第十三話 余裕
俺と魔女の会話はまだ続く、知りたいこともたくさんあるし、何せ俺の世界に存在しない魔法に関することそれが何より理解したいものだ。
対面している魔女は、憤怒の魔女サイス・ラスティ、ある意味で俺の希望の光ともとれるような人物。
ただ、本気でこの魔女を信用していいのかはわからない。そもそも魔女自体あまり良いイメージがないからなのもある。
サイス・ラスティは俺が気になっていた。魔法についての説明をし始める。
この世界の魔法については村長から軽く聞いてはいる。この世界に住まう人々は魔法を使える。ただそれも日常生活レべル程度であり、それ以上でもそれ以下でもない。どんなものにでも、それが使える。
これは人ではなく、動物も適応される。だからこそ、魔獣と言うモンスターも存在し、非常に人々を恐怖に陥れている存在として忌み嫌われている。
そもそも獣と魔獣とでは全く意味がことなり、まあ魔法が暴走して魔獣化という簡単な考えで俺は納得している。
俺がゲームなんかで知り得ている魔法というもの、やはりこの世界ではそれがより多く分類されている。一般的に火、水、雷といったものから始まり、光属性や闇属性もある。大まかに計10種類存在するとされ、そのどれもが突き詰めれば突き詰めるほど頭が痛くなりそうなものになっている。
この世界の魔法は「火・水・雷・風・地・草・光・闇」計8種類。この中でも「光、闇」以外であれば、どんな人でも条件を満たせば発動が可能。光と闇に関しては、素質があるかどうかで決まる。
これだけだと8種類であり、プラス2種類、それらに属さないもので「無属性魔法」
どんなものでも解明不可能であり、強力すぎるもの同時に理解しがたいものや幻とされているものが「幻属性魔法」と言われている。
光と闇でさえも人を選ぶのに、その上があるのは結構研究も進んでいる上に、色々とややこしいとは思う。サイス・ラスティ曰く、魔女でさえも8種類がやっととと言うお話だ。そもそも、魔女は自分が得意とする魔法しか使うことをほぼしないらしく、あまり知識を持ち合わせている様子でもない。
まあ俺には関係のないお話だけど。
「っということです。魔法のお話いかがでしたか?」
「非常にお勉強になりました……」
長々と魔法のお話を聞いて、興味を抱いたが結果として俺には使えないのでどうしようもない。ただいらない記憶の一つかもしれないと心の中で少し思う。いつかは使えるようになれればいいかなーと考えるが、それがいつになるかわからないので、ある意味絶望といったところだ。
サイス・ラスティはにこやかにこちらに笑顔を振りまく、かわいいといったらそうなのだが、魔女は成長が止まっている。ということは、年齢が俺より上である可能性も少なからずあるんだよな……
合法ロリが体現できてしまうのかもしれない。そう思い年齢を聞くことにした。
「申し訳ないけど、年齢はおいくつなんです?」
「そうですね。企業秘密ということでお願いできませんか?」
「まあ、そうですよね~あはは」
結果教えてはくれない。まあそれもそうだよな。見た目コンプレックスのような話し方を非常にサイス・ラスティはしてくる。なぜなのかは明白だろう。
そもそもが、魔法を受け入れたのが一番最後であり、周りからも新米という環境だ。そこに年齢も重ね合わせられれば、辛いことこの上ないだろう。
サイス・ラスティは、一通り話終わったのだろうか、俺に質問をしてくるようになった。
「夢乃あゆむさんは、この世界に来る前はどういったことをしていたのですか?」
やべー質問来た。ある意味やべー質問。俺は必死に嘘を考える。どう取り繕おうか? といったことだ。非常にリアルの世界の話を聞きだされると、何も答えれない。どういったことをしていたかなんて、ただ大学生ではあるもののニートで自堕落な生活をしていた。
今とはかなり違う生活スタイルだ。こればかりは口が裂けても言えない。
「何をしていた……ん~まあ平凡な大学生です」
「学生さんですか、頭はよろしくて?」
「それなりに!」
「ほほ~素晴らしい」
褒められた。ただ、俺はここでふと気が付くことが起きる。
あれ……なぜ会話できるんだ? 俺の世界の言葉となぜ一緒なんだ? 文字も読めてしまう。不思議に思ってしまう自分いて、試しに学生証の文字を読ませるために、サイス・ラスティに見せてみる。
「これ読める?」
「ん~……ルークどう?」
「未知の文字ですね。私には理解は追いついていません」
「そっか……一つ疑問があるんだ。俺はどうしてあなた方とお話ができて文字も読めるんだ?」
「この世界とは別の世界にいた存在が、なぜこの世界に適応できるか? ですか……それは、詳しいことはわかりません。そもそも、夢乃あゆむさん自体どういった能力をお持ちなのかも私にはわかりませんし、選ばれた理由も謎です。それは私たちにも言えることです。なぜ強力な魔法を私たちに付与したのか? 事象解決は、私たちでなければいけなかったのか? 考えれば考えるほど頭痛くなっていきます」
「ある意味俺の能力なのかもしれないのかもな~」
「そうですね」
この世界の言語は来たときにはすんなり理解し、文字も何不自由なく読めた。俺は別の意味での魔法を持ち合わせているのかもしれない。それが、無属性、幻属性の可能性も少なからず。
少しの期待もしつつだが、実践的にはとても思えないので悲しさは余計に出てくる。この人に俺が魔法が使えないことを話すのは良いことなのか? 信用ができない状態の中、葛藤は続く。
初めて会ったばかりで、急ぐのはもったいないのかもしれない。
話はひと段落付き、街を見たいと思いラスティ、ルークの三人で散歩が始まった。
街は広々とあり、そこら中が活気に満ち溢れていた。何よりレンガ作りであり、中には木造もある。環境に良いというのと、綺麗という街並みが続いている。
嫉妬の魔女とはまったくと言っていいほど違っている風景に俺は言葉が出ないでいる。ちゃんと人権が守られている。個々が個々で生活できているそんな国、サイス・ラスティは見た目は非常に幼いが、頭はしっかりしすぎているくらいに、立派であることを俺は知る。
たぶん年上なんだろうなーと思いつつ街を見渡す。
「非常に綺麗な街ですね」
俺は気が付けば、そんなことを口走っていた。それほど今までの冷酷さがあったのだろうか、サイス・ラスティはそれに対して答える。
「人は皆同じです。違いはありませんし、あってはならないのです。基本は変わりません。その中でも能力差などはありますので、そこを見て平等とは言い切れませんが、ある意味世は平等を目指しています。今は凍結しているルーシィもそんなことを日々話していました。平和な世界、ある程度平等である世界、私たちも同じ人なんだと、いくら強大な力を持っていたとしても、それはただのお飾りに過ぎないと」
「ルーシィですか……今どこで凍結しているんです?」
「それは不明です。ただ、頃合いを見て復活するということはお話しております。世界のすべてを統治するものがいなくなり、わが身を捧げてまで、この世に平和をもたらそうとした。彼女は偉大です。悔やむことがあるのならば、その時に夢乃あゆむさんがいて、彼女とお話することができたのならば、もっと今以上に良い世界になっていたのかもしれませんね」
放漫の魔女ルーシィ、この国に来て初めて聞くが、あまりにもこの世界に与えた影響が大きすぎるがゆえに、名前が独り歩きしているといったところ。
偉大であればあるほどの結果なのかもしれないし、彼女がいつかは復活する可能性は十分あり得るとサイス・ラスティは話す。彼女の目には、今ある状態を続ける。といったことしかできそうにないと見て取れるものだった。
それもそうだろう。魔法によって城から出ることができなくなった怠惰の魔女、自ら凍結し平和を望み今は不明のルーシィ、何より頼りになった色欲の魔女アスモ、だが現在は他の魔女の影響により行方不明、もしかすれば、亡くなっている可能性もある。
頼れるものたちが、すべていないこの状況、事象解決よりも敵対の魔女が攻めてきたら、それこそ終焉。
今は、魔女条約の方で、魔女自体が他の魔女の国に介入することが不可能であるため、進行はできない状態だからこそ、安心はできるが、いつそれが破られるかはわからない。
日々人は成長し続けると同時に魔女も同じだ。古きものは淘汰される。この常識は魔法も同じ。だが、俺にはどうすることもできそうにない。魔法もなければ、テレビでやるようなヒーローの力もありはしない。ただの一般人だ。会話のできる一般人。それが救世主の正体だなんて、笑えるものだな。
少し大きな山から街を見渡す憤怒の魔女サイス・ラスティ、彼女は今何を思い、何を考えてその先を見ているのだろうか? 不安だけではないはずだ。期待もあるはずだし、それに答えなければいけないのかもしれない。俺はどうするかと、思うばかりだった。
その日の夜から、一時的ではあるが活動場所をサイス・ラスティの統治する国にすることにした。彼女から話されたのだ。いく当てもなければ、目的は達成という結果に落ちてしまったこともある。なので、体を休める。それを主な理由として一泊することにした。
夜の静けさはどこも同じだ。ただ、安心できるかそうでないか? しかない。安心できる。それは素晴らしくある。ただ、あまりにもため息がでてくる。なぜだろうか? 答えは簡単だ。アーロン達の安否が知りたいし、あの時は泥臭い場所でも、それなりに楽しめた。仲間だから、これが生きるということだからなのかもしれない。詳しいことは何一つ理解していないが、ただそう思いたいこともある。
俺は気が付けば、眠りに落ちていた。
――――――――ようこそ
「またか……目的の場所にもついたし、情報を得た。ただ俺の魔法を使えないことは、どうしても聞けない。そろそろ答えてくれないか?」
俺は夢の中に時頼出てくる、この声に対して魔法の使えないことをすぐさま話す。だが、反応はあまりよいものではなかった。
――――――――――お主がそれを拒んでいる。だからこそ使えない。
「俺が拒んでいる? どこをどう見てそう判断を?」
――――――――――――時期にわかる日が来る。それよりもお主は明日に備えよ。
「またあほなこと話してる。次は何が来るんだよ」
気が付けば朝になっている。重たい体をあげる。非常に寝た気分がしない。またもやもやで起きたといった感じだ。最後まで話さないで終わる妖精のような相手。あまり好まないかな。
もし、あの声がサイス・ラスティの話す。夢の声なら、俺も選ばれしものは確実になる。まあそうだろうけど、ただ魔法が使えないのが俺の意志であり、俺自身が魔法を使うことを拒んでいると話した。
結局それだけで話が終わったが、なんとも腑に落ちない結果となった。もしかしたら、あの妖精と会うと絶対に何か起きては、腑に落ちない結果がでるので、ある意味悪魔と考えるようになった。
同時に今日何かあると話す妖精、この国で起こることなのか? 俺に対して起こることなのか? それはわからない。ある意味事象を持ってきている問題児の可能性もあり得る。
城の一室を借りている状態もあってか、非常に落ち着かない。俺はもしかしたらぼろ屋の方が性に合っているかもしれないと考える。そんなこんなで、前に訪れた魔女の部屋に入る。
いつみても高貴というかなんというか、魔女というのは非常に高い身分なんだなーと改めて思う。
奥から待っていたといわんばかりにラスティとルークが現れる。いく当てもないので、適当によっただけなのだけど、それが当たったみたいだった。
ラスティは椅子に腰かけ、俺はソファーに座る。ルークは立ったまま。これで二度目だが、まあ見慣れてしまっていた。これからに関することをラスティは話し始める。
「あゆむ、今日は色欲の魔女の統治しているはずであった国にいこうか、あいにく私は別の用事があるので、ルークがお供する形になるけど、行く当てもないのなら見てくるのも良いかもしれない。まあ、内情はほぼここと変わらないけど。何かが見えてくると思うんだ」
「せっかくだし、いくかな。俺も情報は欲しいわけだし、ラスティさんのお姉さんなら、見たいし」
「お姉さんのような人というのが厳密にいえばそう。まあどちらでもいいけど」
そうして、俺は色欲の魔女の統治していたはずだった国にいくことになった。基本は何も変わらないし、生きている人達もラスティが統治している分、何も変わらない。
ただ城は存在し、中には資料もたくさんある。あえて残しているとのこと。行方不明になったことを一番寂しがっていたのも見て取れたし、本当は自らが進みたいというのがあったのかもしれないが、魔女として勤めることは多くあるのだろう。仕方ないのかもしれないかな。
俺とルークは馬車に乗り、一旦ラスティの国を離れ、色欲の魔女の城へと向かい始めた。