第百四話 出現2
「この場に存在しない魔女もいますが、現状をお話しましょう」
光の使者、ルミナスは語る。
世界各地での異常気象や災害は事実として挙げられた。俺はその数の多さに驚きを隠せないでいた。火山噴火も連日のように起こり、住まう場所さえもなくされている状態の村や町が数多く出没している。
地割れが起き、大寒波も巻き起こった。これが只事ではなく、他人事のように扱うことは一切しなかった。いつしか、それらがこちらに攻めてくることも確信していた。
それらの情報を聞いていた魔女たちの反応は頷くそぶりもなく、ただ静かにその話に無言の共感をしているようにも見えた。俺が知らない彼女たちが知る世界の事情。
俺が考えているよりも、事象のスピードはけたたましく速く恐ろしいものであると実感する。魔女たちは、自らの国や周辺で起きていることに関しても織り交ぜつつ話していく。
ルミナスは、それらを聞くなり、これから起きうることを予測しだす。
「我らは彼夢乃あゆむの力により、いよいよ二名以外が手を組み合わせることができた。これは彼に感謝する。選択をしてよかった。ありがとう」
周りも一礼する。俺は恥ずかしさを感じながらも謙遜する。
「俺だけの力ではなく、様々なことが運よく積み重なっただけかと思う」
「謙遜しすぎだ。ばーか」
「え……」
スーは俺の話を遮りつつバカにしたようにいう。それに倣いルークも。
「魔法がある。力がある。これを用いても、ここまで合わせられるものでもない。これは夢乃あゆむの影響が強い。少なからずラスティ様含めて考えている」
周りは頷く、さすがに褒めすぎ注意と思いはしたが、光の使者は首を横に振り、俺が考えていることを否定するかのような態度にでた。
「今まで見ていました。一連の流れが終わり次第。詳細をお話いたします。何も伝えられず申し訳ございません」
「ああ……助かる」
なぜか力がなくなり椅子にもたれる。今までやってきたことが賞賛されることなんてあったのだろうか? 正解が分からない。ただそれにもがき苦しんだ。それでも正攻法を模索し突破してきた。それが今輝いている。だからこそ、周りも温かい目で見守っているのだと感じた瞬間だった。
パチパチパチパチ
一人大きな拍手をするものが現れた。俺はそれに対して心を奪われそうになった矢先。
それは奇妙なことを言い放つ。
「素晴らしいわ。仲間って素晴らしい。本当に素晴らしい。同時に、ルミちゃん? 仲間外れはいけないのよ。二人ではなく、一人じゃなくて?」
「邪念体は思考を読み取る。だからこそ、下手に話さない。だが、それももうよいのかもしれませんね」
一瞬にして雲行きが怪しくなる。拍手をした本人はまぎれもなく、放漫の魔女ルーシィだった。しかし、何かがおかしいと感じた。雰囲気ともに、口調、声のトーンでさえも、なまめかしいと感じる。そして……
「あなたは私のものアイズ……」
俺は咄嗟のことで動けうにいた。それは首あたりに腕を回し、耳元で囁くように発した。何を言っているのかさっぱりだ。
「発火!!」
ドガアアアン!!
大きな爆発音とともに放たれた魔法はルーシィのいるであろう場所めがけていた。煙の奥からは不敵な笑みを浮かべながら、それは現れた。
「さすがに威力は抑えたのね。ただね。お嬢ちゃん? そんな浅い魔法で私に勝とうだなんて浅ましいにもほどがあることを知りなさい」
「アウラウネ。すでに来ていたか……」
光の使者ルミナスは言う。煙から現れたそれは、黒く長いドレスに両肩から胸元は、編み目所。
黒い髪は後ろで止めており、赤い瞳に唇が、その禍々しさを醸し出していた。
「私は、七魔邪念神の一人”アウラウネ”以後お見知りおきを」