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七人の魔女と一人の転生者。  作者: しじみかん。
嫉妬の魔女
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第三話 生贄

「生贄がない……じゃと!?」



 唖然とする村長、下手するとそのままぽっくり生きそうなくらいの状態になっていた。他の人たちも口を開けぽかーんとしていた。それが嘘だと思う人が誰もいないことに俺自身驚いたのだが、それもそのはずだろう。生贄無くして、二人いるのだから、それが何より証明だ。そうだ。



「何を使ったのかわからないけどスー様とやり合えるとは、小僧やっぱすげーな!」



 最初に俺を馬鹿にしていたガタイの良い男性は、言葉を変えていた。別れ際を無理やり作った張本人なのに、俺はそっちの謝罪をしてほしいわ。もういいけど。

 そうこうしているうちに、村長がまた前に持ってきた綺麗な楕円形の石を目の前に出される。また同じように手を触れてみて欲しいといわれた。


 だが、また前と同じように反応はしなかった。それもそのはずだ。何も力持ってないわけだし、そもそも前はただ意見を言っただけで追い払った? というような感じだったわけだし。村長含め村人は、その結果を見るなり、石が壊れているのか? と不思議に思っていたので、俺が少し付け足して話した。



「石が壊れているのもあると思うけど、世の中のすべてを理解しているわけではないだろう。その石」


「そうじゃな。この石古いものだからな。ただ人の中にある魔法のエネルギーを感知する機能しかないのでな。しかも、それもいくつかの属性には反応しないみたいだしの」



 どうやら、この世界には計10種類の魔法の属性があるらしい。詳しくはよくわからないのだが、普段の生活ができるレベルの魔法は大体の人は持ち合わせている。しかし、狩りなどには適さず、ただ火をつけるだけ、水をやるだけなどのことしかできないみたいだ。


 スーや女王は、それ以上のことができると村長が話す。てか、人が魔法使える時点で俺にはすでに頭が追いついていないのだが……ただ、スーのあの異常ともいえる力が魔法ということで解決できるのならば、何らおかしくないのかもしれない。それが、他の人々よりも強くできていることなのだろう。


 まあ普通に抗えないわな。あんなの日常茶飯事レベルで起きてたらな。

 村はいたって普通という感じで構成されていた。太陽がないから作物育たないだろう? と思ったのだが、ところがどっこい日差しが当たるところをちゃんと作っていたのだった。何不自由ないといったら語弊あるのだが、普通に暮らしていけている村だ。


 俺にはいく当てがなく、村長が決まるまでうちにいると良いと話してくれたものだから、とりあえず身を置くことにした。誰も使ってない村長の家の二階の一室を借りることになった。家賃は0円。なんと素晴らしい。救ってくれた。ということが何よりらしい。


 その夜フローラが部屋にやってくる。二人だけしかいない部屋。すごく緊張する。ベットで隣通しで座るが、やはりいつみても慣れない。それくらいにまで美しさとかわいさがあったのだ。ただいくつか疑問にああるうちの一つに、周りの村人と全くと言っていいほど違う見た目なのが気がかりだった。



「フローラ、言いにくいんだけどさ、ここの人達と君結構違うところある気がするんだけど、聞きたいなーって。気を悪くしたのならば、言わなくてもいい!」


「別にそんなことはないですよ。ただ、私もここの村の人たちとは違うのはわかってますし、そもそも元からこの村にいたわけではないのです」


「やっぱそうなんだ。なんか高貴な人だな~と思ってたけど、元はそっち系とか?」


「私もあまり覚えていないのです。気が付いたら女王様の住まうところにいて、気が付いたらここにいました。記憶がないのです。女王様のところで働いていた。それだけで、この目もお渡ししました」


「渡した? やっぱとんでもない女王だな。やっていることがえぐすぎる」


「美しいからということで、私風情は女王様のところで働けるだけで十分ですよ」



 なんか、身も心も女王様って感じが強いな。フローラ。まあこの世界がそうしているのだから、仕方ないのかもしれない。俺のいた世界とは全く違うんだな。納得納得。

 結構無理やり納得する俺、だが、歴史の授業ではこういった世界があること自体あながち不思議ではないということを学んだことがあるため、あるんだなー程度で納得する。



「そうだ。これ聞きたかったんだ。ミラって言われているみたいだけど、名前あるんじゃん」


「あれは、あの時が初ですよ」


「え。そうなの!? 今までどう会話してたのよ」


「お嬢さんで通ってたみたいです」


「納得だわ。ただ突然名前つけられるのか、すげー村」



 なんとなく話をしていた俺とフローラ、何気なくこの世界のことに関して少し知れたこともあり、どうやら、過去に突然光が降る事件が起こり、そこから今の体勢になったみたい。

 一番上に君臨するのが女王、つまり魔女とされており、その側近にスー達がいる。七国存在し、ところどころでよい悪いの環境があるみたいだ。


 ここでは、嫉妬の魔女が支配区域にしているらしく他と比べる以上に悲惨さというのがずば抜けていると情報があるみたいだ。この村はまだよい方で、他の村では一日に一人生贄が鉄則となっているところもあるところが普通のようだ。特に魔女自身が赴くこともあり、その場合一日に一人というよりかは、村が滅ぶことがしょっちゅうだそうだ。


 独裁国家と同じレベルで、人権なども軽視されすぎていた。殺しはもちろん、嫉妬の魔女の国は、嫉妬の魔女の思い描くテーマパークと言う状態が一番しっくり来るほどにまで、自由気ままに活動しているとのこと。


 特に嫉妬の魔女は、美しくかわいいものには目がなく、フローラが特に対象にされる。ゆっくり、じっくり堪能したいがために、この村に置きフローラがいることで、この村が一週間に一回のみ生贄差し出すということが起きている。



「なんか、頭痛くなってくるな。俺の人生楽だわ」


「夢乃あゆむさんは、どのような環境にいたのです?」


「俺は……」



 夢乃あゆむ大学生、だがほぼ通っていない。単純にだるかったというのと、つまらなかったということ。

ゲームにのめり込み、学費もそのまま使用する。くっそみたいな行動ばかりしていた。

 俺が何が起きてここに来たのかはわからないのだが、ただ睡眠をしようとベットに潜った。そしたらこの世界に来たことを今ようやく、思い出した。


 この世界の住人と比べると、非常に裕福な家庭に生まれ、この世界の住人と比べるとすっごい自堕落な生活ばかりしていた。そもそも、比べること自体失礼とさえ感じる。



「俺は、何かを成し遂げたかったというのが将来の夢にあったんだけどさ。何もせず、ただ時が過ぎるだけで自堕落すぎる生活をしていたのよ。君たちみたいに毎日必死に生きているわけではなく、泣けてくるわ」


「そうですか? それ何よりも良いと思うのですけど?」


「必死に生きている君たちの方こそ素晴らしいでしょうに」


「自由であり、何かを成し遂げたいと思えること、夢があること。それって普通にできることではないのですよ。そもそも、私を救いこの村を救った救世主様ですし、すでに成し遂げている実績はあるのです」



 それもそうだったっけ。スーと戦っているわけではなかったが、変な勝ち方ということはしてしまった。勝ったというよりかは、逃がしてくれたというのが望ましい。しかし、結果として救ったのは事実としてある。だが、俺は一つとてつもないことに目を向けることを恐れている。嘘だ。


 いつまでこれが続けれるか、いつまで隠し通せるのか、わかったものではない。今はまだよいとしても、これが女王に対抗できるのか? 不安で脳が破裂しそうではある。フローラにも言えないわけだし。

 これからよりいっそ争いが起こる。スーの一件でよーくわかった気がした。あの表情は、力をもってして争うこと他ならない。力のない俺に何ができる? 何もできやしない。


 もしかすれば、本当は一番やってはいけない策であったのだろうか? そう俺は自分自身で悩み始める。考えてもらちがあかない、そもそも他に有効手段がなかったのも事実。



「あ~頭痛が痛い」


「もうおやすみしましょうか」


「そうだね」


「それではまた明日」


「明日!」



 今目の前にいるフローラには言おうかどうか迷う部分がある。だが、今は言えない。信用できてない自分がいるのもあるし、今見せている笑顔を崩されたくなかった自分のエゴもあるからだ。


 はぁ……これからどうしよう。悩みだけがこれからより続いていくんだろうな~


 大体村のことがある程度理解し、協力し合えるまでに俺も成長していった。前のスーとの話し合いより一週間後のことだった。村の中で大きな音がしだす。



「軍が来たぞ! フローラ!」


「はい! 行きます」


「また救世主夢乃あゆむ君にもいってもらえんかね?」



 まじかよ……荷が重い……そう思いながらフローラと共に軍のいるところに進みだす。いつ来ても暗い洞窟、一応両側に松明付けているが、それでも暗い、暗すぎる。足元に何かあったらすぐさまコケるレベルなのだが、それすら慣れているようでフローラは早歩きで進んでいく。


 いつも通り登っていきリビングにつくと外からスーの声が聞こえる。



「夢乃あゆむいるか! 今日は女王様も来ておられる。お前に会いたいそうだ」



 女王!? まさかとは思ったが、いきなり女王が俺のところに!? 突然震えが始まり止まらなくなる。だが、フローラが左手を握りしめ何も言わず外に連れていかれる。俺はそれに助けられるたような感じで心が楽になっていった。


 外に出ると、前とは違いスーと小さい背丈の子が目の前にはいた。男の子と言えるような見た目をしており、髪は赤く貴族の少年というような綺麗な服装で、その場に立っていた。まさか……?



「こちらが女王様、レヴィア様だ。お前とお話したいそうだ」



 嘘だろ、まじかよ。こんな子が魔女で女王なのか? 俺に向かって背があってないようで少し上目遣いをし、にらんでくる。どっからどう見ても、小学生の見た目をしていた。しかし、どこからともなく禍々しいオーラというのが、力を持ち合わせていない俺でさえも感じ取るほど、強大であった。


 一体何のお話をしたいのか? 見当もつかないが、魔女は口を開く。



「夢乃あゆむ、君が光の使徒で選ばれし者か、見た目はまぁまぁだな。僕には遠く及ばない」


「女王様が一体俺に何の話をしに来たのか知りたいのですが」


「ふん。面白いやつだな。僕と言う魔女が目の前にいるのにもかかわらず、ビビりもせず震えもしない。さすがスーが逃げただけのことはある。ちゃんとしているな。さすが選ばれし者だ。せっかくだ君の力を見せて欲しいんだ。もしよい結果が期待できたのならば、この村から生贄を差し出すことはしなくてよいことにしよう。どうだい?」



 やっぱりか、非常にまずい状態であることは確かだ。何も俺には力がない。それが今ここでどのように対処するべきか? というのが必須であり、下手すれば、村が終わる。俺だけではなく村だ。魔女は俺を見るなり、ビビりもせず震えもしないといっていたが、内心ガクブルだ。フローラが今でも手を握りしめているからこそ、無理やりにでも平常心を保っているだけだ。


 非常に逃げ出したいのが、今の俺の心境だ。何か良い案がと思ったが、何も出ないのがいまだ。するとフローラが俺に向かって話す。



「平気です。大丈夫です。夢乃あゆむさんなら、何とかできます」



 何とかできます。俺なら何とかできる。本当にそう期待しているだからこそ、その言葉がでてくるのだろう。俺には何も力がないのを知らずして、言えることなのだろう。俺は嘘つきだ。大嘘付きだ。この状況でもなお、彼女は期待し、救世主だと思ってくれている。なんともありがたいことだと思う。


 俺はそれに答える義務があるのかもしれない。何もないがとりあえず、やってみるしかない!!



「女王様が支配している区域であるここで、力を見せるのでいいんだな?」


「いいぞ、どうせ近くの森には魔獣だけが住まうところだ。逆にその魔獣たちが怯えて去っていくほどの強大な力ならば、私は喜んでこの村を捨てよう」


「村を捨てるのは国の長としては異常だとも思える行為だな。俺はこの村を捨てたくない。全員が全員今日生きることに精一杯だ、それでも互いに支え合い生きていっている。それを安易に外部の人間が、突然破壊しつくしてもそれで納得できるとは思えない。人は人だ。同時に森に住まう魔獣も同じだ。こちらから何もしなければ、あちらは襲ってくることは基本的にない。そもそも、俺が女王様に力を見せることで、結果として何か得られるとはとても思えない。村から生贄を差し出さなくていいとするのなら、それは大間違いだ。今ここでは、俺の方が上手だ。女王様が大切にしているフローラは今俺の隣にいる。この子がどうなってもいいのか?」



 どうだ。これでどうだ。かなり苦肉のともいえる行為だが、果たしてこれでどうかなるのか? 俺もよくわからない。ただやれるだけは今やった。これでだめならあとは……



「ははは!ははは!!」


「何がおかしい」


「いいや、素晴らしい言葉だった。僕にここまで言える人がいるだなんて、さっきもいったけどスーも逃げるわけだ。こりゃー厳しいね。まあ、今の発言君でなければ、殺していたけどね。ただ、君の力を僕は知らない。何が起こるかわかったもんじゃない。僕は魔獣や村なんてどうでもいい。大事なのは、そこの女の子だ。その美しくかわいらしいさがなくなるのは僕にとってきついことだ。どう考えたって、今の状況は君の方が有利に立っているのは明らかだね。素晴らしい。来たかいがあったよ」


「レヴィアさまどういたしましょう?」


「今回は僕の負けでいい。面白いものが見れた。彼の今後が非常に気になるんだ。そうだな。近いうちにうちの城に来るといい。おもてなしをしてあげよう。夢乃あゆむ」


 

 嫉妬の魔女レヴィア、スーはそのまま背中を向けて去っていく、一人は楽しそうにしながら歩いていった。俺は一瞬にして肩の荷が下りたことを理解する。



「よくやりましたね。さすが救世主様!」


「ごめん。ありがとう。君のおかげだよ」


「どういうことです?」


「本当は非常に怖かったんだ。君が手を握っていたことが何より心強かった」


「なるほど!だから手汗かいてるのですね!」


「そうだけど!なんか違う!!いや!そうだけど!!」



 こうして、女王との初対面は終わりを迎えた。非常に焦ったことだが、相手も今はけん制している最中だということがわかった。両者今は何もしないほうが得策だと踏んだのだろう。

 こちらはすでにギリギリのラインにいるが、それでも、一度だけでなく二度までことが終わったのだ。ここで喜ばずしていつ喜ぶのだか。


 さすがにこう何回も来ると厳しいものがあるな。

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