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七人の魔女と一人の転生者。  作者: しじみかん。
憤怒の魔女
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第十七話 喪失

 魔法のような、魔法ではないもの。俺は色欲の魔女の城で知り得た情報を、ある程度今目の前にいる。ラスティに話続ける。それは俺も話していて意味がわからない。そう思えるような内容が数多くあった。自分では細かく理解してはいないが、ラスティはそれでも俺を見るなり頷いていた。

 

 魔法というものとは違ったもの。この世界には少なからずそういった別の能力があるとされている。それは色欲の魔女の城の本で見つけた情報だ。どこまで彼女が知っていたのかは定かではない。同じくして目の前に熊のぬいぐるみになっている、自称色欲の魔女は無言のまま俺の話とラスティの話を聞いていた。

 なぜそのような態度をとっているのかはわからないが、それでもじーっと黙ったままだった。

 

 本来この世界では、魔法は俺が元居た世界と同じように日常生活では、平然と使われており当たり前のような感じで日常に溶け込んでいた。なので、この世界の住人は魔法が使えることに疑問を浮かぶことはまずない。あるとするのならば、その威力が凄まじいものだったり、俺と同じように異世界からやってきた。というのがあるものだけだ。それ以外は平然と生活をしている。しかもそれを使って。

 しかし、それ以外の能力があると……それも魔法というものではなく、また別のカテゴリに属するもの。細かなものは書かれていなかったが、読んでいるうちに、それは一つではなく複数だということがわかった。

 そこに終わりはなく、探せば探すほど見つかるらしい。特に俺を驚かせたものは、魔法が使えないデメリットがある異能力があることだ。


 今の俺にピッタリの情報だった。どうあがいても魔法という力を使えないものが世の中にはいる。それは、別の能力によってかき消されているのか、そもそも魔法を必要としないのか理由はさまざまだ。だが、事実それはいると書かれていた。俺はそれをくまなく探し回っていた。結局のところ見つかった情報では、それは特異能力と呼ばれており、絶対なる力と書かれていた。それを魔法でコピーすることはおろか、盗むこともできず、その人だけにしか使うことが許されないような代物だった。

 デメリットも非常に大きい、大体の場合その特異能力しか使うことができない。したがって、その限定された能力で難攻不落を突破する他なく、魔法のように自由が利くようなものでは決してない。

 力があまりにも強大すぎるがゆえに、魔法を作り出す体内因子を壊し、さらには魔法という技術すら組むことができないくらいに置き換わってしまう。魔法の代わりにそれが代替えとして備わっている。そのように考えた方が良いのかもしれない。だが、普通に考えても、限定された能力であるがゆえに非常に使うのが困難になる。その種類がそもそも未知数であり、代表的な力があるわけでもない。そもそもその力自体気が付いたら継承されている。このようなことが多く、事実突然その力に目覚めるようになる。


 本当にわけのわからない自由気ままな能力というわけだ。もし、俺にそのような能力が入っているのならば、魔法が使えないことも納得することができるが、その特異能力自体未知な存在であり、どんな能力があるのかも、自分自身で見つけ出すしか方法がない。

 魔法を鑑定する道具はあるのだが、他の能力を鑑定する道具はいまだこの世界には存在しない。それくらいに色欲の魔女は極秘でこのようなことを研究していたのかもしれない。

 だからこそ、色欲の魔女に対して、元々魔法の力が強いこともあり、さらに強くなれば勝ち目がないと判断した反対勢力は、いかなることを使ってでも排除しようと考えたのだろう。

 俺はそれをラスティに話した。



「……」



 ラスティは無言のまま下を向きながら、考え始めていた。俺の話に信ぴょう性はどこにもないが、事実として、俺が本来知り得ない情報を持ってきたことにより、困惑しているのだろう。その後俺の方に顔を向き話始めた。



「情報が事実ならば、非常に素晴らしいものです。色欲の魔女がどこまで情報を得ていたのか? 調査していたのかはわかりませんが、可能性としては十分あり得ることかと思います。何を隠そう、ルークの持っている刀が、それに通じるのようなものだと私は勝手ながら考えていますし」



 ……刀? いう手も最初からルークは腰に刀をぶら下げている。いつも持ち歩いているから不思議に思うどころかアクセサリー化していたし、第一に俺の世界ならば、過去の時代にそれはあった。疑問は浮かぶが、魔法があるこの世界で、それを不思議に思うのはあるのだろうか? だが、ラスティはそう話した。普通の刀ではないと話すように。



「ルークの刀は、錆びず、折れず、腐らず、どんな強靭な肉体や強固な物体であろうが一刀両断することが可能です。魔法によるものかと私は思いましたが、そうではなく、ほぼ使っていないと話します。過去にそちらを研究しようかと思いましたが、結果として私たちの技術ではそれを見つけることができませんでした」


「ルークは何か知っているのか?」



 俺はラスティの後ろで立っている。本人に問いかける。だが、難しい表情をしていた。



「申し訳ないが、私にもわからない。ただ魔法が使える。それでもこの刀も使える。今のあゆむの話すことが本当なら、その特異能力ではないまた別のものかもしれないとうっすらと考えてしまうな」


「本人でもわからないか……そもそもどこでその刀を手に入れたんだよ」


「ある者が私に渡してくれた。それを愛用として使っている。黒ずくめの男だった。魔獣との戦いで終わりと思ったときに突然やってきては、私の目の前に投げたのだ。必死になって取り魔獣たちを葬った。気が付けば、本人はいない。感謝をしたいが、手掛かりもなくどうすることもできないな」


「壮大なことがあったんだな。魔獣との戦い」



 俺がなんとなくその話を聞き、納得しているとラスティがその魔獣との戦いについて話を入れ始める。



「あれは私のせいでもあります。取引と称して簡単に信用しルークたちを向かわせた。今考えてもおかしなお話です」


「もしかして、俺が思う以上に結構大きな問題だったり?」


「友好的な関係にしましょうと強欲の魔女と会談をした際に魔獣の奇襲に会いました。すべては思考を奪い意のままに操ることを得意とする強欲の魔女の策略でした。我が軍は少数だったこともあり、なすすべなく数十人がやられました。結果的にルークもぼろぼろであり、一国の長として情けないです」


「ラスティさまが気に病むことではないかと。不甲斐ない自分のせいでもあります」



 意外と色々とあるんだな……

 俺は思っている以上に溝が深い魔女たちの関係に戸惑い始めていた。これをこれから来る事象解決のために手を貸せだなんて、どのようにすればいいのやら。

 そもそも嫉妬の魔女の時点で扱いにハードルが非常に高い魔女がいて、それを頭脳を使って思考を奪い計算をしてくる魔女がいるのはちとやりづらい。

 どうしたものかと、悩みが増えていく俺だった。答えを求めていくうちに……



「ラスティ、ルーク……俺は……」


ドガアアアアアンン!!


「「緊急事態発生、緊急事態発生!!」」


「「???」」



 俺が口を開こうとした矢先、ここにいても聞こえるほどの大きな爆発音が聞こえて来た。地震のような振動も追い込り、その場にいたものたち全員が異様だともいえるその状況を察知する。

 部屋の外からは、兵士の緊急事態発生との声が辺りに響き渡っていた。すぐさま、ラスティ、ルークは部屋を出る。すかさず俺もでていこうとしたとき、今まで黙っていた熊のぬいぐるみ、もとい色欲の魔女がようやく口を開いた。



「夢乃あゆむさん。いかない方が身のためです」


「どうしてだ?」



 色欲の魔女は異様な面持ちでそう答えた。あまりにも今までとは違った声質や口調であるため、おかしなことなのは十分理解することができた。だが、俺自身の身のためとは……色欲の魔女に問う。



「あなたを狙っているものが、この国へと攻め入ってきました。凄まじいほどの憎悪を感じさせます。あと一つ話しておきますが、私が色欲の国に出れたときに感じたことなのですが、もう放漫の魔女の条約による魔法の力が弱まっています」


「ってことは……ラスティもより危ないじゃないか?」


「そうですが、彼女は言っても魔女です。自分の身くらいは守れます」


「悪いが、あの子は放ってはおけない。いくら魔法が使えるからといっても、あの年齢ではムリゲーになることもある。ルークもいるが、なんか胸騒ぎがしてならない」


「胸騒ぎですか?」



 色欲の魔女がそう話す。俺はなぜかこの爆発が計算されたものだということを考え始めていた。なぜそのようになっているのかは、ただの勘が強いが、あまりにも爆発音や振動が大きすぎる。ゆえにそう考えていた。そして何より、ラスティが話していた”魔女はしなない”これが引っ掛かっていた。

 これほどの大きなものそして、魔女が死んでいない。俺は一つの答えにたどり着いた。気が付けば、色欲の魔女の制止を振り切って、城の外の中心部まで走っていた。


 あたり一帯は、すでに火の海と化していた。逃げ惑う人々がおり、兵士たちも突然の奇襲に合い深手を負っているものが多かった。国の入り口である城門は無残な壊され方だったのが見て取れた。

 俺はあたりを見渡し、五感を研ぎ澄ましていた。悲鳴や爆発音、それに煙や熱、様々なものを肌で感じ始めていた。自然とそのような行動をしていたが、俺には今それをしなければいけないと考えていた。

 なぜならば……



「出て来いよ!! 俺が目当てだろ!! 」



 俺は俺自身を目的としたものの存在が、この場所を突き止めやってきた。そう考えた。そして大声を出し、ここにいるとあえて居場所を教えるような行動をした。

 案の定それは現れる。



「ははは……まさか、こちらが探すまでもなく出てくるとは……さすがだ。夢乃あゆむ」



 声は俺の憎む存在と同じ幼い感じの声、男装をし小柄な見た目、人を馬鹿にしたような笑い声、ゆっくりとこちらに歩み寄ってきた。

 そう……それは……



「よくわかったな。俺の居場所、嫉妬の魔女レヴィア」


「探すのは容易なことだ。ただ、どのように面会しに行くのか考えていた」


「本当に手荒い行為しかしないな。お前」


「貴様に言われたくないな。まさか、あんな殺し方をする貴様にはな」



 俺は嫉妬の魔女攻略の際、魔女そのものを殺した張本人だ。当時本当に殺したいと考えていたアーロンは突然の手の震えや恐怖に支配されて一歩前に進むことができなかった。それは今までの恐怖による支配が大きく、仕方ないことだ。それを代わりに俺がした。恨みがないわけではない。

 この世界にやってきては、すぐさま地獄のような世界を見せられた。人を人として見ようとしないそんな魔女。遊びとして人殺しを楽しむその光景に心底苛立ちを抱いていた。

 そんな俺に嫉妬の魔女はこう話す。



「一度私を倒したものだ。この場で貴様に褒美をくれてやろう。私の仲間にならないか?」



 突然何を言い出すかと思えば、本当に頭おかしいのか? 俺はその質問を理解するのに苦労した。だが、答えはNOだ。殺しを遊びとするものと一緒にいる気はない。



「その質問に意味はあるのかわからないのだが」


「そうだな。貴様にとって意味のないものかもしれないな。NOか?」


「そうだな。お前に従うなら死んだほうがましだ」


「あははは!!」



 レヴィアは俺の回答に笑みをこぼし、甲高い笑い声までセットでつけた。何が面白いのかわからないが、この場でいまだに遊びを楽しんでいるに違いないと確信した俺の表情は、相手に憎悪を知らせるほどのものになっていた。



「まあ、知っていたさ。簡単には来ないこと。だから私は考えた。どうすすればその脳を私のものにできるのか? どうすれば、お前のような存在と一緒に戯れることができるのか? そうだから私の答えはこうだ。これを見てどう判断するかはお前の勝手だ……だせ」



 俺の反応がわかっていたような返答をするレヴィア、そして後ろにいる兵士に向かって何かを出すように伝えた。何を今更出そうが、俺は俺のまま答えは変わらない。そう考えているし、それはこれからも変わることは、何が来ようとも動じず、相手の言いなりになることは決して、あり得ない。俺の意志は元いた世界よりも何倍も成長をしていたのだと今ここになって感じ始めていた。

 だが、この世界は時に非常なものでもあることを忘れていた。俺は何度もそれを目の当たりにしたにもかかわらず、理解していなかった。そう……出てきたものが……



「うそだろ……なんで……」


「あははは!! その顔、その絶望に満ちた表情素敵だ~!! 私は好きだぞ、お前のその勝利に満ちた感情から絶望に変わる瞬間、エクスタシーだ……はぁ~」



 出てきたものが、俺の目の前にごろんと転がっていく。俺は膝を付き、今考えていたことがなかったかのように、それを見つめ絶望した。

 その正体は、俺がここに来る際に助けた少女の生首だった。目は見開き、絶望の表情のように俺は見て取れた。だが、事実あいつらのすることは、想像以上のものだ。

 俺は気が付けば、大きな声で悲鳴をあげていた。



「あああああああああ゛!!!!!」


「あははは!! 最高だ!! 素晴らしい!! あははは!!」



 魔女レヴィアは、俺を見つつずーっと笑っていた。それも誰もが見るくらいに楽しそうに……

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