第五十七話 断滅5
「スー……俺を魔女の近くまで進ませれるように魔法を使ってくれないか?」
「何か考えがあるみたいだな。いいだろう。やってやろう」
スーは俺を信じ応じてくれた。何が起きるのかは話さなくていいといわんばかりの対応に気楽さを抱いた。強欲の魔女マリリンはこちらを警戒している。今の俺の発言を強く受け相当警戒しているはずだ。だからこそがチャンスだと考えた。
今この状況の中、魔女の近くまで行けばその正体に気づけるはずだ。俺はここに来てから疑問の連続だったが、その中でも特に疑問視していたことがある。
なぜこの魔女は、自らの正体を見せないのか? ということだ。過去にいくつもその幻惑でもあるかのような美貌を俺に見せてきたが、いざって時になっては俺にその姿を見せないでいる。この魔女の部屋の中では一度もその姿を見せず、階段の先の玉座の暗闇から指一つ見せないでいる。
くまとの戦いもそうだ。相当強い力を持っていれば、後衛からの参加ができたはずだ。今ここでも、スーしか魔法を持ち合わせていない。俺を傘下に加えたいから魔法を使わないのかもしれない。そう考えた日もあった。しかし、今はそれがすべて違うと断定できる。
この魔女、俺の経験から言わせると、攻撃魔法を一切持ち合わせていない!! ならば容易に近づくことができるはずだ。
スーの強力の元、実行に移した。
「スー!!」
「わかったよ。走れ!!」
俺の合図とともに走り出す。魔女のいる玉座に向かって。強欲の魔女マリリンは案の定何もせず、ただやってくる俺たちを見るばかりでしかなかった。
「夢乃あゆむ!! 私としたことが……ここまで考えうる男だとは……傭兵よ! 出陣だ!!」
マリリンの声と共に目の前には、複数の兵士が召喚される。こちらに向かって攻撃を仕掛けてくるが、後ろからスーの攻撃がヒットし、倒れていく。
そのままスーは俺に向かって話す。
「あゆむ!! こいつらお前でもいけるぞ!!」
「まじかよ……おらああ!!」
ドガッ!!
俺は思いっきり一発殴る。すると召喚された兵士は崩れ去った。思った以上の性能の低さに驚きを隠せないでいた。またスーが後方から話す。
「ジャンプしろ!!」
「OK!!」
言われたまま走ったままの勢いでジャンプをした。すると、何やら足元に風が地面になり、スケートボードのように進んでいった。
「すっげ……」
やがて、それは階段前で消え、慣性が働いたのか、俺は階段付近で投げ出される。
「もう少し優しくやれよ!!」
「うるせーやつだな。ほんと……」
「んだとこのやろう!!」
この連携により、いよいよ階段前に到達。あとは登るだけとなった矢先。
「お気に召しませんな。ごみどもが!!」
ブオオオオン!!!
「「うおおわあああ!!」」
突如猛烈な風により、俺とスーは一気に扉前まで飛ばされる。難なく着地をし事なきを得た。階段の隣の影となっている部分から、ゆっくりと歩き出してくるものが現れた。
「マーク……」
「そうです。マークです。魔女様。大丈夫ですか?」
「ああ……問題ない」
「魔女様、ここは一掃することを願います。よろしいですか?」
「わかった。もう彼には未来を持たない」
「ありがとうございます。さあ、私の力を見ましょう。これが王女様を守る決死隊の姿だ!!」
マークの指の合図とともに、辺り一帯に紫色の魔法陣が所々現れる。やがて、そこから兵士が召喚される。その数は、先ほどとは比べ物にならないほどの量となった。
「夢乃あゆむ、キサマには絶対の敗北を見せてやる」