立たされる。
「くっそ!!」
「くっらえ!!」
ドガガアアアン!!
魔女マリリンはくまのぬいぐるみの魔法により、その場から動かないといけない状況に落とされる。俺はその隙を見ては一目散に駆け出す。
やがて、一歩目の階段に足がかかる。
「逃がさん!!」
「こっちも逃がさねーよ!!」
ズドドオオン!!
スーが魔女マリリンに向かって攻撃を放つ。その影響により魔女は何かしらのケガを負ったのか、足がすくむ。それでも勢いが止まることはなく、勢いよくスーを払いのけ、その場から階段中央付近にまで進んでいた俺に向かって飛んできた。
そして……
「ルーシィーの封印は解かせない!!」
「え……?」
「そこは邪魔させん!!」
ぐしゃり……ズドオオオオン!!
一瞬だったが、くまのぬいぐるみはマリリンののど元をつぶし、さらには勢いよく壁際まで吹き飛ばす。そして、くまのぬいぐるみは次のように話した。
「夢乃あゆむ!! きっとそこにはフローラとわいの記憶が眠ってる!! 頼む!!」
「ああ……わかった!!」
俺はいてもたってもいられず、後ろを見ることなく頂上を目指した。