第91話 「魔法省堕つ」
裏設定
呪文編
呪文には実は決め方があります。
例えば時間魔法、この魔法の呪文は『トー・クロウ・ルシフ』ですが、以下が由来になっています。↓
トー→時の“と”
クロウ→ギリシア神話の時の神“クロノス”
ルシフ→ルシファー
と、魔法に関連する3つの単語をもじって並べています。
『に、人間じゃない……』
『く、来るなあ!!』
『通報があった! 貴様らだな! 撃てえ!!』
『待ってください、私達は――きゃあ!!』
『きり――ぐはあっ!!』
『やめろおお!! クソ……よくもおおお!!』
『ダメよ……ルシファー……!』
『なぜじゃ、なぜこんな奴らを庇う!?』
『私達は……命を奪うためにここに来たんじゃない……あなたの力も……誰か……の……ために……』
「ああ!!」
目を覚ましたルシファーは息が荒く、汗だくになっている。
ふと時計に目をやるとまだ朝の5時過ぎだった。
横のベッドの明日夢は寝ている。
「夢か……しかしなぜ今になって……」
思い出したくない過去だった、長い悪魔の生涯においてこれほどの経験は中々ない。
なぜこんな夢を見るのだろう。
いくら考えても答えはでなかった。
「何かの前兆なのか……?」
未だに心臓の鼓動が高まっていく。
汗をタオルで拭き、もう一度眠りに付いた。
(切乃、これで良かったのじゃろうか? 今でもそう後悔することがある……)
◇
グレゴリーが総一郎に倒されてから僅か1時間程度のこと。
魔法省のエージェント達がいきなり反旗を翻し、他のエージェント達を殺害していった。
魔法省にも組織の手が伸びていたのだ。
「ファム・ファイン・フレイア!!」
「ぐああ!!」
炎の渦が通路を駆け巡る。
組織のメンバーは一気に倒れた。
「はあ……はあ……」
魔法の連続使用と混乱でアイラの疲労はピークに達していた。
呼吸を整えようとするが中々落ち着かない。
「組織に寝返った者達がいたなんて……!」
<しかもこの数、10人100人なんてもんじゃないぞ>
敵がひと段落したため、壁に寄り掛かる。
なんとか残ったメンバーへ連絡を取るが、他も混乱の最中である。当然コンタクトは不可能であった。
「このタイミングになって動き出したということは……お爺ちゃんは……」
<アイラ……>
考えたくないことだったが、現実を受け入れざるお得なかった。
グレゴリーは負けたのだと。
今にも泣きだしそうな気持ちだった。悲しくて仕方なかった。
そんなアイラを奮い立たせているのは、最後に交わした言葉である。
『今後、魔法省はお前が引き継げ』
「お爺ちゃんが負けたのなら……私がしっかりしないと!」
<アイラ、お前……>
イフリートは理解していた。
アイラは一番辛いのだと。
本当は戦える精神状態ではないと。
それでも自らを奮い立たせ戦うのならば、契約悪魔である自分も共に戦おう、そう誓っていた。
「アイラ!」
「副長官!」
通路の向こうからこちらに走ってくるのは魔法省副長官、モリガン・ル・フェイだ。
「ご無事でしたか!」
「ええ、でもこれは一体……?」
「恐らく長官が……」
アイラは後方を向き敵が来ないか確認する。
ここでポケットの中に何かが入っていることに気付く。
(ん?)
中に入っていたのはメモであった。
微かに残っている記憶を辿るとあの時、グレゴリーが入れたものだということを思い出した。
四つ折りのメモを開く。
(一体何を――)
<アイラ!!>
「がふっ……!」
メモを開く寸前、アイラは口から吐血した。
理由は1つ、背中に鋭利な刃物が突き刺さったためだ。
「な、なにが……」
手からメモが落ち、アイラもその場に倒れる。
倒れると同時に、メモの中身が目に入る。
そこに書かれた文字に目を疑うのだった。
『Morrigan is traitor (モリガンは裏切り者だ)』
「副長官……?」
這いつくばりながらモリガンの方を向く。
そこにいたのは崇高な造りの剣を手にしたモリガンであった。
その剣は血に塗れている。
「うちのご先祖様ったら、随分手癖が悪いみたいでね~。弟のアーサー王からこれを盗んでいたみたい」
アイラは血を吐きながらモリガンの話を聞く。
「誰でも名前くらいなら知ってるんじゃないかしら? 伝説にその名を残す、アーサー王の聖剣――」
「アーサー王の聖剣……まさか!?」
モリガンはニヤリとした笑みを浮かべる。
「聖剣、エクスカリバー」
イギリス人であるアイラがその名を知らないはずがない。
伝説の英雄、アーサー王が使っていた聖剣が目の前にあるのだ。
「悪いけどアイラ、あなたもここまでよ。すぐに長官の後を追わせてあげるわ」
「モリガン……貴様……貴様ああ……!!」
アイラはもう戦う力が残っていなかった。
「さようなら、アイラ」
<アイラ!>
アイラは反撃する気力もない、ただ歯を噛みしめることしかできなかった。
「クソ!」
とどめを刺す寸前、イフリートが悪魔の姿へ戻る。
「ファム・ファイン・フレイア!!」
すぐさまイフリートの指先から炎が出される。
強大な炎はモリガンの視界を封じた。
「ちいっ」
エクスカリバーで炎を切る。
炎がなくなるが、アイラとイフリートはいなくなっていた。
「逃げたか。ふん、まあいいわ」
モリガンはその場を後にする。
◇
「あなた達に話さなければならないことがあるの」
突如呼び出されたとある隠れ家、そこには大怪我を負ったアイラさんと動くこともできないイフリートがいた。
その光景に俺達は皆言葉を失った。
しかし本当に驚愕するのはこの後だったんだ。
「組織のボスが明らかになったの。信じてもらえるか分からないけど……あなたのお祖父さんよ」
「え……」
その話を聞いた時の藤導の顔を忘れることはないだろう。
閲覧ありがとうございます。
なんと魔法省に裏切り者が大量に潜入していたことが明らかに。
なんとモリガンまでもが裏切り者でした。
エクスカリバーをアーサー王の姉にしてモリガンの先祖であるモーガン・ル・フェイが盗んだ、という設定ですが実際のアーサー王物語では鞘のみを盗むという話があります。
次回、ついに真実を知ってしまった6人は藤導邸へ。果たして何が起きるのか?
感想、評価、レビュー、ブクマ大歓迎です。
次回もよろしくお願いしますm(__)m




