108:七魔
ドガン!!
フローラの魔法が放たれる。しかし、それを当然のようにかわしていく。ロートが近くに接近し攻撃を放つも、それすら難なくかわす。すかさずベルルも応戦するも軽くかわし後退する。
俺は今の一瞬の攻防戦により思ってしまう。
「これは負け戦だ……」
そう思った矢先大男は言い放つ。
「やはり文明の利器は時代の進みと並行して、能あるものが手にしてこそ、進化を遂げる」
「何を言っている……」
「やつにより召喚された従者くんはそれを実現するために召喚された。いわば遺物だ。だが、急ぎ過ぎたようだな」
何かを知っている大男、その内容は、従者ロートでさえも知らないようなもののように思えた。
「あなたは私たちの何を知っている……」
「知っているさ。君たちの誕生も、魔女とされるものたちの誕生も。すべては、自らを正義として掲げる偽善者の繕った世界であるということも」
「何を言っているのだ……あやつは……」
「ルミナスはすべてを話さない。いや、話せないのだろう。知らないのだからな。シークレット。表には出ず、裏でこそこそ君たちを使っている腑抜けは、すべてを話さないのだからな」
何を言っているのか全く理解できない。ルミナスはすべてを話さないのではなく、話せない。それを裏から操る根本が存在する。俺は、混乱するほどの情報量に頭が痛くなる気分に襲われた。
大男はさらに続ける。攻撃をかわしながら、短く、ところどころ細かなところを切っては疑問を浮かべさせるようにして。
「悲しいとは思わないか? 自らの意味を知らず、それでも前に進めと。勝手だと思わないか?」
「ふざけるな!! 破壊をし、無理やり突っ込んできたやつの何が正義だ。勝手なのはそちらの方だろ!」
従者ロートは並々ならぬ怒りを抱き、大男への攻撃が増していく。しかし、どんなに早く、強い攻撃をしようとも、彼の前では無力に等しかった。傷一つ付けられず、かわされていく。俺は傍から見ているのみだが、気持ちが完全に理解できるとはとても言えないが、これだけは言える。
戦っているものが一番、無力を痛感させられているときほど辛いものはない。この時に限って俺自身は、自ら能力を持っていないことに対して何やら少しばかり安心感を抱いたのかもしれない。
そして、ついに大男は動き出す。
「なら見せてやろう。これがいかにして幻であるか? 光として正義として語る偽善者たちの本当の姿を見せてやろう」
「うっ……」
ロートを押し、少しの距離を開ける。大男は、それから全身に力を込め始める。
バチバチバチバチ
あたり一帯は稲妻が走る。大男を中心とした円形の稲妻が走っている。
「はっ!!」
ドガアアアン!!
掛け声とともに円形に保っていた稲妻は爆風のようにしあたり一帯に吹き飛んできた。俺はすかさず目をつむり防御をしていた。稲妻と共に流れてくる音は爆音のみ、何が起きたのかは一瞬にして理解できた。
音が止み、目を開けるとそこにあったのは……
「これは……」
「この程度の力で落ちるほど、ルミナスの魔法は弱いのかな?」