第六十五話 戦闘3
「ここまで二人の攻撃が激しいと何かを感じざる負えなくなりそうね」
「色欲みたいなこといってんな。お前を倒すためだ。諦めろ」
「あらまあ、そんなに口が悪いくまちゃんだったっけ?」
「記憶がほぼないからな、元の性格がわからない」
「それはそれはかわいそうだこと」
くまのぬいぐるみ、スー、強欲の魔女マリリンの戦闘は時間が経つにつれて激しさを増しいく。幻惑の魔法が得意とされていたものは、こうして動けるようになっているということに俺は甚だ恐ろしく感じていた。まさか、ここまでの力を隠し持っていることに対しての驚きが何より強くある。
しかし、妙なことがある。どうして強欲の魔女マリリンは、何が起きても階段の付近に戻っていくのかということだ。ここまでの戦いすべてにおいて、何かしら理由付けては戻っている。やはり、階段の上には何かある。魔女マリリンでさえも見せたくない何かがあると俺は考えた。
すると、何やら玉座がある場所からうっすらと光が見えた。それは時間が経っていくと同時に一つ、また一つと光が灯る。この部屋の領域全体に描かれている魔法陣含めて、何やら不穏な空気が俺について回っていた。何かある。そう思い、俺は壁をじっくりと見始める。
点灯する条件が確実にあり、一周すると何かしらトリガーが発動する。一応そう読んだが。何が発動するかは開幕見当もつかない。
ただ、壁の文字を見ていくと何かにたどり着いた。
「これは……魔法陣ではない……?いや……違う……」
俺は考えうる過去のことを考えた。そして出てきた答えが……
「まさか……くま、スー!! 離れて完全防御の姿勢に徹しろ!! 魔女マリリンは戦いながら詠唱している!! それが今終わった!!」
「「……!?」」
「気づくとは、さすが私の旦那様。―――殲滅せし、希望の世界――――」
ヒュイイイイイン!!
部屋全体の魔法陣は光出す。玉座で点在していた光の点は円状になる。魔女マリリンが広げた両手を勢いよく交差した途端。
ズドガアアアアアアアンン!!!
一瞬の出来事だった。把握するのにも苦労するほどのレベルであったことは間違いない。気が付けば、辺り一帯は土煙で見えなかった。部屋の機能は失っておらず、また再度溜め始める作業に映っていた。他の者たちはどうなったのかはわからない。ただ、凄まじすぎるほどの高威力の魔法が部屋全体を包み込んだ。
魔女の力は、従者の比ではないことが、ここで改めて感じ取れてしまった。
土煙が辺り一帯からうっすらときていった目の前には、守りに徹していたはものの、その守りもあっけない形となり、膝を付き、やがては力なく倒れるスーの姿があった。
くまのぬいぐるみも同様に今の勢いにやられたのか、重症と言わざる負えないレベルの深手を負っていたのが動きで見てわかった。
これほどの高威力をそう何度もこの魔女は撃てるというのか……そんなのの勝つ方法なんて……俺は、今目の当たりにした光景になすすべなくただ立ち尽くすしかなかった。