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契約悪魔と魔法使い  作者: 高橋響
第一章「魔法使い編」
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第6話 「魔法省」

キャラクタープロフィール5


茅ヶ崎シャーロット愛梨あいり

・誕生日:1月9日

・好きなもの:クッキー、紅茶、花

・嫌いなもの:ジャンクフード、自然破壊

・趣味:園芸、ショッピング

・特級魔法:風魔法(風を自由自在に操ることができる)

・契約悪魔:ヴィネ

・日本人とイギリス人の間に産まれたハーフで金髪碧眼が特徴。

 病気にかかった両親の治療費や入院費を払うためにヴィネと契約した。

 銀行襲撃事件の犯人ではあるが一切盗みもできず怪我人も出さなかったということにも表れているように本来は両親思いの心優しい少女。

 自分に魔法を与え支えになってくれたヴィネのことは誰よりも大切に思っている。

 幼少時はイギリスで暮らしていたため今でもよく夕方には紅茶を飲む。

「レ・テン・テレイル!」


 光に包まれ俺達は転送された。

 眩しさもあって一瞬目を閉じ、そしてほんの数秒後、再び目を開く。


「うわ……」


 俺の目の前に広がっている光景、それは巨大な天井にかなりの広さを持つロビーのような場所だった。

 どうやら建物の内部にいるようで、上を見上げれば大きなシャンデリアがある。壁は見事な輝きを放つ金色。

 そんなロビーの中を何十人もの人々が行きかっている。まるで超高級ホテルを想わせる造りだ。

 初めて見る人は多分みんな見とれてしまうだろう。それほど立派で豪華絢爛な内装だった。


「これが魔法省……」

「す、凄い……!」


 ここへ今日初めて来た俺と茅ヶ崎はもう圧倒されていた。

 こんなに大きいシャンデリアなんて映画やテレビでしか見たことがないし、まさか実際にお目にかかれるだなんて思ってもみなかったからな。多分茅ヶ崎も同じ気持ちだろう。


「じゃあ話を通してくるから少し待っててもらえる?」


 そう言うと藤導は受付カウンターらしき場所へ向かい女性と話し始め、数分経つと戻ってきてきた。


「許可が下りたわ。長官が直々に会ってくださるそうよ」

「長官?」

「第94代魔法省長官、グレゴリー・スタイルズ長官のことッス。今の魔法界における最高権力者ッスよ」

「最高権力者だって!?」


 まさかそんな凄い人と会えるなんてな。ここに来た甲斐があったってもんだ。


「あれ? 藤導の嬢ちゃんじゃねえか?」


 後方から声がしたので一同振り返る。

「やっぱそうだ! 久しぶりじゃねえか!」

「ローベルトさん!」


 そこにいたのは大柄な金髪の外国人男性だった。そして横には契約悪魔だろうか、スリムなタキシード姿の男性がいる。


「お久しぶりです藤導様」

「ええ、久しぶりねアルプ」

「お、ヴァニラちゃんも一緒か!」

「お久ッスローベルトさん」


 どうやらこの2人も魔法省のエージェントらしい。藤導とヴァニラと気軽に話しているとこを見ると、それなりの付き合いなんだろうな。


「ん? ルシファーさん!? ルシファーさんじゃねえか!!」


 突如2人はルシファーを見て驚きだした。まあルシファーは悪魔界でも指折りの有名人らしいので、こんな反応でも無理はないか。


「元気そうじゃなレオン、アルプ。そうじゃ、私の今の契約者を紹介しよう。こいつじゃ」


 ルシファーが俺を指さしてきたので慌てて自己紹介する。


「お、櫻津明日夢です! よ、よろしくお願いします!」


 いかん、いきなりだったのでついガチガチになってしまった。

 だが男性はガハハと笑い出し俺に返す。


「そう緊張するなって! 俺はレオン・ローベルト、ドイツ出身のエージェントだ。よろしくな。そしてこいつが俺の契約悪魔の――」

「アルプと申します。よろしくどうぞ」

「い、いえ……」


 アルプはとても礼儀正しく、悪魔というよりまるで執事に見えた。うちの悪魔にも見習わせたいもんだ。


「しかしその歳でまさかルシファーさんと契約しちまうとはなぁ」

「もしかしてあなたが噂の?」


 噂? 一体何のことやら。


「ええ、彼が魔力80%を計測した高校生よ」

「やっぱそうか! じゃなきゃルシファーさんほどの上位悪魔とサバトをして生き残るなんてできやしねえよな!」


 俺いつの間にそんな有名になってたんだ? 魔法界のことは詳しく知らないことも多いけど、まさか噂にまでされてたとは。


「レオン、そろそろ戻らないと……」

「おっと、カミさんとの約束があるんだ。じゃあなみんな! いつか一緒に仕事しようぜ!」

「それでは皆様、失礼いたします」


 そう言い残し2人は去っていった。

 滅茶苦茶ノリの良い人だったな……。


「さて、私達も行きましょう」



 エレベーターに乗り最上階へ着いた俺達は、これまた立派な造りの扉の前に立っている。

 この中にいるのが魔法界最高権力者と思うだけで緊張してしょうがない。

 魔法使いになってから何度も味わった感覚だが、今日は格別だ。

 藤導が扉を小さく2回ノックする。


「藤導です。入ります」


 ドアノブを握り扉を開ける。



「おーう、久しぶり切歌ちゃん!」



 そこにいたのはやたら軽いノリの老人だった。しかもパターの練習をしている。

 服装は半袖短パン、シャツの柄も花柄という格好だ。

 この人がグレゴリー長官なのか……?

 長官というからにはもっと厳格でビシッと決まっている人物を連想していたが、そのイメージを真逆にいく人物で正直面喰っている。



「それで、今日は何の用?」

「実は彼女達のことでお願いがありまして」


 茅ヶ崎とヴィネが前に出る。


「この2人は先日捜査を依頼された銀行襲撃事件の犯人なのですが、幸い怪我人も金銭の被害も出ていませんし本人も反省の意を示しています。また彼女の置かれている状況を考慮すると、情状酌量の余地は十分にあるかと……」

「ほう……それでどうしたいのかね?」


「この2人、茅ヶ崎シャーロット愛梨と契約悪魔のヴィネを私のチームにください」


 俺達全員……といってもルシファー以外だが、みんなで頭を下げる。




「うむ、分かった」



 って早!!


「なに、話は既に聞いておるよ。あいつの孫の頼みとあっちゃあ、聞かんわけにはいかんからな。よろしい、観察処分ということにしておこう」

「あ……ありがとうございます!!」


 茅ヶ崎が深々と頭を下げる。嬉しそうでなによりだ。


「明日より切歌ちゃん達と行動したまえ。活躍を期待しておるぞ」

「は……はい!!」

  

 全員で一礼し部屋を出ようとする。その時だった。


「あーそこの少年」


 少年? 俺のことか?


「は、はい?」

「君がルシファーの契約者だね」

「は、はい! 櫻津明日夢といいます!」


 レオンさんの時よりも緊張で声が大きくなってしまった。いやそれが普通なんだろうけど。

 長官はただ笑って俺に言う。


「君にも期待しておるよ」

「あ、ありがとうございます!」


 魔法界のトップから激励してもらえるなんて感激だ。


「失礼しました」


 部屋を出た俺はどこか気の抜けたような気持ちになった。


「長官ってあんな軽い感じの人だったんだな……」

「まあ良い人なのは確かッスよ」


 確かに良い人ではあった。茅ヶ崎のこともすぐに許可してくれたし。


「そういや藤導の祖父から話聞いてるって言ってたけど……」

「さっき私が使い魔を使ってお爺様に伝えておいたの。私のお爺様と長官は古くからの友人なのよ」


 そうか、さっき言ってたコネってそのことか。




「あの……みなさん……」


 茅ヶ崎が小さい声で呼びかける。


「どうした?」

「その……本当に……ありがとうございます!」

「私からもお礼申し上げます」


 茅ヶ崎とヴィネは頭を下げ礼を言う。

 この子はペコペコし過ぎじゃないか? ちょっと心配だな。


「良かったな茅ヶ崎」


 俺は頭を軽く撫でる。

 茅ヶ崎は顔を上げると頬を赤く染めながら照れくさそうに口を開いた。


「シャ……シャーロットでいいです……」

「そうか……じゃあ、良かったなシャーロット!」

「は、はい……!」


 嬉しそうな顔で答える。


「今日はもう帰りましょう。シャーロット、自宅まで送るわ」

「い、いえ! 自分で転送魔法を使います!」

「そう? まあ無理に送るとは言わないけど、近々私達の住む町へ引っ越すことになると思うから準備をお願いできるかしら?」


 そう、俺達と同じチームになったからには彼女も近くに住むことになる。藤導とヴァニラがそうだったように。


「は、はい!」


 ◇


 あれから数日が経ち、俺達は普段の日常に戻っていた。

 ここのところは事件もなく平穏に過ごしている。

 まあ、唯一変わったのは……。


「なあ、明日夢」


 こいつは俺の友人の松木。高校生らしくモテたい願望MAXなのだが、実際にはご想像の通りだ。


「ん?」

「お前1年の転校生知ってるか?」

「転校生? どんな?」


 正直言うと俺は知っているのだが敢えて知らないふりをしている。知り合いだとバレたら面倒だし。


「それがよ、ハーフの金髪美少女らしいんだよ! 今日見に行かね?」


 まったくこいつは……。そんなことのために下級生の教室まで行くつもりかよ。


「俺はパスしとく。別に興味もないし」

「んだよ連れねえ奴だな」


 好きに言え。お前は知らないだろうがな、俺はその転校生と既に知り合いなんだよ。


「んじゃあ城田あたりを誘ってみるか……」

「おう、行ってこい」


 そう、噂の金髪美少女転校生とはシャーロットのことである。

 魔法省で手を回し2日前にこの高校に転校させたというわけだ。

 同じクラスの男子からもう告白されているらしく、本人も対応に困っていた。なんとも羨ましい悩みだこと。


 ちなみにヴィネも学校の時間は屋上でルシファーと過ごしている。やはり契約悪魔が近くにいないと非常時に対応できないからな。普段はチェスなんかで暇つぶししているそうだ。

 何はともあれ、新たに2人加わった俺達のチームは今日もまた事件を追っていく。

 人々を魔法から守るために。


 ◇


「そういやもうすぐ夏休みか……」


 下校中ふと松木が言う。


「あと2週間か。松木はなんか予定あんの?」

「い~やなんも」


 テンプレな答えが返ってきた。


「か、悲しい……」

「そういう明日夢はどうなんだ?」

「お、俺?」


 夏休みも任務があるのだろうか。

 そうなると遊びにも行けないな。


「た、多分なんもないな……」

「お前もかよ……」


 せっかく藤導と知り合いになったんだし、一度でいいからどっか遊びにでも行きたいけど……藤導の性格からして誘うのは難しいだろうな……。そもそも俺にはそんな勇気ないし……。

 俺は小さくため息をついた。

 高校2年の夏休みはもうすぐそこまで迫っている。

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