第六十話 異形3
「なぜだ……どうしてだ……」
「やり方が嫉妬の魔女のときと同じっていうのは、何かパターンないな」
「何をしたお前は……!!」
「目の前にライトをあてただけだ。ここ暗いしな。特にまぶしさが際立つだろう。それに両サイドが暗すぎる。物がなくても隠れることなんざ容易なんだよ」
「こいつ……そんな単純な……」
「単純だからこそだろ! 俺はシンプルに何も能力がない。だから知恵を使うしかない。お前は俺の外側しか見てない。内側も見れば、対処できたと思うぞ」
マークは、俺と離れ一定の距離を保つ。後ろには多くの兵士や異形の存在が暴れ狂っている。まともに統制もすでにとれそうにないほどまで発展していた。唇をかみしめ、こちらを睨みつけるかのように見入る。
俺も大体案を出し尽くしてしまっている以上、これから先はどうするかを悩み中だ。
「一対一で勝負しよう。魔法を持たぬものに、魔法を持つものが叶うはずがない……」
「そうだな」
「余裕か……一発殴ったのが、それほど優越感に浸ったか。この野郎……どこまで侮辱すれば済むのだ……夢乃あゆむ!!」
相手の言葉に耳を貸さず、俺はすかさず突っ込む。マークはそれを見るなり、魔法で応戦しようとする。
風に追われ距離を取られる。思った以上に強い風、体が吹き飛ばされるほどの威力。
これを対処しなければ、どうやっても不可能。どうするか……どうする……
「お前は俺に一度も触れることはできやしない!! 魔法がある限り!! 一度も触れさせることができない!! お前の負けだ!! 夢乃あゆむ!!」
「あっそ……なら!!」
「うそだろ……まて!!」
俺はマークとは逆の方向に進んだ。それを知り焦りだす。それはなぜか? 簡単なお話だ。先ほどの殴りで、俺とマークの位置が逆転した。俺の後ろにはマリリンの玉座に通ずる階段がある。そもそも魔女を討伐するためのものだ。だからこそマークなんざどうでもいいからこそ、走った……
「それ以上は!!」
「焦りが見え見えなんだよ!!」
ドゴオオオオ!!
「クハァ!!」
「もう一発だ!!」
ドガ!!……バタン。
階段を上った矢先、マークが焦りくるのがわかり、逆方向を向き腹に一撃を入れる。その後顎に一発入れた。すると、マークはその場で仰向けで倒れる。すべてが逆転した発想だった。シンプルであり、幼稚なスタイルだったが、俺の精一杯の答えだ。
「安直すぎるのも悪いが、どの世界も焦りは禁物ってこともわかったわ」
「夢乃あゆむ……」
「驚いて言葉もだせないか? 幻惑使いのマリリンさん。お前実体がないんだろ?」