第五十四話 断滅2
俺は逃げ続けていた人生だった。どこにいっても何も才を見せることができず。ただ流されるだけ流されて嫌々やり続けていた。いつしか、それが普通の人生だと錯覚するようになっていた。親は俺に対して、優しく言葉をかけることをしてくれることも多々あった。しかし、俺はそれを何も考えず突き放す態度を取り続けていた。
学生の頃の成績がそこまで高くもなく低くもない。ただの凡人ともいえるほどのレベルのなのかも怪しいとさえ思える。そんな普通かもしれない成績。俺自身何ができるのか? 何を糧にそこまで続けてきたのか? それが徐々にわからなくなってきた。高校生のある日の夜、両親との喧嘩をした。大きなものだった。人生でここまで大きなことがあったのかと思うくらいに激しいものだった。
内容はこうだ。家業を継げるように偏差値の高い大学に入学するというものだった。しかし、俺は今までの経験上、それを引き受けるにはとてもじゃないほど苦痛で仕方なかった。期待されているのは十分に理解している。だからこそ、その期待にそぐえなかったら、どうしようと思うばかりの日々が続いており、やがては、プツン……何かが切れる音が俺の中でした。
俺が通っていた高校も世間体を気にした。有名なところだ。頭の良いところなのかもしれない。そこで必死こいて勉強をし、さらにそれを超えるほどの大学に進学しろ!というもの。親の操り人形のようなその道筋には、いくつもの疑問が浮かんでいた。
深層心理内部での切れる音。そこから俺の転落人生は一瞬だった。嫌々ながらも大学には入学できた。その結果両親との溝はますます深まっていくものとなった。結果的に俺は一人暮らしの選択をもらえた。
当時はとてもうれしかった。ようやく自分の思い通りに人生が進めるようになったのだと。そう確信した。
――――しかし、それは長く続かなかった。
高校生なんかいう世界とは比べ物にならないほど別世界のその光景に俺は挫折をした。周りはキラキラと光り輝いている。だが、俺は何だ? たちまち自暴自棄となり、籠るようになった。
そこからはかなり早い。両親が家に来ては怒鳴りに来たりもした。俺は、それを無視、学業も必死になって追い付こうにも、その先の暗い未来に対しての希望が持てず、挙句には同年代には先を越される始末。
やがては、何も手を付けることができなくなっていた。部屋はすでに人が住んでいるかわからない。そんなレベルにまで落ちており、気が付けば、俺はベットの上で何かを呟きながら、仰向けになっていた。
そんな俺が今やこの世界の革命的立ち位置にいる。笑えてしまう。だが、それでも自分自身でここまで進んできたのは間違いない。逃げたいことも多くあった。しかし、逃げれば死を意味する。それにもう、俺は一人ではない。前とは違った道に進んだ俺を両親はどう思うのだろうか……
俺はもう、過去とは違う。まだこの世界を受け入れることは難しいかもしれない。それでも、背中を押してくれるものたちがいることは身に染みてわかる。彼ら彼女たちのためにも、この世界を救わなければいけない。この長き夢の旅は、俺の成長のためのものなのかもしれないな。