第五十三話 断滅
「嫉妬の魔女を! 俺を!! 一国を!! その身一つで崩壊させたものが、こんなところでくたばってんじゃねーよ!!」
ドガッ!!
俺は、防御の姿勢に徹しながらも、その殴りに対しての反撃をすることができなかった。地面に膝を付き、スーは胸倉をつかみ、こちらを睨むようにして見入る。
「俺は……人を……」
「人が何だ? お前は、自分自身の正義の元してきた道に対して、まだ決心してないのか? そんな状態で、今まで死んでったやつや倒されたやつは、さぞかし弱かっただろうな?」
「俺がいるだけで……周りを傷つけてしまう。俺は無力なのに、救世主。魔法という力さえない。それなのに、周りは俺を……俺なんかを持ち上げるんだ……そんなのおかしいんじゃねーの……
涙声になりながらも俺は訴える。今までしてきたことに対して、何か不都合があるかのように俺は自分自身を責め、周りを責めていった。
それを聞いたスーは、癇に障ったのか舌打ちをし告げた。
「お前に希望を持ったのは、無力だからじゃない。ただ1%の夢を実現できると確信したからだ。証拠はない。だがな、生き様でその証明になる。魔法がなんだ? あっても、俺みたいな使い方をするやつもいる。有効的な使い方をしなければ意味がない! ならば、最初からない方がましだ。憧れてんだよ。みなお前みたいな存在に……」
「憧れ……?」
「お前は俺に屈することもせず、述べたことがある。魔法は世界の平和を作るために使うべきだと。最初は笑ったよ。ばかいってんじゃねーと。だがな、外に出てお前に負けて知った。人の笑う姿も良いのかもしれないとな。お前はもう、無力なんかじゃない。魔法を持つ者さえも屈服させた能力者だ。それがこんなざまかよ……呆れるな……」
スーはそれから、拳に力を込め顔面目掛けて構えて来た。だが、俺の少しの笑顔をしていたのを知ったのか殴るのをやめた。
「なんだ。まだ元気あんじゃねーか。殴り足りねーな。ほんと」
「ありがとう。お前こなければ、今頃俺は……心ごと幽閉されてたかもな」
「礼より、目の前が優先だ」
俺とスーは立ち上がり、目の前にいる強欲の魔女マリリンのいる方を見る。
「何てこと……まさか……こんなことが……」
マリリンは、声だけでもわかるほどに驚いていた。隠し通せず、その声に、言葉に強く反映されていのだ。その反応を見るに、ここにスーがやってくること自体計算外だったのだろう。
誰も想像が付かないし、無理もないだろう。俺だってそんなこと一切考えれない。だが、現実は非常だ。こんなことも起こるのが、人生の通例というものなのだろう。