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契約悪魔と魔法使い  作者: 高橋響
第一章「魔法使い編」
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第4話 「悪魔と魔法」

キャラクタープロフィール3


藤導切歌とうどうきりか

 ・誕生日:12月24日

 ・好きなもの:ムニエル、静かな空間

 ・嫌いなもの:納豆、虫、SNS

 ・趣味:トレーニング、入浴

 ・特級魔法:回復魔法(どんな怪我や病気も治せる。ただし使えるのは1日1回1人に対してのみ)

 ・契約悪魔:なし

 ・ヒロイン。

  魔法界において名家とされる藤導家の娘。そのため幼い頃より魔法や武術の鍛錬を積んでおり魔法使いとしては高い実力を持つ。その才能が評価され2年前から魔法省のエージェントとして活動している。

  人付き合いが苦手なため使用人のヴァニラ以外友人と呼べる存在はいない。そのヴァニラとは姉妹同然の仲。

  ロングヘアーで見事なスタイルを持つ美人だが男子からは高嶺の花扱いされている。

  明日夢には笑顔を見せたことはなく彼の好意にも気付いていない。だが自身がこの世界に引き込んだ明日夢に対しては何か特別な想いがあるようだ。

『ここ二日間、銀行が何者かに襲撃されるという事件が相次いでおり……』

 

 テレビのニュースから聞こえた音声に耳を傾けるルシファーの表情は普段より真面目だった。

 この事件に何か引っかかるものでもあるのだろうか。


「ほれ、早く朝飯食えよ」

 

 テーブルに今朝の分の朝食を置く。ちなみにメニューはフレンチトースト。


「のう明日夢。この事件の起きた場所、確かこの近くじゃったな?」

「まあ、電車で30分もないぐらいだったはずだけど」

「そうか……」


 何やら考え事でもしているのか、目の前の朝食にもまったく反応しない。

 こんな状態は初めて見る。


「明日夢よ、今日は私は学校へは行かん。もし何かあったら切歌とヴァニラに言うのじゃ」

「え? まさか外を出歩くのか?」

「安心せい、変化魔法で角を隠せば大丈夫じゃ」


 いつも俺や藤導が学校へ行っている間ルシファーは学校の屋上で昼寝をしている。昼休みには藤導がパンを持って屋上へ行くのがいつもの風景だ。

 これは転送魔法を使えば誰にも見つかる心配はないし授業中に屋上に行く生徒はいないのであそこなら安心という藤導の判断である。

 もし学校付近で魔法を使った事件が起きた際、ルシファーが近くにいないと俺は魔法が使えないというのもありここしばらくはこうしていた。

 

 だが今日は何やら真面目な表情で学校へ来ないという。明らかにおかしい。


 

「まあ真昼間から魔法で暴れる奴なんておらんじゃろ。夕飯までには帰るから心配しなくてよい」

「なんか今日のお前変だぞ?」

「私はいつも通りじゃぞ」


 不安と疑問が拭えないままルシファーは出かけて行った。

 一体何を考えているのか、気になるが聞き出す暇もない。俺も遅刻してしまうからな。

 急いで制服に着替え一気に朝食を食い外に出る。

 

 あいつ……何かおかしいな……。


 ◇


 魔法で容姿を警察官へ変えルシファーは事件現場の銀行に来ていた。

 周囲は警察や銀行員が数十人ほどいたが誰にも気づかれることなく現場へ潜入するのは容易だった。

 もっとも一般人に過ぎない彼らに魔法を見抜く力はないのだが。


 天井や金庫に巨大な穴が開き部屋中荒らされている。

ルシファーはその穴をじっくりと観察していたが穴の側面に気づくとすぐにその場を離れ銀行の裏の路地に行き変化魔法を解いた。この路地は人は滅多に来ないため元の姿に戻るには格好の場所だ。


(あの傷……まさか……)



 その時だった。急激に体が重くなりルシファーはその場に膝から崩れ落ちてしまった。


(くっ……! 変化魔法2回でここまでとは……!)


 ようやく立つことができたものの歩くことすらままならないほど体が重く感じる。もう動くのもキツいレベルであることをルシファーは自覚していた。


(帰りは電車とはいかんようじゃの……)


 ◇


「銀行襲撃事件?」


 藤導の口から今朝ニュースで言っていた銀行の事件が出てきたのはいつもと違いルシファー抜きの昼休み、俺達3人が屋上で昼食を摂っている時だった。

 そしてその言葉に誰よりも反応したのは俺だ。


「あの事件がどうしたんだ?」

「知っているなら話は早いわ。魔法省から事件の捜査を依頼されたの」


 魔法省から?

 ということは……。


「あの事件魔法使いが絡んでたのか!?」

「現場の状況から見ても間違いないそうよ」

  

 もしかして今朝のルシファーの様子が変だったのはこれが原因か?

 俺の様子から何かを察したのだろう、藤導が俺に声をかける。


「どうかしたの?」


 この2人になら説明すべきだろう。俺は今朝のルシファーの不可解な様子を話した。


「実は……」



「ルシファーが?」

「ああ、今朝はどことなく変だった」

「それは気になるッスね」


 付き合いの長いこの2人でもルシファーのそんな姿は見たことがないそうだ。


「変と言えばもう1つ気になることがあるの」


 今度は藤導が話を進める。


「今回の事件なんだけど、実はお金や怪我人の被害は一切出ていないそうよ」

「何?」


 どういうことだ? 

 銀行をあそこまで荒らしておいて金を盗むわけでもない、怪我人もいない。なら犯人は何を目的に事件を起こしたんだ?


「この事件、不明な点が多いッスね……」


 藤導もヴァニラもやはり腑に落ちないようだ。

 それはある意味当然なのかもしれない。なんせ犯人の目的がここまで読めない上に今朝のルシファーの明らかにいつもと違う様子。俺達3人共頭が混乱しそうだった。


「……まあ、魔法絡みの事件である以上は俺らが動くしかないだろうな」


 考えてても何も始まらない。とにかく動く方が先決だろう。


「そうね。さっそく今夜から行動しましょう」

「おう!」

 

 ◇


 放課後、藤導とヴァニラを連れ俺は帰宅した。

 こういう時のために部屋を掃除しておいて良かったぜ。

 なんせ女子が俺の家に……!


「ただいまー。ルシファー、帰ってるか?」


 返事はない。まだ戻ってないのだろうか。


「まだ帰ってないみた――」


 部屋への扉を開けた俺達の目に飛び込んだのはベッドで横たわるルシファーの姿だった。息を切らし顔

色も悪い。さらに体中汗だくだ。


「ルシファー!!」


 すぐに3人共ベッドに駆け寄る。


「あなた……まさか魔法を使ったの……」

「ああ。しかしここまで体がなまっていたとはのう……」


 喋るのも辛そうだ。


「ルシファーさん、これ飲むッス」


 ヴァニラがコップに水を汲んできくれたので少しずつルシファーに飲ませる。




「なあ、魔法を使ったってどういうことだ?」


 俺はさっきの藤導の言葉が気になっている。


『あなた……まさか魔法を使ったの……』


 ルシファーは魔法を使ってこうなったってのか?


「あなたにはまだ話していなかったわね……」


 藤導は語り始めた。


「悪魔は人間と契約して魔法が使えるようになる、これは説明したわね。でもほとんどの悪魔は何故か人間に魔法を使わせる。不思議に思ったことないかしら?」


 確かにそうだ。魔法が使えるようになったのなら人間に使わせるより自分で使った方が効率が良いしいっそ人間と一緒に魔法を使えば戦力は格段にアップする。


 だがそれをする悪魔はほぼいない。


「その理由がこれよ。悪魔は魔法が使えるけど人間以上に体にかかる負担が大きいの。だから契約悪魔は人間に魔法を使わせるのよ」

「ルシファーさん、どのくらい魔法使ったんスか?」

「上級魔法を3回じゃ……」

「上級魔法を……!」


 まさかそんな事情があったとは。知らなかったとはいえ俺がちゃんとどこに出かけるのか、何をしに行くのか聞いておくべきだった。


 俺のせいだ。契約者ならそのくらいするべきだった。

 

「ルシファー、今日は休んでいなさい。例の事件の捜査は私とヴァニラで――」

「ごめんルシファー!」


 俺は深く頭を下げルシファーに謝った。


「バカ……何でお前が謝るのじゃ……」

「俺がちゃんと行き先と目的を聞いておくべきだったんだ! 俺、契約者なのにそんなこともできないでお前をこんな状態にしちまった……!」


 俺の頭は後悔と懺悔でいっぱいだ。

 しかも俺のせいで任務にも影響が出てしまった。


「やめて櫻津君。あなたは悪くないわ。全てあなたに説明しなかった私達のせいよ」

「いや、そんなことは……」

「今日の捜査は私とヴァニラで行うわ。櫻津君、あなたはルシファーの傍にいてあげて」

「……分かった……」


 悔しいがルシファーのいない俺は魔法も使えない、ハッキリ言ってただの足手まといだ。ここに残る方が良いのだろう。


「櫻津さん、今は櫻津さんのできることをやるッス。明日になればきっとルシファーさんも回復して戦線に戻れるッスから」


 ヴァニラは優しく俺を励ましてくれた。こいつはよくさりげないフォローをしてくれる。

 今日ほどそのフォローがありがたく感じた日はない。


「ありがとなヴァニラ」

「いえいえ」


 ヴァニラは軽い笑みを浮かべる。

 


「ヴァニラ、そろそろ行きま――」

「待つんじゃ!」


 ルシファーが声を大きくして言う。


「どうしたの?」

「捜査を明日に延期してもらえんか?」


 今まで見たことないくらい必死な目で訴えかけている。

 何か訳ありなようだ。


「明日に? 今夜だって犯行が行われる可能性があるのよ。もしかしたら今何処かの銀行が襲撃されているかもしれないのに延期だなんて……」

「ワガママなのは分かっておる! だが私は犯人に心当たりがあるんじゃ!」

「何だって?」


 俺達全員がその言葉に耳を疑う。


「昼間現場の銀行へ潜入してきた。実際に手口を見るまでは言い切れんが私が知っている悪魔かもしれん」


 そうか、ルシファーは事件現場の銀行へ行っていたのか。

 今朝のニュースを見て魔法使いの仕業と見抜いていた、だからいつもと様子が変だったんだ。


「本当なの?」

「ああ。私がいれば何とか交渉の余地がある。できれば私の体が治るまで待ってくれんか……!」


 ルシファーの訴えに折れたのか、藤導は渋々だが了承し任務は明日へ延期されることになった。


「櫻津君、ルシファーのことお願いします」

「ああ、任せとけ」


 藤導はそう言い残しヴァニラと自分の家に帰って行った。




「ちょっとは元気になってきたか?」

「うむ……」


 ベッドで寝ているルシファーに問いかける。


「明日夢、お前には悪いことしたのう」


 落ち込んだ顔のルシファーが言った。

 こんな顔のルシファーは見慣れないせいかなんだか変な気分だ。


「俺の方こそ、悪かったな。その代り明日からの任務、気合入れてくぞ!」

「もちろんじゃ!」


 この数週間で少しはパートナーとして成長できたのだろうか。俺とルシファーの思いがガッチリ噛み合ったのを感じた。



「でも正直意外だったよ。お前があそこまで任務に必死になるなんて」


 これには俺だけでなく藤導とヴァニラも驚いていた。

 あの2人ですら初めて見たってことか。こんなに真剣になってるルシファーを。


「まあ私も魔法を悪用されるのは防ぎたいのじゃ。それに……」

「それに?」

「私が活躍すれば魔法省からの報酬でスイーツが買えるからの!」

「結局それか……」


 ルシファーらしくて安心したのか、俺は軽く笑った。



「じゃあ活躍するためにも早く寝ろよ」

「うむ、今日はもう寝るとしよう」


 そう言うとルシファーはベッドから起き上がった。


「あ、今日はベッドで寝てもいいぞ」


 いつもルシファーは床に敷布団を敷いて寝ている。本人は不満そうだったが藤導が言い聞かせたため不本意ながらも敷布団で寝ていた。なんでもルシファーのワガママを矯正するためだそうだ。


 だが今日は別だ。体調が悪いならベッドで寝かせる方が良いだろう。


「なら明日夢はどうするんじゃ?」

「俺が布団で寝るしかないだろ。まあ今日くらいはいいよ」

「しかしこうなったのも私が原因だしな……」


 別に気にする必要なんてないのにな。こういう時くらい甘えても誰も文句は言わないだろうし。


「そうだ! 明日夢、お前もベッドで寝ればよい!」

「ええっ!」


 突然何を言い出したかと思えば……。


「遠慮などするな! それとも照れておるのかのう?」


 まさに悪魔のような笑みで俺を見る。いや悪魔じゃなくて堕天使だけど。あ、悪魔と堕天使は同じなんだっけか。


「べ、別に照れてなんかねえけど……」

「ならお前も入ればよい! それでおあいこじゃ!」

「……ったく、分かったよ……」


 画的にかなりマズい気がするが、まあ誰にも見られてないしいいか。

 別に下心はないんだしな。そもそも俺には藤導がいるし……って何を言ってるんだ俺は。


 俺がベッドに入った数分後、気が付くとルシファーは既に眠っていた。

 ぐっすり眠るルシファーを見ているとなんだか妹ができた気分がする。


「俺も寝るか……」


 こうして俺とルシファーは同じベッドで眠った。


 ◇


「仲良いッスねあの2人」


 水晶に映し出された明日夢とルシファーを見ていたのは切歌とヴァニラだった。

 これは中級魔法の1つ、監視魔法だ。

 本来こういった使い方をするべきではないのだが、今回はルシファーのこともあり特例として明日夢の部屋を見ている。


「2人が心配でついつい見ちゃいましたけど、あれなら安心ッスね」

「……そうね……」


 切歌は小さい声で答え立ち上がった。いつもに比べ覇気のない声が気になりヴァニラは切歌の顔を見る。


「何で怒ってんスか?」

「べ、別に怒ってなんか――」

「いやいや、怒ってるじゃないッスか。顔も真っ赤だし」


 切歌はすぐさま顔を見られないように体ごと背けたが、ヴァニラの目をごまかすことはできなかった。

 ニヤついたような顔でヴァニラはさらに追い打ちをかける。


「もしかして嫉妬ッスか切歌様?」

「だ、誰が嫉妬なんて!!」


 切歌は声を一段と荒げた。



(さすがにこれ以上はイジらない方がいいッスね……)


 ヴァニラは本能的に危機を感じとったのか、苦笑いを浮かべ答える。


「じょ、冗談ッスよ~」

「......もう寝るわよ!」

(素直じゃないッスね切歌様も)


 内心では楽しんでいるヴァニラに気づくことなくすぐに切歌は布団の中に潜る。


(嫉妬……? 私がルシファーに嫉妬なんてするわけ……!)


 その顔は真っ赤に燃える炎のように熱く、それでいて赤くなっていたのを彼女自身が自覚することはなかった。

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