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七人の魔女と一人の転生者。  作者: しじみかん。
憤怒の魔女
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第十九話 閃光

 何もかもが絶望への地獄に落とされた。希望が一ミリもない世界。俺はこの世界に来て何もできないことをあの戦いの中で感じ取ってしまった。

 力がない、魔法が使えないことまでもが相手側に知られてしまった。俺はこのままどうするのだろうか?

一次的にラスティが俺を気遣い強制的にでも、今いるこの部屋に連れてこさせた。結果一週間食べ物は、おろか水さえもノドを通さないことが起きていた。少しずつだが、なぜか体はまだ生きたい! そう思えるかのように動き出している。なので、無理やりにでも胃に物を入れる。今までこのような体験を味わったことがあるのだろうか? いやない。そもそも俺は自分の世界でちゃんと向き合ったことがない。そんなものに、この世界で生きていくなんて言うのはムリゲーだった。


 これからは、どのようにして生きていくべきなのだろうか?

 俺は一人部屋の中で布団にくるまりひたすら先のことを考えていた。答えの見つからない道を進むのが、これほど怖いものであるという恐怖と絶望、不安がさらに俺自身を苦しめてくる。結局何も変えることができなかった。何も俺は変えれなかった。

 虚無感、今はただそれに苛まれている状態。嫉妬の魔女攻略、自己の強化を何度もしてきたが、結果はすべてをひっくり返してしまった。それが非常に心苦しいものになってしまった。

 

 あのあと嫉妬の魔女は満足したようで、そのまま何もせず帰っていった。俺はただそれを見つめるだけしかできなかった。魔法があれば何かできた。そう思えて仕方がない。

 ただなぜか、ここまで落ちたにもかかわらず、本当になぜかまだ少しの希望が心のうちにあることが俺には不思議でしょうがなかった。どうしてだろう? どうして、ここまで落とされたのにも関わらず、俺は精神をまともに保っていけているのだろうか?

 

 不思議の不思議、不思議でしかない。そもそもこの世界の惨状を見ればすぐさま心病み行動することができなくなってしまう。だが俺はできた。

 なぜか攻略することにかなり力を入れることができたのだ。これを不思議と言わないで何を不思議というのだろうか? そのくらいにまだ、俺には落ちていない。という確信はできないが心があった。


 負けていない。これが一つ己の中には浮いており、この一週間ただ布団の中に居座っていたというわけでもなかった。戦いの次の日にはすでに体が勝手に行動を始めており、自分の自我とは真逆の行動をとっていた。それは脳みそも同じだった。一体どうしてそのような行動をとっているのかはわからないが、俺はもしかしたら何かに気付いたのかもしれない。

 

 自我の方では、ノイローゼに少しかかってはいたが、脳や体では真逆。俺の意に反する行為。俺は何かに乗っ取られたかのように、ペンと紙を使って脳にある記憶を書き記していた。やがて、一つの結果が俺の元にやってきた。



「嘘をつく……俺が嘘をつくから私も嘘をつく……」



 フローラが俺の前に現れ発した言葉、そして幻覚ででてきた言葉。



「曲がる思考を活用せよ……そうだったのか……お前は本当にすげーよ……」



 俺は何かに気付いた瞬間、今まで会わなかった熊のぬいぐるみが俺の目の前に現れる。あたりと言わんばかりにこちらに話しかけてくる。



「御名答、夢乃あゆむさんさすがです。やはり救世主ですね!」


「今更のこのこ現れて何の用だよ。自称色欲の魔女」


「お答えわかったはずだと思うのですが?」


「そうだな。ただ結びつくことができない。それは俺に魔法がないからなのか? 最後に確証と言えるものがない」


 

 最終的に確定と言えることが何もなかった。ただ俺は何気なく考えでてきた答えであり、それは感情が含んでいる可能性が高くあったからだ。

 何せこの ”熊のぬいぐるみ” をフローラであるというものが少なからず存在しているという俺なりの答えがあるが、ならなぜ目の前にフローラがいて、ここにもいるのか? といったことやら、疑問になる点が非常に多い、ただフローラが色欲の魔女である可能性が極めて高いのも一つある。

 なぜそのようなことが言えるのかというと、そもそもフローラの魔法のレベルが、そこら辺の者たちとは比なるものである点。火力が強かったりと性能面が明らかにおかしい。

 

 国が嫉妬の魔女の近くであるという点、すべての悪い状態を背負ったということは、つまり自らを犠牲にし他を助けたということも考えられる。何より、他の人とは違って見た目が綺麗すぎた。そして嫉妬の魔女の城にはメイドはいない。

 感謝祭に現れた者たちは、すでに嫉妬の魔女が作った死体であるということを考えれば、あの場にいさせることができるはずだ。なぜ死体であるのかもしれない? という答えは、アーロンとリアムの体温に気付けば確定できたことだった。明らかに人の体温ではない。なのに動けた。


 俺は今更ながら、今まで渡ってきたことのすべての記憶を思い起こし紙に書き記した。まとめた情報が思いもよらないものになっていたことに気づく。だが、可能性としては非常に高い。

 俺の記憶にない死体を操ることができる魔法がもしあるとするのならば、可能であろう。フローラに記憶が欠けているのも真実表せば何か起こされるに違いない。だからそのようにしたのだろう。

 ただ、ここで一つ問題点があがった。嫉妬の魔女がそこまでできるのか? といった点。遊びで死体に魂を宿し動かすことは可能なのはわかるが、人の記憶を操り消し、新しい記憶を埋め込む。

 あの国の惨状を見て、そこまでの知能があるとはとてもではないが思えなかった。確実に他の魔女も絡んだ仕業だということを考えた。

 嫉妬の魔女の国に閉じ込めたのは、レヴィア自身が束縛に関する魔法に長けていたからに違いない。ならば……


 俺は今思っていることをなぜか、ぼそぼそと話しており熊のぬいぐるみはそれをまじまじと聞いて頷いていた。驚いた反応も同時に見て取れた。



「夢乃あゆむさん。なんか怖いですね。あなた」


「何がだよ……」



 俺の発言になぜか怖がる自称色欲の魔女、推測がどこまで当たっているのかはわからないが、事実詳しくここまで話せるのが何より素晴らしいことなのだろうか。それとも怖いのだろうか?

 そして俺は、気が付けば熊のぬいぐるみを片手に持ち動き始めていた。目的の場所はラスティの部屋だ。

 扉を思いきり開けたせいもあり、目の前にいたラスティとルークの二人は驚いた何事かの表情で俺を見る。



「夢乃あゆむさん……」



 驚き名前を言うラスティ。俺はすかさず今思ったことを話告げる。その話に何か気づいたのかラスティやルークも含めた会話が始まった。



「なるほど……ルークどうですか? 今の彼の会話を聞いて」


「死体を操り遊ぶ。記憶を改ざんする。思いもよらないようなことですが、可能性としてはあるのではないのでしょうか?」



 ラスティとルークは互いに首を傾げつつも、俺の話を聞き入れる。数分の沈黙が続き、納得したかのようにラスティが口を開く。



「夢乃あゆむさんの手助けになるかわかりませんが、実を言うと私の記憶の中にある色欲の魔女に関する見た目の想像ができないのです。もしかしたら、本当にあなたの言うフローラさんが色欲の魔女であるかもしれないという可能性は捨てきれない問題になっています」


「記憶がない……? どういうことですか?」


「過去に夜襲に似たようなことが起きた際に色欲の魔女はすべてを受けて消えました。その頃から私の記憶にある色欲の魔女の見た目というものがもともとなかったかのようにして消え去ってしまいました。なので、フローラさんが色欲の魔女であることも納得せざる負えないのかもしれませんね」



 ラスティは悲しみながらもそのことを話した。過去に三人の利害が一致している魔女たちの奇襲があり、ルーシィがそのために自らを犠牲にして、争いをなくそうとした戦い。何度も行われたその結果、隙を見つけられ襲われた。ラスティだけが能力がまだ開花したばかりなために、教われることがなかったが、その他の三人の魔女たちは、痛手を負ってしまったという争い。

 今の俺と同様に自らの力のなさから犯されてしまったといわんばかりに後悔の表情をするラスティ、それを見ても何も伝えることができないが、ただ一つどんなに魔法やらの力を持っていたとしても、それをうまく扱えず苦しむものも世の中にいるということを今この状況を見て理解することになった。

 

 俺には魔法がないという状態になっているが、それでもここまで立ち上がって進んできた実績がある。この世界での一般よりも、もしかしたら低いのかもしれない。だが、それでも死せず、この場で生きている。何より驚くことは、他のものたちが俺を疑わず、敵対ということもしてこなかったということ。

 もともといた世界でも、親切の言葉があり、それを考えて行動していた人たちが多くいたことを思い出す。そして俺はある意味で後悔が心の中で一人でに遊んでいる。そんな気持ちに苛まれた。

 それでも前を向き進まなければいけないこと、それを考えラスティやルークを考え、フローラの言葉を考え、アーロン、リアム、今まで出会ってきた者たちを考えた結果、一つの決断をした。



「ラスティ、ルーク、申し訳ないが俺はこのまま嫉妬の魔女の城へと乗り込もうと思う。とても歯が立たないし、何をされるかわかったものではないが、それでも今の劣勢である状態を何とかして見せる。魔法がなかろうが、もうこの際どうだっていい。俺はこの一週間で様々なことを考えて来た。だからこそ、今わかったんだ。俺はこの世界を変える。事象の大元の問題があるかもしれないが、それはまた起きてからのお楽しみってやつだ。今一番救うべきことは、フローラそして、今まで出会ってきた者たちの笑顔だ。何としても打ち勝って見せる」



 何ともむちゃくちゃなことであることはすべてわかっている。それを聞いてラスティは何も言わず、驚いた表情をしていた。一体俺に何ができるのか? それはなってみないとわからない。ただ、行けば何かしら起こることが確実にある。だからこそ、俺は行動すると決めた。何もしないよりかは、してやったほうがこの世界では生きていく簡単な近道だということを俺は今までの体験を得て、知り得ていったのかもしれない。


 元の世界とは違う俺、今まで何度も自分を持ち上げようとして来てはぼろがでて、挙句にはこの世界にいない両親のせいにしていたりもしたが、そんなことをいつまでもしていたってキリがない。そう思えば思うほど強固な思考が俺の中にはやってきていた。

 何とかなるという甘い考えが少なからずあるかもしれないが、ただ一つ少ない希望が確実に心の中にあった。どういうことだかはわからない。自分自身でむちゃな行動にでることに対して葛藤すらあるが、今はそんなの考えている暇はない。次いつ嫉妬の魔女が来るのかもわからないのならば、いくしかない。

 

 そんなことを聞いていたラスティはこちらを見るなり表情を変え答えた。



「あなたのその表情や勇気に感化されました。私たちも全力をもってあなたのサポートをいたします。嫉妬の魔女がこちらに攻め入ってくる際一つ知り得た情報があります。もうすでにルーシィさんの条約による魔法の力は失っております。ならば、こちらもでるとこ出れるということですね。私はこの国を色欲の魔女の国を見なければいけませんので、いくことができません。なので、こちらで兵士を用意します。数千はくだらないかと思います。きっとあなたのお役に立てることでしょう」



 ラスティはそう話した。それに返答するかのようにルークは思い切ったように発言する。



「ラスティさま、誠に申し訳ございません。私この夢乃あゆむの守護するものとして近くにいることは叶いませんか?」


「ルークお前……」


「ここ数週間のうちにあゆむを何度も見て来た。その時に実感したんだ。心優しく本気で世界を変えてくれる存在だと、人のために自ら進み出る力があるものだと、ミュールに対するお前の行動を見て心動かされたのかもしれない。魔法がなくても構わないその心、俺は称賛に値するものだと思う。ラスティさま、従者である私目がこんなことを言うことあってはならないとは思いますが、今回ばかり許していただけないでしょうか?」



 ルークは本気だ。俺はもしかしたら、彼の人生観を変えてしまったのかもしれないというほどに変わっていた。無言で何考えているのかわからなく、あまり好きにはなれそうにはなかったが、ちゃんと物事考え俺を見ていた。観察力というか、判断力というよりか……

 ラスティはルークの言葉を聞くなり二つ返事で答える。



「はい、わかりました。なら、こちらからの要求を全うしてください。彼夢乃あゆむさんを確実に死なさず帰ってこさせる任務と言う形で、ルークあなたに伝えます。いいですね?」


「ありがとうございます!」


「すげ……」


 

 なんだかすんなり物事が進んだ。熊のぬいぐるみは、永遠と俺につかまれて空中を漂っていた様子で、プランプランと揺らいで遊んでいたが、今の俺にはそれを気にすることができないほどにうれしさや決断に対する強固な姿勢があった気がした。

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