第四十三話 卑屈
俺は一体何をしていたのだろうか? ふとそう思えることが今になって後悔として押し寄せてきていた。誰一人守れず、ここまで生きてこれた。これだけは周知の事実。だが、それは周りから支えられたということが非常に大きい、だからこそ、俺は生きてこれた。
じゃあ、逆に俺は誰かに価値を提供したのだろうか? していないだろう。していたとすれば、今こうして悩むこともなくなるはずだ。そうだ。していない。俺は何も誰かに提供なんかしていない。
どうしてわかっていたことなのに進まなかったのだろうか? どうして許してしまったのだろうか? どうして守れなかったのだろうか? 俺はただひたすらに、後悔に苛まれ続けていた。
レアだけは確実に救いたい! そう願うばかりになっており、その足は城へと進んでいた。
「レアはどこだ……?」
朝だからなのだろうか? 街は妙に活気づいていた。日常の風景、俺が元いた世界と何ら変わり映えのしない雰囲気。俺がここに来てやることは、それすら脅かすこと他ならない。自らの意思決定が大事であると同時に、裏からの操りも知らなければ、どうということもない。
レジスタンスのしてきたことのすべてが、これよりも良い日常を作ることなんて果たしてできるのだろうか? 俺は自分のこれからに対して自信を喪失仕掛けていた。
レアを救出するにしても、それが果たして正解なのだろうか? 俺自身には答えはわからない。ただ、今できることは真実を伝える。これだけを心に決め行動している。
街で明らかにおかしな恰好をした人が街の中央広場近くに立っていた。後ろ姿を見てすぐにわかる。レアだ。すぐさま、彼女に話に走る。
「レア……!」
「どうしたのですか? そんな慌てて」
レアはこちらを見るなり、急に現れた俺に対して驚きながらも話した。どうやら魔女の城にはあまりいったことがなく、迷っているようだった。
何より安心したのが、生きていたことだ。手遅れにならずに済んだ。これが何より俺は救われた。
俺はすぐさまレアに神妙な面持ちで話す。
「レア……あまりこの手の話は俺もしたくないが……」
「え……?」
話せば風が吹き、時計台の針の音が聞こえるような、そんな感じがするほど俺は静けさに襲われる。レアは持っていた装備を力なく落とした。地面に落ちた装備は、俺の中では凄まじい重低音となって響き渡る。
俺もどうすればいいのかわからなかった。レアの表情を見るなり、話さなければよかったと後悔するほど。
それほどまでに彼女は、次第に力なく崩れ落ちる。言葉を失い、地面に手を付き、明らかに絶望したと思わせる姿がそこにはあった。