0.プロローグ
ファンタジー小説が書きたい。
ただそれだけで、書き始めた小説です。
現時点で着地点すら明確に決まってないものですが、よろしければご一読いただき、感想などお寄せいただければ幸いです。
赴任先として連れて行かれた先には、俺の知っている地球と違ったファンタジーな世界が展開されていた。
町行く人々の中には、ケモミミやケモシッポが自生しているらしい方々いるし、一見普通のヒトの様に見える人達の中にも、妙にファンキーな色合いの髪や目を持っている人達が混ざっている。
(…あの深緑色の髪は、光合成でもするのだろうか?)
また、如何にもやばそうな武装をした面々が町中を堂々と闊歩してらっしゃるが、それを気にしている様な素振りの人はほとんど見あたらない。
そこまでなら未だ、上司のきついシャレで、何処かの大規模なコスプレ会場にでも連れていかれたのかと無理矢理思い込む事も出来なくもないのだが…
とどめを刺すかの様に、自前の羽根?で空中を行き来してらっしゃる手のひらサイズのミチッコ(どう見ても人型で昆虫の様には見えない)が覗えるに至って…
俺は、自分が地球以外の何処かに連れてこられたのだと判断せざるをえなかった。
茫然とこの光景に見入っている俺に、上司のサフキル氏が何やら話しかけてきている様だ。
どうやら、これから俺が暮らす事になる家に案内すると言っている様だ。
彼に促されるままに、だが視線や思考は小妖精さんやケモミミさん達にロックオンしたまま、彼に付いて家の門をくぐって行く。
もっとも、彼が何を話しているのか、殆ど頭に入ってこない状態な訳だが…
どれ程の間呆然としていたのだろうか…、
ふっと我に返った俺が辺りを見回した時には、既に上司の姿はどこにも見当たらなくなっていた。
暫くの間あたりを見回し、完全に置き去りにされたのだと言う事を理解した俺は、先程までとは違う意味で茫然とし、そしてもう、後戻りはできないのだと言う事を理解したのだった。
確かに、社からは赴任先はかなり辺鄙なところで、今までの様に文明の利器に頼った便利な暮らしは期待できないと聞かされていたし、その為の馴致訓練も十分に行ってもらった。
任期は未定で相当な長期に亘る可能性が高い旨も聞かされていた。
更に、研修に際して、出発に際して、何度も「赴任してしまえば基本的に、任期満了以外の理由で『元の世界』に戻る事は出来ない」、とはっきり言われていた。
ただし、上司との連絡は専用のPCを使う事で確保できており、レポートを送る事の他に、こちらからの要望なども、可能な範囲での対応をしてもらえると聞いていた。
更に、タイミングさえ合えばPCのボイスチャット機能を使う事で、直接会話が出来るとも聞いていた。
もっとも、基本的にこれ以外の方法で上司や社と連絡を取る術は無く、また、家族や友人とも音信不通にならざるを得ないとも聞いてはいたのだ。
これらを全て了解するだけの条件が提示されたからこそ、俺は今ここにいる訳だが…
「基本的に『任期満了』以外の理由で『元の世界』に戻る事は出来ない」か…
社側は此処に来るまでの間、何度も俺の意思確認を行って、何時でも引き返せる機会を与えてくれていた。
その度に俺は迂闊にも、『余程の僻地が赴任先なんだろうなぁ 』、などと勝手な思い込みで赴任に同意していた訳だ。
まぁ、まさか、本当に「世界(次元)」が違うとは、夢にも思わない訳だが…
そんな風に自らの思いに耽り、更に時間を費やして、心の中で色々と踏ん切りが着いた所で、これから何年か暮す事になるのであろう住処に向けての第一歩を踏み出すのだった。