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契約悪魔と魔法使い  作者: 高橋響
第三章「魔神編」
43/126

第42話 「襲撃」

キャラクタープロフィール23


バロール

・誕生日:不明

・好きなもの:ミートパイ、エリーとの生活

・嫌いなもの:ナス、人間

・趣味:釣り

・特級魔法:???

・契約者:エリー・ギャラハー

・ケルト神話に伝わる魔神。

左眼は見た者が一瞬で死ぬ魔眼。

自身とエリーの過去から人間を嫌っている。

「ふう、気持ちいいの」


 夜、バロールとエリーの家の風呂にルシファーと共に入っている。

 俺がいないと風呂に入ることすら面倒くさがるからな、うちのワガママ堕天使は。


 風呂はそこまで大きくはないが体格の小さいルシファーと入る分には苦労はしない。


「ちゃんと肩まで浸かれよ」

「ほいほい」


 適当な返事をしルシファーは肩まで湯船に浸かる。



「まだ納得がいかんか?」


 ルシファーに問われる。

 顔に出てたかな?


「……納得っていうか……」


 何と言えばいいのかな、全く思いつかない。

 バロールに対してはエリーを利用したという思いは今でもある。けどエリーにとってバロールと契約したことが吉と出たのならそれで良かったんじゃないかとも思う。


「あまり考えない方が良い。あの2人の過去は外の立場の私達がどうこう言えることじゃないからの」

「まあ、確かにな……」


 複雑な思いを胸に抱えたまま夜を過ごす。




「う……、今何時だ……?」


 時計を見ると針は11時50分を指していた。

 時差ボケの影響か眠気が半端じゃない。



「こんな時間にお目覚めとは大層なことだな、契約者よ」


 寝起きから憎まれ口を叩くのはバロールだった。


 昨夜、部屋がないので俺達はリビングで寝ていた。

 だから今俺がいるのはリビングだ。

 そしてバロールは料理をしている。


「日本とは時差があるんだよ」

「そりゃ悪かった、悪魔は時差ボケなんぞとは無縁でな」


 この野郎、そんなに人間が嫌いなのかよ。

 ……まあ、過去のことを考えれば無理ないんだろうけどよ。



「もう少し待て、昼飯を作る」

「手伝ってやろうか?」

「構わん。そこで待っていろ」


 こちらを振り返ることもせず淡々と話すバロールの感情が全く読めない。

 正直俺は少し苦手だ。


「優しいんだな」

「勘違いするな、エリーの客だからだ」



 日の光が目に入りすっかり目が覚めた。


「ルシファーとエリーは?」

「ルシファーがエリーを背負って空を飛んでいる」

「空!?」


 すぐさま窓の外を覗く。

 上を見ると翼を広げたルシファーが空を飛んでいた。

 背中にはエリーが乗っている。


「人に見つかったらヤバいんじゃ……」

「ここは地元の人間も寄り付かない場所だ。心配するな」


 バロールは俺と話しながら見事な包丁さばきで野菜を切っていく。



「考えが足りんな、契約者」

「あのな、俺の名前は“契約者”じゃない、明日夢だ」


 昨日からバロールは一度たりとも俺の名前を呼ばない。

 見下されてるようで気に入らないぜ。


「お前の名前なんぞに興味はない」


 バロールは冷たく突き放す。


「ああそうですか……」



 洗面所へ行き顔を洗う。

 その間もずっと考えていた。

 バロールとエリーに対するこのモヤモヤは何だろう?


「考えても意味ないのかな……」


 俺が思っていた以上に悪魔と契約者の世界は複雑な事情が絡んでいる、それを今回で痛いほど理解した。



 俺がリビングに戻ると同時にルシファーとエリーが帰ってきた。


「どうじゃ、私の翼で空を飛んだ気分は?」

「すっごく気持ち良かったよ!」


 エリーは随分と気に入ったようだ。


「おう、おかえり」

「ようやく起きたか」


 時差ボケで起きれなかったとは言えなかった。

 バロールに言われたのが引っかかっているのかな。




 昼飯を済ませるとルシファーが街に行きたいと言い出したので、俺はルシファーを連れ街の中心部へ買い物がてら観光へ向かった。

 多くの人で賑わう街は見ているだけでも楽しいものだ。


 ルシファーの角はバロールが魔法で隠してくれた。

 その分バロールには体に負担がかかるがバロール自身は特に何も言わなかった。


 バロールはエリーには魔法を教えていないそうだ。

 正直目が見えない上まだ幼い彼女にはそれが正しい選択なのかもしれないな。



「見ろ! 美味しそうなアイスが売ってるぞ!」

「食いたいか?」


 ここに来る前、魔法省からアイルランドの通貨であるユーロをいくらかもらった。アイスくらいなら買ってやれる。


 ルシファーのいつもと変わらない様子を見ると少しだけ気が楽になった。

 俺は深く考え過ぎてたのかな?




 夜、エリーが既に眠りにつき俺達3人も寝る準備をしていた。


「俺達いつまでここにいるんだ?」

「バロールが納得してくれるまでじゃな」


 そんなのいつまで経つか分かったもんじゃないぞ。

 俺にも学校があるしな。


「ま、ダメな時は平日だけ帰国しよう。お前だけ日本に帰らせるわけにはいかんしの」


 俺の隣のルシファーが毛布を被り、俺も寝ようと目を閉じた。




「明日夢!」


 急にルシファーが起き上がり俺を呼ぶ。


「何だ!? どうした!?」

「誰かいるな……」


 気づくとバロールもリビングへ来ていた。


「この気配……あの時の!」


 俺達はすぐさま外へ出る。

 外は風が強く肌寒かった。



「また会ったね! ルシファー、そしてその契約者!」


 外にいたのは先日俺を襲撃してきた茶髪の男だ。

 何故ここにいる!?


「何をしに来た!?」

「用があるのはあんただよ、バロール!」


 トライデントでバロールを指す。


「俺達の仲間になれ」

「断ると何度言えば分かるんだ?」


 バロールは冷静さを保っている。



 しかし茶髪の男はバロールの返事にニヤリと笑う。

 物凄く不気味な表情だ。


「断ったらどうなるか教えてあげるよ」


「まさか!」


 突然バロールが家の方へ走り出す。


「おい、バロール!?」




「お探しなのはこの子かい?」


 茶髪の男の隣にいつの間にか2人の仲間が立っていた。

 1人はスキンヘッドでワイシャツを着た黒人男性、もう1人はパーマをかけた赤髪が特徴の男性だ。


 だが俺達が一番目を見張ったのは黒人男性だ。

 男は猿轡さるぐつわをしたエリーを抱えている。


「そんな……!」

「エリー!!」


 バロールの声には反応している、意識はあるようだ。


「仲間になるならこの子の安全は保証するよ」

 野郎……! なんて汚い真似を……!



「俺は……大馬鹿野郎だ……」


 バロールは膝から崩れ落ちた。

 糸の切れた人形という比喩がピッタリなほど力無い。


「……ざけんな! エリーを返せ!」

「“はい分かりました”とでも言うと思う?」


 俺達を嘲笑う姿が戦極に似てるな。

 心底ムカつくぜ……!


「貴様、名は何という?」


 ルシファーが口を開く。


「そういえば自己紹介してなかったね。俺はジョシュ ・ローリンズ。アメリカ人さ」


 平然と名前を明かすなんてよっぽど自信があるのか。



「そうか、この男がお前の今の契約者か?」


 ルシファーの言葉は明らかにジョシュに向けたものじゃない。

 契約者ってまさか?



「出てこい、レヴィアタン!」

「レヴィアタンだと!?」


 ルシファーの一言を機にジョシュの持つトライデントが発光する。

 奴もサバトをした魔法使いだったのか。




「流石だなルシファー」


 トライデントが真の姿を現わす。

 黒髪ロングのほっそりとした体型、目は鋭く肌は白い。

 黒いロングコートに白の手袋をはめている。

 何より頭には悪魔の象徴、角が2本生えていた。


 全体的に気味の悪い感じがしてならない。

 道で見かけてもなるべく近寄らないようにするタイプだ。


「よく分かったじゃないか」

「一昨日、明日夢を襲撃した時に感じた気配でもしやと思っての。こいつがずぶ濡れになっていたのを見て確信した」


 つまりレヴィアタンの特級魔法は水魔法?

 しかもアスファルトに穴を空ける威力ってことだ。



「レヴィアタン! 貴様!」


 バロールの怒号が響く。


「久々に会ったというのにおかんむりか?バロール」


 そう言うとレヴィアタンは再びトライデントへ戻る。



「さあバロール、決断の時だ」


 バロールは膝をつき下を向いたままだ。

 悔しさと葛藤で何も話せていない。



 俺はそんな姿をただ見ることしかできずにいる。

閲覧ありがとうございます。


今回はバロールに加え新たなる悪魔、レヴィアタンが登場です。


一緒に風呂に入ったり段々明日夢とルシファーと距離が近くなってきましたが感覚的には妹なので大丈夫です笑


感想、評価、レビュー、ブクマ、大歓迎です。

次回もよろしくお願いしますm(__)m

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