115:3
ドガン!! ドガン!!
向こうは俺に気付いている。どこかこの城で開けたところがあれば、すぐさま戦いを挑む気だ。しかし、どこかないものだろうか。そう考えているうちに目の前に光が見える。ある意味ゴールだと思い突っ走った。
ドドドド!! ズシャッ……!!
「え……」
俺は一瞬にして、尻を付く。何が起きたのか把握できなかった。向ている方向は、来た道そして触手のように扱っている木の枝。痛みを感じ、患部を触ると……
「まじか……」
右手には血が付着していた。どうやら、右の腹をかすめた。かすめたどころの話ではないのかもしれないが、血が服に滲みでているのがわかった。しかし、俺はそこを無理に抑え、必死に光の方へと進む。
下手に見てしまえば、そのまま倒れてしまうと考えたからだ。必死に進み。光に照らされながらも、その場所へ到達。そこに広がるのは、中心に大きな木を生やし、周りには水が流れていた。天井は開かれた、円形の庭のような場所。ここが何階に当たるのかわからないが、はっきりと外であると認識できる空間だった。
俺は傷を抑えつつベンチに座る。その場しのぎの応急処置をする。痛みは自然と感じなくなっていた。もしかすれば、アドなんたらがドバドバとでて平気になっているのだろうと考えた。
ドガアアアアン!!
目の前の壁は崩れ、そこから異形の木の化け物が姿を現す。やはり俺の位置はわかりきっていたようだ。同様に、こちらにいるということは、フローラたちは平気だということにも繋がった。
やつはこちらを見ている。ゆっくりと進んでいく、巨体はせいもあって、今までよりも遅い。壊しながらである以上仕方ないのだろう。
大きな目の前の木を化け物は見ている。何を察したのか、自分の右手をそちらにつないでしまう。俺はそれを見るなり驚く。
何かが来る。そう確信と同時にベンチから身を投げる。
ドガアアアンン!!
中心の木は一気に相手の攻撃手段へと変わり、枝がこちらに降り注いでくる。受け身を取り、ベンチの方を見ると、そこには粉々になったベンチの姿があった。当たれば危ない。これだけは脳裏に焼き付いているが、実物を見てしまえば、想像の透明さに驚かされる。これが相手の力であり、戦いというもの。
今までは他人に任せていた分。対象が自分となると難しさを感じる。攻略法はどこかに必ずある。俺はこの状態の中で、必死に考えていた。やつ自身の弱点となるところを。
この世界に来てかなりの歳月が経つ。それでも、元いた世界と比べれば些細な時間だ。俺は元いた世界の記憶を完全に忘れてはいない。
引きこもりの際にしまくっていたゲームを思い出す。目の前に巨大な敵がいる。それも木のような、それでいて、顔のパーツがなく、感知ができる。ありふれた種類の中で、この手のボスなんかは、よくあっていたはずだ。だが、どれも、これも、主人公サイドに力があり、実践にするにはムリゲーすぎるものばかり。
現状の使えるものが携帯のみ。ただし、持っているものはサイフ……あれ?
俺はルミナスの光が消えていることに気が付く。どこかで落としたのかもしれないと思い来た道を眺めるが、落ちている形跡がない。
ドガアアン!!
化け物は、無作為に攻撃をしていた。俺は別のベンチの場所で身を隠していた。正直バレバレな位置にはいる。ルミナスの光は現状使い方がわからず、後回しにした。そして、一つ疑問に思ったことが浮かんだ。
「やつは、何で俺の位置を把握しているんだ……?」
五感というものは、生きているのならばあるはずだ。顔のパーツがない状態の中で、五感の機能が正常にされているのならば、目を使い俺の居場所がわかるはず。しかし、俺の居場所は逃げてる最中に把握できないはず。触覚、味覚はそもそもあり得ない。
アウラウネと大男が俺の場所を把握できた。それもピンポイントに。しかし、それができるのならば、迂回させるようなことはしないはず。八方ふさがりを必ずしてこれるはず。
俺は考えに考え抜いた。そして、一つの仮説に至る。
「もし、あの化け物が、アウラウネ達とは違った位置情報を獲得していたら……」