第三十九話2
「あゆむ、俺たちの魔法は簡単な魔法ばかりだ。火を起こし、水を出しといったものばかり、さっき簡単に話はしたが、何も思いつきそうにない。何かあるのかな?」
コールは俺に質問をしてくる。至極真っ当な意見だろう。彼らは最初から、それを持ち生活をしてきていた。だからこそ、その当然ともいえる力をどのようにして攻撃に加えていくのかは、今まで考えてきたこともないのだろう。ただ、それは俺も同じことだ。
この世界のように当然のように生まれてから魔法が使えているのならば、思いつかないことだったのかもしれない。だが、俺は元はと言えば違う世界の住人。だからこそ、思いついたのかもしれない。
「魔法が使える。これが何よりこちらに有利に働くことができる。それは今までで考えたこともない発想かもしれない。しかし、その当たり前を変化させていけば時として大きな力となりえる。そう思わないか?」
「そうかもしれないが、俺たちレジスタンスの魔法レベルは、魔女レベルには到底かなわないものだ。日常生活レベルのものであるころは、君もよくわかっていることだろう?」
「その日常レベルが恐ろしいって話なんだよ」
あたり一帯は、俺の回答を聞くなり互いに顔を見合わせて、こいつは何をいっているんだ?と思えるような表情ばかりをこちらに見せてきていた。
こうなったら、俺も何かで証明するしかない。俺は目の前の木製の長机の上にポツンと置かれている蝋燭に指をさした。
「今からこの炎を大きくする! それも魔法の力で! 生憎俺の力ではどうすることもできない。だから、そうだな。レアにお願いするとしよう!」
「私ですか……?」
「あゆむの話す証明の力になってくれ。何か案ありそうだし」
「はい。わかりました!」
レアの反応は相変わらず、かわいさ満点だ。まあ今はそれを置いておくとして、目の前のロウソクの炎を大きくすることから始める。
俺がどっかから拝借してきた蝋燭にめがけて炎を出そうと詠唱をし始める。そこでふと気づく。フローラと全く違ったスタイルを用いたものであるということに。
フローラの魔法のスタイルは詠唱をほぼすることなく発動する。それはくまのぬいぐるみも同じだ。しかし、レアは詠唱をしている。するしないで変化に違いが起こるのだろうか?
そうこうしているうちに、レアは言われるがままに俺の持つ蝋燭を灯した。そして、その蝋燭を隣に置く。すると、みるみるうちに小さかった両方の蝋燭は一つになり、炎も大きくなった。
「まじかよ……」
ある男は言う。それから、周りは言葉を発さずに見つめ続けていた。俺は何か間違ったのかとコールを見る。そうすると、向こうは何か話したそうに口を開く。
「あゆむ。これが証明かい?」
「そうだ。証明だ。言ったように炎大きくなったろ?」
「それはそうだが……これで魔女に何ができるのかさっぱりなんだけど……」
「まじで!?」
「まじで……」
おかしいとは思ったが、これが普通であること。そもそもその普通こそ、彼らにとっては異常性と捉えることや力に変化できることを考えることは難しかった。俺だって、バケツにいっぱい水を入れて、おぼれ死ぬことができるぞ! っと言っても、まあ、そうだろうな。としか思わない。
ただ、それが攻略に欠かせないものであり、何と言っても俺自身でも驚いたことが……
「あゆむさん? このくらいの炎の大きさならば、皆さんたくさん使えますよ?」
「え……まじで!?」
「まじです!」
「それくらい?」
「数百発くらいは可能かと……」
俺はまたこの世界での不思議を知ってしまったのかもしれない。まだまだ、知らないことが多すぎて辛いそんな話し合いだった。