119:2
大学生時代の頃の映像。下を向き、日常に飽き飽きし、楽しさの欠片もない光景が広がっていた。誰とも話さず、一人講義を受け帰る。どこにもよることなく真っすぐ家に帰り、ゲームをする。俺はこちらの記憶をよく知っていた。思い出したが正しいだろう。見れば見るほど、俺はそれに対して懐かしさと悲しさを感じる。
だが、フローラが日常的に笑っており、時には必死に怒っては顔を膨らませている光景は一切記憶にはなかった。こうして流れているということは、誰かが流しているのか? もしかしたら、本当に自分なのかもしれないと感じる。俺は混乱しはじめていた。そもそも、どうして二つの映像が繰り返し流されるのか? それが一番の疑問で仕方なかった。
問いただしても、答えるものはいない。そもそも俺はこの空間の中で、どういった形状で存在しているのかさえわからないのだ。映画館で見ているかのようにして、大きなスクリーンに映し出される。スライド方式で物語が……
そして、俺はある学生生活が目に入る。
「これは……」
その映像は、大してすごい! といったわけではなく、単なる日常風景だ。しかし、そこには知っている人物がいた。ベルルだ。だが、俺の知っている彼女の見た目ではなく、暗くどんよりした空気を醸し出している。近寄りがたいといった感じだ。当時は俺自身もそうであったため、別に何も感じない。
その映像には、ベルルと仲良くなっていく光景が映し出されていた。最初は、絡まれているところだった。変な男複数人に絡まれているところを、俺は何を血迷ったのか助けた。ボロボロに殴られながらも、笑顔で返事をしたものだから、笑われていた。
それからというもの、大学に通い始めていた。俺の記憶にはこんなの一切覚えていないこともあってか、思い返すこともなかった。しかし、傍から見れば充実した大学生生活を送っていたのだった。俺はそれに気づき、心なしか安心感を抱いていた。こんな記憶を覚えていれば、もっとましになっていたのかもしれない。そう思いつつも、過去があるからと自分を奮い立たせる。
そして、俺はあることに気づく。それは、あぐらをかいた俺のところに座りながらゲームをしていたということだった。彼女の部屋は、今の城とは何ら変わりないものばかり、そもそも俺の知っていたゲームジャンルばかりというよりかは、何も持たなかった彼女に楽しみを与えていたのだった。今それをこの映像を通して知ることになった。
「まじかよ……知ってるも何も俺が教えてたやつかよ……」
もしかすると、ベルルは前世の記憶があったのかもしれない。だからこそ、扉を破壊したあとも、鍵は開いているようにしていたのかもしれない。真実は本人にしかわからないが、俺はなぜ今までそれを知らなかったのか? っといったことばかり頭に浮かんでいた。