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1.再就職先は…

少し時間が開いてしまいましたが、2回目の投稿になります。

今後は可能な限り週に1回~2回位の頻度で投稿していく予定です。

《 お手すきの時間にモニターとして、報告をしていただくだけの簡単なお仕事です。 》


事の始まりは、暇つぶしのネットサーフィン中に立ち寄ったweb上で、ふと目に留まったこんなバナー広告だった。


その時俺は、大学卒業後数年間勤めた会社を辞め、次の職を探そうか、何かの職業訓練を受けて新しい技術でも身につけようか、等と将来に向けて思案を巡らせているところだった。

将来に特別な展望を持っていなかった俺は、社のリストラ候補に挙がっていた訳でも無かった様だったが、会社が結構な好条件を提示して早期退職者を募ったタイミングで、手を挙げて会社を辞める事にした。

まぁ、幾ら好条件とは言え、大して良い業績を上げていた訳では無く、かと言って、大きなペナルティーを課せられる程のミスをした訳でもない、程ほどの業績を上げながら数年勤めた程度の社員に、そんなに大した額の退職金が支払われる訳も無い。

一応会社都合での退職扱いになるので、職安に定期的に通う事さえ厭わなければ、退職直後からそこそこの額の失業保険の給付が受けられるので、生活に困らないと言う意味では美味しいと言えばおいしかった訳だが、かと言って、左団扇の生活が送れるほど十分なものが貰えると言う程でもない。

少しの間だけ充電と言う名目で骨休めをして、そろそろ将来の事を真剣に模索しようとしていた矢先の事であり、多少の好奇心もあって、バナーをクリックしてしまった。


ジャンプ先に掲載されていた求人内容は、赴任先などの具体的な内容こそ伏せられていたが、要は、社が指定した先(かなりの僻地らしい)に赴任し、そこの社会に溶け込み暮らしながら、その暮らしぶり、起こったトピック等をリポートする事で、普段の暮らしで得られる収入とは別に社からの報酬も得られ、有用な情報の提供や任期満了時にかなりのボーナスが得られる、というものだった。


偶にニュースで、ジャングルの中で発見された未知の生物・植物を解析した結果、〇〇に有効な新薬が開発された、等と言う話を聞くが、未開地故にそこで使用されている機材、食品等に未知のものが含まれており、それらの情報を現地密着型の駐在者からの報告を通して確認し、新しい商品開発などに役立てる、と言うコンセプトの様だった。


任務完了までどうしたって年単位の時間が必要になる、即ち拘束期間がかなり長くなる事が想定される事や、赴地が事前の馴致訓練が必要な程僻地であろう事、現地での生活が嫌になったからと言って容易に戻って来る事が出来ない事等、デメリットも多かったが、それを考慮しても十分な好条件が、主に報酬レベルで約束される様であり、また、赴地で生活するのに必要となる技術の習得等に関しても、事前に十分なレベルで訓練を行ってもらえると言う。


任務が終了すればかなり高額な報酬を手にする事が出来る上に、恐らくはサバイバル術的なものを含む何某かの技術が身に付く、と言う事で、取り敢えず冷やかし半分応募してみる事にした。


数日後、書類選考に通ったらしく、2次選考(面接)に参加する意思があるか否かの確認のメールが送られてきたので、参加を申込んだ。


指定された日時に指定された会場を訪れると、既に参加者と思われる人達が集まって、選考の開始を持っていた。

俺より後から来た人達を合わせると20人程だろうか…

この不景気の中、あれだけの好条件?に案外応募者数が少なかったと見るべきなのか…

それとも、僻地への赴任と言う事で応募者数が案外少なかったのか…

はたまた、1次選考がよほど厳しかったのか…

(まぁ、俺が通ったんだからそんな事無いか…)

そんな事を考えつつ待合室で佇んでいると、開始予定の少し前に予定者が揃った様で、選考が始まった。


選考は個別面談方式で行われるとの事で、一人ずつ呼ばれて行くとの事だが、その前にかなりしっかりした健康診断が行われたのは、やはり赴任先がかなりの僻地だからなのだろう。

この規模の採用試験としてはかなりの費用と時間をかけるものだった。


恐らくはその間、暇が潰せる様にと言う配慮だろう…、

或いは、赴任先についての理解をある程度深める為、

…いや、覚悟を決めさせる為だろうか、

待合室の中には、一見して僻地(赴任先)の光景と思われるいくつものパネルが展示され、簡単な解説が付け加えられていた。

それらを暇つぶしで、見るとは無しに見つつ待っていると、漸く俺の順番になった様だ。


かつて勉強した面接マナーなどを思い出しつつ、

ドアをノックして

「失礼します。」

と挨拶して、部屋に入る。

数名の面接官と向き合う形で椅子が置かれているので、

椅子の横に立って軽くお辞儀をし、

許されて椅子に座る。

志望理由や経歴・特技などを問われ…

気が付けば面接は終了し、

その場で採用の告知が行われた。


ずいぶん即断即決だなぁ、

等と思いつつ別室に移動し、

今後の予定等に関する説明を伺いつつ、

正式にエージェントとしての契約を交わした。


その後、任地赴任までの日々は、かなりの駆け足で流れて行く事になった。

先ず、それまで住んでいたアパートを引き払い、

訓練所兼、赴任までの当面の生活施設に入所した。


新しい環境に落ち着く間もなく、赴任の為の馴致訓練が開始される。


何はともあれ、先ず始めにと、面接時より更に詳細な健康診断と適正検査を受けた。

どうもこの結果に合わせて俺の任地が決定された様だ。


任地決定後、それ合わせた馴致訓練プログラムが設定され、訓練が開始した訳だが…

どうも俺の任地はやはりと言うか、予定されていた中でも特に田舎なエリアになった様で、馴致訓練は技能習得訓練というよりは、原始生活訓練・サバイバル訓練の様相を呈したものだった。

また、任地に合わせた体調や体質の調整も食事を通して行われた様だった。

(なれない地で生水飲むと腹壊すって言うしなぁ)


これらの訓練は、VR(virtual reality)システムの時間圧縮プロセスを多用して行われる事になった。

このVRシステムは近年開発されたエレクロトロニクスと脳医学・神経医学の研究成果の集大成とも呼ばれるべきもので、特殊なヘルメットに内蔵された特殊な電磁波の送受信装置が人の脳と直接情報のやり取りを行い、付属の情報処理装置がその処理を行う事で、五感・神経による情報伝達のロスを大きく低減させる事が出来る様になる。

その結果として、1日で何日分にも匹敵する教育を効率的に受ける事ができる様になるのではと期待されたのだが、人の脳はそんなに大量の情報を一挙にかつ長時間処理出来る様には出来ていない様で、何度か事故等もあり、今では余裕を持たせて1回の利用は最長で2時間程度、一日のトータルで6時間までとすると言う形にガイドラインが設けられている。

もっとも、この許容時間は個人差が大きい事もわかっており、適切な検査を行う事で安全マージンを持たせた使用可能時間の設定が可能である。

当然、精密検査の際にその種のデータもしっかり採られており、その結果、時間の許す限りがっつり訓練を受けるはめになり、かなりと言うか、とんでもない量の知識や疑似経験を詰め込まれる事になった。


どういう訳かこの研修用VRシステムに、人の頭程もある羽虫様の人型飛翔体や、明らかにケモナー系のコスプレをした人物など、色々と変なものが表示される事があって、システム管理者に問題(バグ?)の報告をすると、『問題無い、慣れろ。』、とのお返事を賜る事があった。


システムビルダーが余程の趣味人なのか…、釈然としないものを抱えつつ訓練を進めて行った訳だが…

まさか、そんなモノがリアルに存在する世界に赴任する事になろうとは、当時は思いもしなかったよ。


時は流れ、馴致訓練ならびに体質調整が概ね終了し、正式に赴任日が決まった。

現地には原則、私物こちらのものは持ち込め無いとの事で、任期満了までが長い事が想定される事もあって、家具や電化製品などの大きな私物は全て処分した。

思い入れのある手放し難い私物は会社が責任をもって預かってくれるとの事なので、預ける事にして、会社からの支給品のみを持っての出発となった。

因みに、ドレスコード?も厳格で、流石に手織りのものは無かったが、全部天然素材が使用されていて、化繊製品は見当たらなかった。


出発当日、研修所からの移動用に用意してもらった車に乗せてもらって、

上司との最終ブリーフィングを行いつつ、移動を始めた。


やがて、着いた先で車から降おろされ、

周囲を見回すと、そこには…

日本では、

いや、

地球上ではあり得ない、

ファンタジーでヒロイックな世界が広がっていた。

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