第五十二話5
「ようやく私の元へとやってきた」
「今の俺は人を殺すだけ殺す。何も価値の見いだせない存在になってしまった。だが、あなたは違う。本気で俺自身を欲しがっている。ならば、そちらに手を貸すことが有意義なのではないのかと答え」
俺の発言がよかったのか、魔女は終始笑いが絶えない。この笑みは欲しいものが手に入ったといわんばかりのものだ。
「ならば、私の傘下に入ってもらいます。そのまま、マークとの入れ違いで従者として活動していただきます」
「それは待ってくれ」
「どうして?」
「魔法を持ち合わせていないものが従者を名乗るのは少し違うかと思うんだ」
「いいのよ。私が好きならば、それで十分じゃない? あなたはもう私のものよ。過去に話さなかった? 魔法がすべてではない……とね?」
「そうだな……ただ、マークにも少しぬくもりを与えてほしい。これは俺からの願いだ」
「そうね。少しならいいわね」
なにを言っているのかわからない。俺自身も迷走している。ただ、思っていることを吐露しているだけのこと。それを魔女がすんなり聞き入れている。それだけのことだ。
それに、彼女は喜んでいる。だからこそ、与えてあげなければいけない。常識だろう。
俺は魔女の方へと少しずつ歩み寄っていく、ゆっくりと一歩ずつ歩み寄っていく。
強欲の魔女マリリンも、それに答えてフローラの時と同じように魔法陣を展開する。中央に差し掛かれば術式は完成する。フローラの時とは違い強引なものではない。
俺は吸い込まれるかのようにして中央に進んだ。
「いつまで寝ぼけてんだよ!! てめえええわぁああ!!!」
ドガーーーン!!
突然部屋の扉は壊れる。それもあまりにも強力な一撃で粉々になった。魔女マリリンも敵の反応を察知できなかったようで、驚くような行動をする。
俺も何かに叫ばれ体をびくつかせる。
「夢乃あゆむ。さあ、早くこちらに来なさい。術式の効力が消えてしまうわ」
「ああ……」
何もなかったかのようにし、そのまま突き進む。
だが、それは思い通りには進まなかった。
「もう一度いってやるよ。何寝ぼけてんだよ!! あゆむ!!」
ドガッ!!
「う゛!!」
ドタッ
後ろからゆっくりと走って来た何者かが、俺の名を呼び、しまいには殴ってくる。思っている以上の痛みと驚きで、脳内はパニック状態だ。
その場の出来事を把握するのにいっぱいいっぱいだった。
だが、やつはさらにお見舞いしてくる。
「起き上がれ、起き上がれ!! もう一発いってやる」
ドガ!!
「痛い……何するんだよ!!」
「抵抗はできるみたいだな。久しぶりだな。夢乃あゆむ」
「お前は……スー……」