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目を開けば、広がる光景は煙と瓦礫、外からの日差しは壊れた場所がより広がり、強い光となって照らしていた。軽く力を放出するだけで、ここまでの威力を放つ攻撃。それをどうするかなんて言うのは、戦闘歴がない俺からすれば、未知の領域だった。
「みんな……」
俺はあたりを見渡す。ベルル、ロート、フローラの三人を知りたかった。
「あゆむさん、大丈夫ですか……?」
「フローラ」
目の前にはフローラの姿があった。隣にはロートを守るベルル。二人は防御の魔法を放っていた。円状に展開されている。それにより俺らはかすり傷一つなく保たれていた。
しかし、それもこの威力の魔法により亀裂が入っていた。ふとした瞬間に崩れ去りそうなほど脆くなっており、必死に展開している二人は今すぐにでも膝を付きそうなくらい疲弊していた。
パリーン……
ガラスの割れた音と共にフローラが崩れ落ちる。俺は必死に彼女を抱きかかえる。隣も同じようになりロートが受け止める。
「これでこちら側を倒そうと考えているところがあさましい」
大男はため息をし、呆れたように言い放った。この世界でも上位となるほどの力を持つフローラでさえも、まったく相手にならなかった。俺は戦いの光景を見るや身震いさえ感じる。
彼女たちは、それ以上に歯が立たない状況に対して何を思うのだろうか? 考えることはできても、想像することは容易ではなかった。
目の前に突如として現れた大男。敵であることはわかり、それがアウラウネと同じ七魔邪念神である可能性は非常に高く考えれはするが、ここまでの驚異的な力の差では、アウラウネの方も苦戦強いられていると感じざる負えない。
俺はまだ傍観者を貫くことしかできずにいた。何もないわけではない。しかし、それが戦力になるかどうかは歴然だった。言葉で相手を説得することができる。今まではそうかもしれない。だが、今はそれができそうにない。大男は俺の知らないことを知っている。だからこそ、俺よりも俺を知っているはずだ。
勝てるのか……この戦いに……
「なめるな!!」
ドドドド!!
途端にロートは大男に突っ込んでいく。素早い動きで突き進んでいく。だが、攻撃は一切当たらない。かすりもしない。それでもなお信念を曲げず、望み続けた。
ドゴッ!
「ぐはぁ……」
「この少年がしたことは、勝算されるべきことだ。それが向こう側だったから評価されないだけの話、申し訳ないが、そろそろこちらも動かなくてはいけないな。時間を無駄に費やしてしまえば怒られてしまう」
「まだ……まだだ!」
ロートはボロボロになりながらも、後ろにいる俺らを守り続けていた。大男はそれを見ては何か決心したように見えた。
「ルミナスの光はもらうぞ……」
グシャッ
「え……」
ドタ……
大男は、ロートの左腕を持ち上げ、右手に力を込めたかと思うと心臓めがけて突き刺した。力なく倒れるロートに、大男の右手に持っていたのは光の玉だった。
「これがルミナスの光だ」