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2.新しい暮らしを始めよう

漸く3回目の投稿です。

聊か退屈かもしれませんが、まだまだ暫く導入が続きます。

暫くして少し正気に戻り、

置き去りにされた事を認識してまた呆然とし、

更に時を置いて漸く正気に戻った。

…と言うか状況を無理やり飲み込んで、今日から住む家の見分を開始した。


設備等を細かく確認していくと、訓練施設で使い方を訓練したもの、或いはその系統のものがかなり見受けられた。

成程、確かにこの環境で暮らすのなら、この手のものが使える様になっている必要があるはずだと納得する。

多分、電気は通じて無いだろうし、テレビやラジオなんて夢のまた夢なんだろう。

そもそも地球の電波なんてものは飛んるはずも無いし…


そんな事を考えてながら、家の中のチェックを更に進めて行くと、一か所だけ、一見他の設備と同じ様に見えて、全く異質な、高度な文明の香りのする施設を発見した。

通信用PCが設置されていると思われる矢鱈とセキュリティーのしっかりした小部屋、通信室を書斎の奥に発見したのだ。


研修中、通信用PCの取り扱いに関しては、特にセキュリティーの確保の重要性については耳にタコが出来るほどしつこく聞かされ、習慣付けられていた。

曰く、操作する為には、セキュリティーが確保された部屋の用意が必須である。

曰く、PCは、他者の手が届かない環境に保管しなければならなない、

曰く、PCの操作は余人が介入する余地の無い状況下で行われなければならない。

等々…。


また、PC自体に施されているガードを解除して、正常に起動するのにも、幾重もの手順を踏む必要がある。

その事に関して研修中に散々文句を言ったものだが、セキュリティー上の問題でそうなっていると言う通り一辺倒の回答で一切クレームは受け付けて貰えなかった。

この場に臨んで、その意味がようやく飲み込めた様な気がした。


後でチャットを通して上司にねじ込んでやろう、と、取りあえず通信屋をスルーしようとして、ふと、さっき考えていた事が頭の中を掠めて行った。


そう。

テレビやラジオなんか用のものを含め、電波が飛んでいなさそうな環境…

まぁ、まかり間違って飛んでいたとしても、それは自然に発生するノイズの様なものだろうし、

当然、電波を中継してくれる施設など期待できない様な環境だ。

とても俺の知っている地球に到達するとも思えない。


石油やガスなどの天然資源は兎も角として、

適正に制御された電気などは繋がってすらいないだろう。

そんな環境で、PCを継続的に使用して、

あちらの上司とまともに連絡を取り合う事が出来るのだろうか…?


背中に嫌な汗が流れるのを感じながら、

通信室の扉に飛びつき、解錠操作を行う。

部屋の中に飛び込んで、

部屋の中に設置されている連絡用のPCを探しだす。

起動操作をして、

システムを起動し、

パスを通して、

PCの起動を待つ。


研修中にはどうとも思わなかったわずかばかりの起動待ち時間がやけに長く感じる。


その、わずかばかりの起動を待つ事しばし…

無事に起動したPCの中から専用のコミュニケーションツール選び、

起動すると、


「ピロリロリ~ン♪」


と言う妙に癇に障る電子音がして、

自動的に一通のメールを受信した。

送信者は…

上司のサフキル氏の様である。


慌てて開封すると、

 『このメールを受信した、と言う事は、

  少しは冷静になって、多少は頭が働く様になってきたと言う事だと思う。


  色々と言いたい事、聞きたい事もあるだろうが…

  取り敢えず、聞きたいであろういくつかの事について、先に答えておこう。


  先ず一つ目だが、心配は無用だ。

  そちら側とこちら側のコミュニケーションは、これ(PC)を利用する事で確立されている。

  実際、このメールのタイムスタンプを確認してもらえば、理解してもらえると思うが、

  このメールは、君をそちらに送った後、私がこちら側に戻ってから送信している。


  これが読めると言う事は、こちらとそちらとの間で通信が可能な状況にあり、

  少なくとも、こちら側からそちら側にメールと言う形で何らかの意思表示をする事が出来る、

  と言う状況にある、と言う事を証明している。

 

  とは言え、君の状況、特に心理的な状況については、ある程度想像出来る。

  こちら側と違い、そちらには、差せばPCを充電できるような便利な電源コンセントの類は無い。

  また、当然の事ながら、既にPCに貯留されているエネルギーが無くなれば、

  PCは使用出来なくなる。


  しかし、心配する必要は無い。

  一般的な意味でのコンセントは無くとも、PCにエネルギーをチャージする事自体は可能だ。


  PCの隣に赤いフレームのACアダプター様のパーツがあると思うので、手に取ってくれ。

  片側からPCに接続する為のプラグ付きコードが伸びているはずだ。

  そう、ACアダプターで言う所のDCプラグ様の部分だ。


  それをPCの電源ジャックに接続したら、

  反対側から出ているコードの先にある血圧測定用のカフ(腕に巻き付ける装着具)様の器具を

  君の腕に直接巻き付けてくれ。

  巻き付ける際にはくれぐれもシャツや肌着等を介さず、直接肌に触れる様にする様に気を付ける事。

  但し、極端にきつく巻き付ける必要は無い。

  巻き付けた状態でずり落ちない程度に適度な締め付け状態になっていれば十分だ。


  そうすると、PCの電源インジケータがチャージ中を示すものに変化した事がわかると思う。

  この電源アダプターは、使用者の体から普段自然に放出しているある種のエネルギーを抽出して、

  PCの作動に必要なエネルギーに変換し、PCに供給する機能を有している。

  君が元気な状態であれば、使用するのに十分なエネルギーをPCに供給する事が出来る。

  また、これを使用することで君が過剰に疲れたり、消耗すたりすると言う事も無い。

  これらの事実は、君がこちらで行った研修中に確認済みだ。


  次に、君にそちら側での生活にスムーズに慣れてもらう為に現地人の協力者を用意した。

  近日中にあちら側からコンタクトがあるはずだ。

  向こうには、君の名前とこちら(ネイヴァ)のエージェント(使い)である旨は伝えてある。

  また、向こうは、エタス教会の使いであると名乗るはずだ。


  彼らはこちらの事情もある程度は承知している。

  とは言え、原則、彼らは協力者であって、部外者である事には変わりない。

  彼らをむやみに警戒する必要はないが相応の留意は必要となるだろう。

  また、そちらにおける我々の立場や君の立ち位置に関しては、

  PC内に詳細資料の形でまとめておいた。

  後程確認し暗記しておく様に。


  この辺の対応については、研修時のロールプレイで十分やったはずだ。

  基本、ロールプレイのタイプC、バリエーション2辺りをイメージしてもらえば十分だろう。


  なお、当然の故地ながら、この部屋への出入りは君以外禁止。

  PCの持ち出しも厳禁だ。

 

  次に…

   ・

   ・

   ・

   ・

   ・


  こちらからの連絡は以上となり。

  今後の活躍を期待する。』






くそ、確信犯かよ!

完全にこちらの動きを読み切った対応に、驚くやら、呆れるやら…。

赴任前の打ち合わせでは、任地に到着し、ひと落ち着きした所で第一報を入れる約束になっていた。

ならば、新居の見分も終わらず、まともに落ち着きもしていない今は、未だそのタイミングではない、と考えるべきなんだろう…


≪何時か機会を見て必ず仕返ししてやる!≫


そう密かに心に誓って、新居の見分を再開する事にした。


その後、見分の結果は予想通り、今の自分のスキルなら十分に生活していけるとの判断に至った。

家の間取りや構造、家具、カトラリー類は自分が知っているもの、若しくはそのバリエーションで済む程度の違いしか無かったし、食料品の類も当面暮らすには十分なストックが用意されていた。

もっとも、食品については、ここが地球では無い以上、一見、ニンジンやナスの様に見える食材の味については、全く未知数な訳だが…

まぁ、研修で作らされた料理の味に、そんなに妙なものはなかったので、さほど心配する必要は無いのだろう。


住まいに関するチェックも概ね終了したので、通信室に戻って詳細資料を確認する事にした。

研修ではこんな所に飛ばされるなんて話はなかったし…

もっとも、勤務地が地球上では無いなんていう記載も一切無かった訳で…

まぁ、あったとしても、当時の自分がそれを信じるとも思えない訳だが…


…思い返せば、敢えてその辺を分かり難くする為にも、あんな妙なVRシステムを構築したんだろう。

詳細情報レベルでどの程度のフォローが期待出来るのかはさておき、今後邂逅する協力者と会う時の為にもこの辺の確認は必須となる。

実際、ざっと資料に目を通して、自分の立場と言うか立ち位置を認識して頭を抱える羽目になった。


ちょっと待て!


確かに、契約通りの現地駐在の連絡員だが!

それはそれとして、現地駐在って、そう言う意味…?!


チッ、チッチッ、チッチッチ、…


…色々と簡単に飲み込むことの出来ないあれやここれや(追加情報)に頭を抱えていると、聞き覚えのある鳥の鳴き声様の音が聞こえて来た。

この音は確か…

セキュリティ(防犯システム)からの警報音だったはずだ。

現時点でPCのそんな部分をカスタマイズをする余裕などあるわけ無いので、デフォルト設定のままだとすれば、この音は、何者かが敷地内に立ち入って来た事を意味するはずだ。


急いでPCをセキュリティモードに切り替え、モニターを確認すると、

現地人が2人ほど、入り口を通って、玄関方向に向かって歩いて来ている。


聊か早すぎる様な気がしなくもないが、上司の言っていた協力者達だろうか。

それとも、不法侵入者か?


急いでPCをシャットダウンし、通信室の扉を閉め、書斎に戻ると、それを待っていたかの様に、玄関の呼子が叩かれた。

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