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契約悪魔と魔法使い  作者: 高橋響
第三章「魔神編」
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第43話 「愛する者へ」

キャラクタープロフィール24


エリー・ギャラハー

・誕生日:11月4日

・好きなもの:ミルフィーユ、バロールとの暮らし、太陽

・嫌いなもの:辛いもの、雨

・趣味:歌

・特級魔法:???

・契約悪魔:バロール

・アイルランド人の少女。年齢は10歳。

金髪のロングヘアーが特徴。

明日夢に匹敵する魔力を持っているがその魔力に体が耐え切れず視力を失っている。

両親に捨てられ街を徘徊していたところをバロールに拾われサバトを行った。

魔法は一切使えない。

悲しく過酷な過去の持ち主だが健気に生きている。

 どうすればいい?

 思考をフル回転させるが打開策が見つからない。


 人質を取られた以上こちらが不利だ。下手に動けばエリーに何をするか……。



「さあ、どうするんだいバロール!」


 ジョシュが急かす。

 バロールは完全にパニック状態だ。


「バロール、大丈夫か……?」


 俺の声にも一切反応しない。

 頭を抱えたまま蹲っている。




 数秒後、バロールが突然動かなくなった。


「俺にとって……、大事なのはエリーだけだ……」


 小さな声で呟くとバロールは立ち上がりジョシュ達の方へ歩き出した。


「バロール!」

「俺にとってはエリーが全てだ」


 まさか、奴らの仲間になる気か!?



「よく決めてくれたよ」

「先にエリーを返せ」


 数歩距離が空いた位置でバロールがジョシュに要求する。


「それはできない」


 ジョシュが楽しそうに答える。

 この状況を楽しんでやがるな。


「俺達が欲しいのはあんたの眼だ。この子が戦う必要はない。だからこのまま人質にさせてもらうぜ」


 野郎! どこまで汚ねえ真似を!


「お前らも動くんじゃねえぞ」


 ジョシュはトライデントを俺とルシファーに向ける。

 これじゃあ身動きできない……!




「ククク…………」

「バロール?」


 何だ? バロールがいきなり笑い始めたぞ?

 ジョシュの仲間達も状況が把握できていないようだ。



「やはりこうなるか……!」


 次の瞬間、バロールはサングラスを外した。


「テメェ!!」


 ジョシュはすかさず目を閉じたため助かったが仲間の2人はバロールの魔眼を見てしまった。


「う……うがあああ!!」

「ぐああ! うぐああ!!」


 2人は黒いオーラに包まれその場に倒れた。

 ほんの数秒でだ。


「これが魔眼……!」


 俺は驚きのあまり固まってしまった。


「エリー!」


 バロールはサングラスをかけエリーの元へ走る。


「大丈夫か?」


 素早くエリーの猿轡さるぐつわを外す。


「バロール!! バロール!!」


 嬉しさからか、バロールに抱きつく。

 彼女には怖い思いをさせてしまっただろう、エリーの顔は安堵の表情だ。


「怖かったよ……バロール……!」

「もう大丈夫だ、俺がいる!」


 思わず涙が出そうになってしまった。

 もしかしたらバロールは本来良い悪魔なのかもしれない、そう思えた。


「エリー、怖い思いをさせて――」




「バロール!!」


 突如ルシファーが叫ぶ。

 それにつられて俺は一瞬ルシファーを見てしまった。

 慌てて視線を戻す。

 一体何があったんだ?




「え……」




 目を離したほんの少しの間のことだった。

 バロールの背をジョシュのトライデントが貫いている。


「が……はっ!」

「できれば仲間にしたかったけど、こうなったら仕方ないな」



「バロール? どうしたの?」


 何が起きたか分からないエリーはバロールの名を呼ぶことしかできない。

 何度もバロールを呼び続ける。


「バロール? ねえ、どうしたの!? バロール!!」


 悲痛な叫びが虚しく響く。



「テメェェェ!」


 怒りのあまり大声を出す。


「ルシファー!」


 ルシファーを剣に変え強く握り締めると、一気にジョシュに向かい走る。

 あの野郎、もう許さねえ!!


「ミ・スイー・ウォン!」


 この呪文、奴の特級魔法だ!

 ジョシュは左手から大量の水を放出し俺に放つ。


<危ない!>


 すぐに避けたものの地面がえぐれている。

 これじゃあ近づけないぞ!


「バロール、もっと冷静な判断をするべきだったね」




 この一言を受けてバロールが見せた表情、それは――――――――笑顔。

 何故笑えるのか、俺には全く理解できなかった。


「バカは……貴様だ……!」


 そう言うとバロールはトライデントを掴んだ。


「何をする気だ!」

「ぐ……ぐああああ!!」



 今俺の目に映る光景を俺自身信じることができない。

 バロールはトライデントで刺された状態で回り始めた。

 物凄い量の血がバロールの下半身を赤く染めていく。


「バロール!」

<あいつ、一体何を!?>


 俺もルシファーも、そしてジョシュも驚きを隠せずにいた。

 誰だってこんなことするとは思わないだろうしな。


「な……何考えてやがる!」


 ほぼ一周すると今度はジョシュに近づき始めた。

 数歩進むとバロールはジョシュの首を掴む。


「ぐっ……!」



「今だ……! やれえ!!」


 首を掴んだままバロールは俺達を見る。


 そうか、これがバロールの狙いか!


「ルシファー!」

<うむ! 行くぞ!>


 ルシファーを握り直しもう一度ジョシュへ向かい走り出す。


 この絶好の機会、逃すわけにはいかない!



「決……めろ……!! 明日夢ぅぅぅ!!」



 ありがとよ、バロール!!



「トー・クロウ・ルシフ!!」


 俺とルシファーの特級魔法を唱えた。

 全てがゆっくりになり俺だけが通常の速さで動いている。


「おらあァァァァ!!」



 俺のルシファーがジョシュの腹を貫く。

 バロール、仇は取ったぜ!


「うぐああ!!」


 時間が元へ戻るとジョシュはその場に倒れ込んだ。


「ジョシュ、お前はここで――」



 全て言い切る前にトライデントが発光し、レヴィアタンが悪魔の姿へ戻る。


「また会おう。レ・テン・テレイル」


 それだけを言い残しレヴィアタン自身が転送魔法を発動しどこかへ転送されていった。


「取り逃がしたか……」


 レヴィアタンは不気味な悪魔だな。

 あの目は当分忘れられそうにない。


 ルシファーが悪魔へ戻る。


「レヴィアタンめ、何を企んでおる……」



「そうだ、バロール!」


 バロールは血塗れの状態で倒れていた。

 バロールの血がエリーの白いパジャマに飛び散っている。



「バロール? 大丈夫? バロール!?」


 エリーの必死の呼びかけに答える力すらないのだろうか、バロールは言葉を発せずにいる。


「バロール!! 返事してよ!! バロール!!」


 エリーは呼びかけ続ける、手探りでバロールを探しながら。


「エ……リー……」


 バロールが微かな声で返事をした。

 生きていたのか!


「バロール! 大丈夫、バロール!?」


 倒れているバロールにエリーの手が触れる。


「エリー……話がある……」


 苦しそうに話すバロールを見るのが辛い。



「俺は……お前と別れなきゃならないようだ……」

「どういうこと……?」


 エリーの目から大粒の涙が流れている。



 そして俺は気づいた、バロールの足が段々と消滅していくことに。



「俺はもう……死ぬ……」

「そんな……」


 俺はこの状況を見ていることしかできなかった。

 何もできない、その力もない。



「そんなのやだよ! 一緒にいたいよ! バロール!」


 エリーは倒れたままのバロールに抱きつく。

 エリーの洋服にはバロールの血が染み付いていた。


「ルシファー……! そして……明日夢……! この子を……頼む……!」

「……分かった!」



「バロール! 死んじゃ嫌だ!」


 バロールはエリーの頰に血に染まった手を当てる。


「エリー、俺の……最後の言葉だ……、聞いてくれ……」


 エリーは泣きながら言葉を止める。

 俺とルシファーも一言も話さず、というより話せずにいた。



「お前は今まで……その魔力、そして俺という契約悪魔がいたせいで……何度も辛い思いをしてきただろう……。だが……だからこそ……きっとエリーにはこれから……沢山の幸せが訪れるはず……だ……!」


 俺の中に初めて会った時のバロールに抱いた印象はもうなかった。

 一緒にいたのはたった2日だけだったけど、バロールという悪魔を俺は絶対に忘れない。



「お前の幸せは……俺の幸せなんだ……! だから……思いっきり幸せになれ……!」


 バロールはサングラスに手をかける。

 俺は目を瞑った。魔眼の効果はまだあるからな。


「俺の……形見だ……。これくらいしか……渡せるものが……」


 エリーの手にサングラスが握られているのだろう。


「これは……私の宝物にする!」


 エリーの声から強い意志を感じ取ることができた。



 目を閉じると何も分からない、これがエリーが見てきた世界か。

 光のない、暗闇の世界。



「目を開けていいぞ……。もう俺には魔眼の力は……残っていない……」


 バロールの言う通りに目を開ける。

 もう魔眼の効果はないようだ。

 それほど弱っているのだろうか。



「エリー……、これが最後だ……」


 バロールの声から段々生気がなくなってきている。




「愛しているぞ……エリー!」

「私も大好きだよ……バロール!」


 バロールは僅かな力を振り絞って顔を寄せ、エリーにキスをした。



 そしてバロールは消滅した。



「うっ……! うぐ……! うわあーん!!」


 エリーの泣き声が響き渡る。

 何でかな、体に力が入らない。


「アイラに連絡するぞ」


 ルシファーは淡々と話すがどこか元気がないのが分かる。



「バロール! うわあん!! うわあぁぁ!!」


 エリーにかける言葉も見当たらない。




 以前、俺は魔法でみんなを守ると誓った。

 俺の両親やパイモンのような悲劇をなくすと。

 けど思ったんだ。




 本当に守れているのだろうか?




 俺は俯いたまま顔を上げることができなかった。

閲覧ありがとうございます。


かなり重い展開なので書いていて辛かったです。

ただ最期のバロールの台詞はエリーの力になると思います。


そして今回の一件は明日夢の心に穴を開けました。

彼がこの事件を経てどうなるのかも今後注目していただきたいです。


魔神編は次回で終了です。

感想、評価、レビュー、ブクマ、大歓迎です。

次回もよろしくお願いしますm(__)m

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