113:闘争
戦いは終わっていない。これが何より心を落ち着かせない原因だ。そもそもはアウラウネから逃げ、他は戦うといったものだった。しかし、それが一人新たな七魔邪念神が現れたことによりふさがれた。
一人の尊き犠牲のもと討伐に成功と俺らは確信したはいいが、目の前が崩壊したことにより道が完全になくなっていた。来た道を帰らなければ、この城から出られなくなった。
後ろの扉を開こうと俺がした矢先。
ドガアアン!!!
崩壊した方向から大きな爆発音が鳴り響く。一同はそちらの方を向く。
「うそ……だろ……」
振り向けば、そこに現れたのは巨大な異形の形をした何かだった。身体には木の根っこのように巻き付いており、人型を有した何かと判断がつくものだった。それはこちらを見るなり、鋭い指で指す。
「マダ……オワリデハナイ……」
声が太くかすれているかのように聞こえ、とても人語を話せているとは思えない。これがもし先ほどの大男の正体だとするのならば、俺たちはそれこそ、事象問題となる根本的な部分に差し迫っているのではないのか? そう感じ取れるものとなった。
見た目だけで世界のすべてを支配できるであろう。操れるのではないのだろうか? それほどにまで巨体を有し、禍々しさがふつふつと感じる。大男は、この世界の魔法のレベルが低いといったようなニュアンスをいった。もし、そうだとするのならば、彼らの力はとてつもないほど脅威的なものとなるに違いない。
それに対しての対抗策は、そう簡単に考えれるものではない。いくら俺自身が強大な防御壁を持つとしても、物理で攻められれば一般人と何ら変わりない。すぐさまあの世生きだ。含めて、この巨体さだと魔法だけではなく、物理使用も容易いはずだ。両手の鋭さを見るに、確実に近接系の攻撃も覚悟しなければいけない。
ただ、一つの問題点がある。こちらは、先ほどの戦いで疲弊している。まともに戦えるものがいないのが現状。ようやく絶体絶命の窮地を乗り切ったというのに、新しい問題が浮き彫りとなってくる。
これでは、命がいくつあっても足りないのではないのか? 俺は少しの不安を抱えてはいたが、それがすべてを決定しうる結論としては答えとしてださなかった。確実に攻略法があると思ったからだ。今までを考えれば、先ほどの戦いを考えれば、確実にどこかしらに穴がある。
逃げることも一つの攻略法だ。俺は必死になり頭を回転させる。
「良い方法……」
そして一つの策を思いつく。今までと同じ。だが、現状それしかない。
「フローラ、今から言うこと聞いてくれ」
「はい」
フローラは俺を見るなり、素直に返事をする。そして、それを聞いたあと、表情は一辺する。
「あゆむさん……それは……」
「賭けでしかない。だが、もしかしたらだと感じてる」
「無茶が過ぎます。それでしたら、私たちが……」
「それは、ダメだ!! 俺も一人の戦士だ。ここは、かっこつけさせてくれないか?」
俺の説得を聞くなり、反対と申す。しかし、そこに救いの手が差し伸べられた。
「アスモ姉……今は信じよう? 彼なら、あゆむんなら何とかしてくれるはず」
「……」
唇をかみしめながらも、ため息をし、少しの間を置き、納得したように話す。
「わかりました。無理は絶対にさせません。何かあったら……」
「ああ、大丈夫。俺は……大丈夫だ!!」
生き残らせる。このことこそが、俺の約束された使命とした。目の前の大きな木のような化け物からは、逃げる。まともにやり合っても勝てる保証がない。ならば、身を隠し、また新たに整えて挑めばよいこと。
ただ一つ、俺はフローラに、ベルルに、この場にいるすべての皆に嘘をついた。バレたらどういわれるかはわからない。
俺は目の前の敵を見つつ言う。
「よし、スタートだ」