第三十七話5
「今回は非常に苦戦強いられるものとなった。結果は散々なものだ。これを想定できず、考えが甘かった。とても甘かった。それは本当に申し訳ないと思う。だが、今までとは違うということ、これについて考えてほしい。魔女は俺らに対して脅威だと考え始めたのだ。だからこそ武力行使を始めた。でなければ、今までと変わらず行動したはずだ」
コールの演説が始まった。改革するものはいつの時代もこうして、周りに話すのだろう。全体は何も話さず、ただ熱心に聞いているように見えた。
「相手が強大であることがわかった。これは非常に厳しいかもしれない。だが、それでも俺たちは攻略をしなければいけない。自由のために、亡くなった者たちのためにも、ここでとどまっては意味がない。俺も正直攻略できるか怪しいと感じている。ただ、それを助けてくれるものがいる。夢乃あゆむ! 彼は、ここに来てから言われているが、救世主だ! 本物だ」
「コールさん! でも素性がわからないものですが、それは……」
「いい質問だ。なら、簡単に彼のことを話そう。初陣でもある今回の戦いで、大きな戦果を得てきた。女王の部屋へと入ることができた。これは今までにないことだ。非常に素晴らしいことだ。これによって、魔女がどのように考えるかはある程度予想がつく、こちらにはある意味有利に働いているのかもしれない。ここがチャンスなんだ。もう一度考え直してほしい! 自由のため、亡くなった者たちのためにも再度力を貸してほしい。今回は今までとは違う。救世主がそばにいるのだから……」
コールの話は終わった。あたり一体は納得しているのかわからないが、静かになった。物音ひとつもあげることがないほどまでに静けさだけが包んでいた。
しかし……
「リーダーがそういってくれるの待っていた!!」
「俺らは今までのことを無駄にする気はないぞ!」
驚くことであった。周りはコールの言葉によって奮い立たされたのだ。突然の変化に俺は驚きを隠せないでいたが、周りは本気のようであり、なんか逆に感化される。
ここまで多くの声援を集め、まとめ攻略する。どれほどまでに彼らは自由を欲しがっているのかは明白だった。これこそコール、そして俺がしたかったことであり、これはまだ序章にすぎない。ここから攻略目指して進むこと。
果てしないことかもしれないが、それは実に興味深いものでもあり、俺も今までとは違った攻略に対して胸躍らせるのだった。
演説の後、コールは俺を見るなり、笑顔で見つめてくる。俺も返答する。
「あゆむがいてくれるだけで、何とかできる気がしてくるよ。ありがとう」
「俺は何もしてないんだがな。ただ、目的は同じだ。ともに戦おう」
「よろしく頼む」
「ああ……」
そして、俺たちの戦いは始まるのだった。ここから俺は自分の思う攻略に向けて動き始める。くまのぬいぐるみは、それに対しての行動をすでに開始しているはずだ。
時間は残されていない。いつ強欲の魔女マリリンが行動するかはわからない。その前にこちらが早く先手を打たなければいけない。
急がなくては……