第四十四話2
「どうして……なんで……」
言葉が出ない。この時の対応の何一つわからない。俺はただ、うなだれているレアの状態を見ることしかできなかった。かける言葉は何一つ思い浮かばない。ただ落胆という言葉、絶望という言葉をもろに受けてしまっているせいで、恐怖に支配される。
「ごめん……」
俺はその場しのぎともいえる言葉を使ってしまう。
「何がごめん何ですか……」
「それは……」
レアはそれをスルーすることなく聞き入れ、返しの言葉には怒りが色濃く付与されていることが、俺でもわかった。何も言い返せない俺を境にレアは言う。
「ごめんと言われても、何も帰ってきません。あなたは……夢乃あゆむさんは何をしたのですか? 何もしていないでしょう? 謝る必要はありません」
「あぁ……」
言葉にはならない返事をし、レアは吹っ切れたように立ち上がる。
「大丈夫です。私こそ申し訳ありませんでした。気が動転していたみたいです。私たちはレジスタンスです。命はいつかは潰えていくものです。特に前線はそれが強いです。仕方ありませんし、立ち止まっては意味がありません。前に進みましょう。夢乃あゆむさん」
「ありがとう……」
なんて強い子なのだろう。俺は励ますよりも、むしろ励まされた。こんなか弱い女の子に対しても、何もしてやれることがなく、ただ見るだけ、俺は最初から何も変わっていなかったのかもしれない。
この子のためにも、この城の攻略をしよう。そう心に決め、レジスタンスに帰還する。
その後無言のまま歩き続ける。レアはこちらを一切見ることなく淡々と前にいる。悲しさが背中から伝わってくるのは容易にわかった。しかし、何もしてやれることがない。むしろ無駄に何かしてしまえば、彼女は傷つくことだろう。思いを寄せていた者たちの別れ。それがどんなに苦しくつらいことなのかは、俺であってもわかる。今ここにはいない魔女に完全支配されてしまった。フローラ。
彼女が今どこで何をして、何を考えているのかまったくわからない。本心もどこに浮遊しているのかさえわからない。これから対峙していくことは間違いなくある。その場合俺はフローラに対してしてやれることは何かあるのだろうか? 鬱々としつつも、時間は過ぎていく。
平等である時間をいつしか憎むべき対象物へと成り代わっていくのかもしれない。幸せでなくとも、問題がなければ時間が過ぎ去らずに停滞していれば、ここまで悩まずに済んだのかもしれない。
だが、時間はどんなものにだって等しく時を刻む、何かを考えなければいけない。一応案があるにはあるのだが、実行できるかどうか……
俺はただ進まなければいけない不条理な世の中に対して軽い怒りを抱く。
そんな中物語は更なる追い打ちを俺らに現実として突き付けてくる。
突然レアは立ち止まる。レジスタンスの入り口付近で力なく膝から崩れ落ちた。俺はまさかと思い走っていく。
「なんでこうなんだよ……」
俺はまだ知らなかった。世の中の不条理さを。自身の中ではまだ軽くしか考えていなかったのかもしれない。今まで数々の旅路をしてきたが、まだ経験値は得ていない。そう確信したときだった。