第四十話3
「あゆむ。そうだな。日常生活レべルというものだと、このくらいの高さであれば数十発ほどは撃てるかな」
「そんなに高いのかよ……なんだ日常生活レベルって、全然ちげーじゃん!」
コールは俺に見せた日常生活レベルの炎の大きさが何と約10cmほどのものだった。さすがに、それを日常生活レベルと言われるとおかしいと思えるもの。そもそも、これを使って攻略を考えないあたり、もしかして、大バカ者なのかもしれない。
俺は続けて、コールに考えをまとめたものを言う。
「多少なりとも、驚いたが、そこまで使えるのならば、話は早い。そのくらいの大きさの炎でさえも人を脅かし殺すことだって可能だ。例えば……そうだ! 矢だ! 炎の矢!」
「炎矢か……さすがにそこまでの距離は作れそうにない……申し訳ない」
「違う違う!! 槍や矢に一定の炎を溜め、投げいるものだ。けん制くらいになると思うぞ」
「可能ですね。コール。彼の先ほどから言う案は、どれもレジスタンス外の人でも可能なものばかりです。そして何より、殲滅、殺傷、けん制の力は期待が大きいです」
「エブリン……今の話を聞くとそう考えるかもしれない。あたりは森か、なら木々は容易に集められる」
なんかなんとなく、話が進んだ気がする。後半俺は適当に必死ながら答えを見つけ話したが、最初から最後まで真剣に俺を見つめ聞き続けていたエブリンの答えを聞いては、心救われたように思えた。
一番地頭がよさそうにも見えるからなのか、素直に最後の砦としても俺は思ってはいた。
コールの合図とともに早速、レジスタンスのメンバーたちは、そろって木々やら石やらを集める作業に入る。
基地から出て、俺も少しそこら辺から行こうかと思ったところ後ろから肩を何者かに叩かれた。
「?」
「そんな驚いた顔しなくていいと思う。失礼よ」
「悪い。ついな……」
エブリンだった。彼女から、こちらに話に来てくれるとは思いもよらなかった。俺はすかさず彼女に先ほどのことに対して礼を言う。
「別にそんな言わなくていいのよ。私もその案は良いと思ったわけだし。ただ、魔女の魔法はすさまじいものよ? 本当にこれで平気だと思うの?」
「そうだな……俺も今までにない敵だ。心配ではある。ただ、ここにいる人達の顔を見ればできないことは確実にない。やらなければいけない。そう考えてしまってな。気が付いたら、こうなってた」
「やらなければいけないか……あまり期待はできたものではないわね」
「悪いな……俺も強大な敵に対しての有効打はないんだ」
「別にいいんじゃない? 先の戦いでは、魔女様の部屋にいったんでしょ?」
「行ったけど、なんかこう生気ないような感じっていうか、言葉にできそうにないが、あまり居心地いい場所ではなかったな」
「そうね。薄暗い部屋が好きな人なんてそうそういないわよ。この作戦うまく進むといいわね」
「そうだな……ありがとう」
エブリンは俺の反応の後、にこやかに返し、去っていった。木々を拾っていったのだろう。まあ大量に必要だしな。
そうして、レジスタンスの皆と揃って必要なものをかき集めた。数日ほど費やしてしまった。いよいよ作戦は本格的に乗り出そうとしていた矢先のことだった……
一人の兵士が、何やら焦りながらこう話した。
「あゆむさん! 三人がいないんです! 突然消えました」
「え……?」