第三十三話 援助
くまのぬいぐるみとの話し合いが終わり、俺だけが戻る。すると、そこには先ほどから変わらず立ち尽くしているコールの姿があった。
後ろから見てもわかるほどまでに彼は恐怖していた。仕方がないだろう。今までとは全く違った本物の戦争を体験したのだから、それを見て今まで通りの性格で過ごせるものはいないと感じる。
何も語らずまじまじと見ていると、コールは力なくしたかのように崩れ落ちていった。両膝を地面につけ、正座のような座り方をした。
「これが……これが本物なのか……軽率だった……」
コールからでる第一声。今でも泣き出しそうなほどに声が震えており、俺もそれに感化されそうになる。
「ごめん、軽率だった。本当にみな申し訳ない」
そういうと、コールは立ち上がりその場から去っていく。その後ろをエブリンが追いかけていく、ただ事ではないのは十分理解している。レアと目があい、俺もすかさずおいかけ始める。
レジスタンス基地より、少し行った森の中で二人を見つけやいなやすぐさまコールの大きな声が聞こえ始めた。
「くっそーーー!! どうして!! こんな……」
俺は前に出ることをやめ、茂みに隠れ二人を見守ることにする。
コールの一声はすさまじいものであり、嘆きや慟哭ともとらえれるのではないのか? とも思えるほど泣き崩れていた。
同じ気持ちは決してわかることはないが、共感することは今の俺としてはできる。昔の自分をはたから見ているように感じとってしまう。それほどまでに彼に対しての憤りや葛藤、悲しみが痛いほどわかった。
隣にエブリンがいた。だが、彼女は見るばかりで何もできることがないからなのか、唇をかみしめ、ただ膝をつきながら嘆いているコールを見るだけだった。
この世界の状態を嘆いているものを端から見るのは始めてだ。俺もいつもこのように見られ、何もできずに苦しんでいたように見えていたのだろうか? 事実そうだとしても、現実は非常でこんなときでさえも日々時間だけは絶え間なく進んでいく、一番恨んでしまうかもしれない。そう感じた。
「これからどうすればいいのだろうか……エブリン」
「……わかりません……私にもこの先どうすればいいのかさっぱりです」
コールにまともな回答ができず悔しがるエブリンの姿がそこにはあった。俺は今までの体験を通してわかる。この物語に正解はない。そこにあるのは、自由のみ。
この世界の不条理さは、俺も痛感している。彼がレジスタンス内ではなく、ここで隠れて行動できるのは、俺よりも素晴らしいとさえ感じた。