第百六話 出現4
敵はこの城の情報を知っているのかと思えるほどにわんさか湧いてくる。怠惰の魔女ベルルとその従者ロートはそれを返り討ちにしつつ安全圏へと進めていく。
走っていくうちに俺はフローラに疑問を投げかける。
「どうして俺を狙っているのか、わからないんだが……」
「……」
フローラは何も言わず、手を強く握るだけだった。それは、答えがわからないという感情表現なのかもしれない。今までは居場所を作りそれに沿って進めていた。だが、今回はそれを崩壊させようとしてくる。
七魔邪念神は一体何を考え、どうしてこの世界を狙っているのか、それがいまだにわからない。
崩壊させるほどの欲しいものなのか? はたまた、崩壊させてから理想郷を作ろうとしているのか? 詳細が何一つわからない。事象問題は、俺が思う以上に恐ろしいところまで進んでいた。
ここまでの旅を得ておかしな部分は色々と見て来た。地割れが起きているところも見て来た。しかし、それをうえに超えているクラスのものが各地で起こり始めている。そして、アウラウネは俺に何かがあると指さした。一番疑問に思ったのは、俺の名前だ。
アイズ。これは果たして名前なのか? また違った何かなのか? 考えれば考えるほど答えが遠くなっていくそんな感覚に陥る。今回に関しては、自分自身では到底たどり着けない問題に差し掛かっているのだと、おのずと理解する。
それらを踏まえて、すべてを知っていきたい。そう願うばかり。
走り進めていくうちに、完全に人気のない場所まで来た。とても薄暗い場所であり、地面はコンクリートでできているのか非常に寒気がする。
「ここは、万が一のために作った場所、外の音は聞こえるが、こちらの音は聞こえない」
ベルルはそう話す。非常に強固に出来ており、魔女と従者くらいしかその場所を知らないという。ひとまずそこに身を隠すことにした。
ワンルームくらいの大きさだ。息をひそめつつも外の音を聞く。
ドガン! ボガン!!
所々で、戦いが起きている。ここにいる全魔女が総出でアウラウネと死闘を繰り広げている。そう感じる。みな、俺のためにも、世界のためにも必死に守ってくれている。
俺はため息をし、過去に何度も振るわせてきた自身の力のなさに落ちそうになる。
しかし、それを両手で握りしめ、こちらに何一つ表情変えず見てくるフローラの姿があった。
何も発することはせず、ただ俺の手を両手でつかみ胸元に置きつつ、目をつむり安心させるかのようにしてくれた。
それを見るなり、感じるなり、俺は一人である事実はなくなったのだと自ら反省するのだった。
ドガアアアン!!
そんな幸せな時間は長くは続かない。相手はこちらの居場所を知っているかのように壁を壊し、外の光をスポットライトのようにして放射する。
そこには一人の長身の羽織りを着た男性の姿があり、低い声でいった。
「見つけましたよ。アイズ」