第百五話 出現3
「王はまだ居眠り中ね。私はここに来たのは他でもないわ。アイズ、夢乃あゆむの抹殺です」
唐突に繰り出される言葉に俺は何も言うことができない。それは今までよりも凶悪さがにじみ出ており、脳が反抗する力を拒否しているかのようだった。
他はそうでもなく、それを聞くや否や戦闘態勢に入るものまでいた。
「本体はまだ眠っているはず。焦っているのですね」
ルミナスは言う。それを聞きアウラウネ自身もまんざらではないようなそぶりで話した。
「そうですわね。あのお方はお寝坊さんです。計画的にはすんなり小娘どもが仲違いして死んでいくと思っていました。しかし、そこのものが解消してしまった。残念ですわ。あと少しでしたのに。さすがにこれ以上は危険とみなし。私と……」
ドガアアアン!!
「緊急事態発生! 緊急事態発生!!」
突然会議室が揺れ動くほどの大きな地震に見舞われる。アウラウネ自身は何かを考えていた様子で、にこやかに対応していた。
「私以外にももう一人七魔はこの場所に来ましてね。さすがに一人では酷ですし。勢いできましたわ」
「もしや、最初からこれを仕込んで!!」
テーブルを叩き、椅子から立ち上がった。ラスティは相手の策にはまったことで失われる人々に対しての怒りが込み上げていた。
それは他の者たちも同意見であり、一触即発の状態に切り替わっていた。しかし、アウラウネ自身はそれに焦ることもなく、俺の方を見るなり告げる。
「抹殺開始です」
笑顔で言うそれは、死刑宣告といわれるほどの恐怖さが込み上げた。アウラウネはこちらに魔法陣を展開し一瞬で仕留めようとした矢先。
ドガアアアン!!
それを相殺するかのように大きな魔法が放たれる。一気に会議室は煙が充満し目の前が見えなくなる。俺は何者かに手を掴まれ、会議室から抜け出す。
「フローラ! 助かった」
「死なせません。絶対に!!」
フローラの必死さを見るなり、俺は自分を奮い立たせる。何ができることかはわからないが、とにかく死を回避することに重きを置いた。
必死に走り、出口を探す。エレベーターが目の前にやってきた瞬間。
バリン!!
それを阻むかのようにして、エレベーターからは何やら異形のものが現れ、ともに壊した。
「なんだよ。あれ」
頭のない上半身だけが屈強な鎧に満ちた二体のそれはこちらを察知し駆け寄ってくる。フローラの攻撃魔法にはびくともせずやってくる。
「こっちだ!! 二人とも!!」
そう言われ見た先にいたのは、怠惰の魔女ベルルと従者ロートだった。この城の道を一番知っている者たちだ。俺とフローラは一目散にそちらに駆け寄る。同じくして、異形の鎧は、大きな鉈を持ちつつゆっくりと襲い掛かってくる。
「おらー!!」
後ろから大きな声とともに蹴りが異形の鎧めがけて突っ込んできた。態勢を崩したそれは二体はゆっくりと立ち上がる。
声の方を見るとそこには、ルークとスーの姿。こちらを見るなり。
「これ以上先へは進ませない」
「いけ! 何かしら見つけろ! 俺らがサポートする」
その背中は、敵同士だった影はすっかり消えており、ともに共闘する姿が見えた。
最後に聞こえたのがスーがルークに対しての言葉。
「足手まといになるなよ」