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契約悪魔と魔法使い  作者: 高橋響
第一章「魔法使い編」
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第2話 「初任務前夜」

キャラクタープロフィール1


櫻津明日夢(おうづあすむ)

・誕生日:10月9日

・好きなもの:カレー、漫画

・嫌いなもの:車、誰かを傷つけること

・趣味:漫画読破、音楽鑑賞

・特級魔法:???

・契約悪魔:堕天使ルシファー

・主人公。何の変哲も無い高校生だったが数ヶ月前に異常なレベルで魔力が上昇したため魔法省に見出され(半ば強制的に)サバトを行い堕天使ルシファーと契約、魔法使いとなり魔法省のエージェントとして活動することとなる。

これといった得意分野はないが非道な行為には怒りを露わにする等、根は心優しい。

二年生に進級してから出会った藤導切歌に想いを寄せており、魔法省のエージェントになったのも(自覚はないが)彼女の存在が大きい。

 あれから1週間が経った。あの日以来、俺は朝昼は学校、夜は魔法の特訓と多忙な日々を過ごしている。

 そしてそれは今日も同様だった。


「よーし、今日はここまでじゃの」

「お疲れ様、櫻津君」


 息切れを起こしまともな会話もままならない俺に藤導はタオルと水をくれた。

 息を整え汗を拭き水を一口飲む。渇ききった喉が次第に潤されていくのを感じる。


 この1週間、俺は魔法の基礎である下級魔法の特訓及び剣術強化に勤めていた。

 いくら魔力が高くても基礎がしっかりとしていなければ無意味だ。そのために今は下級魔法と剣術をみっちり特訓している。

 なぜ剣術なのかというとルシファーは魔法を使う場合剣に姿を変えるため剣術強化も必須なのだ。

 

 とはいえスポーツもまともにしたことのない俺には剣の特訓は厳しいことこの上なかった。初日なんてまともに物を切ることすら出来ずルシファーには半ば呆れられていたぐらいである。


 だが1週間も経つと多少の上達が見られたのか、剣を振ることはある程度思い通りになり下級魔法もそれなりに扱えるようになった。ま、藤導やヴァニラには遠く及ばないのだが……。


「では帰りましょうか」

「ああ」

「レ・テン・テレイル!」


 藤導が呪文を唱えると周囲が光を放ち、一瞬で俺達は俺の家に転送された。

 今のは藤導の使う上級魔法の1つ“転送魔法”である。夜に魔法の特訓をする際にはいつもこの転送魔法で人気のない浜辺へ移動している。


「あ~疲れた……」

「だらしないのう、若いもんが!」


 疲れて座り込む俺にルシファーが言う。だがこの疲労感では最早若さ云々の問題ではない。

 反論する気力もなくそのまま寝転がった。


「櫻津君、汗だくのまま寝たら風邪を――」



『ガラガラガラ!』

「うわ!」

「ちわーッス。入りますね」

「窓から入るなよ!」


 俺達のチームの1人、ヴァニラ・エルビア。

 こいつは何故か毎度窓から入ってくる癖がありもう3回は注意しているが一向に直る気配がない。


「ヴァニラ、いい加減窓から入るのは辞めなさい」

「すいません切歌様。ついついやっちゃうんスよね~」

「ついついで済ますなよ……」


 まあ藤導から言われたなら素直に聞くだろうけど。

 藤導家は魔法使いの世界では高名な一族でありヴァニラは藤導家に仕えるエルビア家の娘らしい。

 2人は主従関係こそあれど、幼い頃から姉妹同然に育ってきたそうだ。 

 藤導のことを昔から知ってるというヴァニラが少し羨ましい。


「そうだ、切歌様。魔法省から任務の通達ッスよ。これがその手紙ッス」

「魔法省から?」

 

 ついにこの時が来た。俺のエージェントとしての初仕事だ。

 もちろん不安も強いが俺だってこの一週間ひたすら特訓してきたんだ。やれるだけやってやるさ。


「これが内容ッス」


 ヴァニラから伝えられた任務の内容はこうだ。



『ここ3日間に渡り君達が住む地域で魔法を使ったと思われる暴行・強盗事件が相次いでいる。君達3人に明日以降夜間のパトロールを頼みたい。犯人は見つけ次第確保し我々の元へ連行せよ』



 魔法を何の力も持たない無力な人間に使い金を盗むような奴だ。俺達にも容赦ないだろう。下手をすれば俺も病院送りか、今度こそ本当に死んでしまうかもしれない。

 俺は唾をごくりと飲み込んだ。

 だが無関係な人間に平気で魔法を使うなんて絶対に許せない。そう思うと心の中でぐんぐん闘志がみなぎるのを感じた。


「どうかしたか明日夢?」

「いや、魔法をそんな使い方する奴が許せねえんだよ……!」

「落ち着いて櫻津君。今回は私とヴァニラのバックアップをお願いしたいの」

「バ、バックアップ!?」


 やる気に満ちていた俺だったが一気に萎えてしまった。俺は確かに2人ほど魔法を使いこなせていないし戦闘も初めてだ。

 でもこの怒りに燃えている俺の心は犯人を1発ブン殴ってやりたいぐらいの気持ちなのだ。だからこそ、藤導の言葉がショックだったんだ。


「まあまあ櫻津さん。今の段階じゃいきなり戦闘は厳しいッスから。それよりかは今回で私達の仕事がどんなもんか知っておいた方がさらに成長できるッス」


 ヴァニラが俺を宥める。


「そりゃ……そうかもしれないけどよ……」


 納得いかない俺にルシファーが口を開いた。


「よいか明日夢。この1週間のお前の成長は並の魔法使いとは比較にならん。今は納得いかなくてもお前ももうすぐ戦力になる。だから今回は敢えて遠くから見て学ぶんじゃ」


 正直信じられなかった。下級魔法だって完璧になったわけじゃない。剣術もまだまだなのにこれでも成長が早いのか。


 ……まあ、俺の契約悪魔であるルシファーが言うことだし今回は言う通りにするか。それに下手に前線に立てば2人に迷惑がかかるかもしれない。

 冷静になってようやく分かった。


「ありがとなルシファー、ヴァニラ。頭冷えたわ」


 そうだ。これは遊びじゃない、実戦なんだ。

 新米の俺が自分の感情で勝手に動くわけにはいかないし2人の方が安心だ。


「では明日の夜18時から行動開始よ。放課後、ここに集合しましょう」

「おう!」

「了解ッスー」



 明日の行動を決めた後、2人は今住んでいるアパートへ帰っていった。藤導とヴァニラは今この近くのアパートで同居しているそうだ。

 そしてルシファーはというと――――


「明日夢ー! 腹が減ったぞー!」

「あーもう! 今作ってるから待ってろ!」


 そう、俺の家に住んでいる。

 契約悪魔と一緒に暮らし2人のチームワークを高めるのが目的だと藤導は言っていた。

 まあそれは正しいし一緒にいればいざという時に魔法が使える。だから藤導の言うことは分かるし納得もいく。

 だが1つだけ面倒なことがある。


「俺は風呂入ってくるから先に食ってろ」

「明日夢……」

「ん?」

「私は野菜が嫌いじゃとあれほど言ったろう!」

「子供かお前は!」


 どうやら俺の作った焼きそばに野菜が入っていたのが不満なようだ。

 とはいえほんの少し玉ねぎとピーマン、それと人参を入れただけなんだがそれすら気に入らないらしい。


「好き嫌いするなって毎回言ってるだろ!」

「嫌なものは嫌なのじゃ!」

「お前なぁ……」


 そう、ルシファーはとんでもなくワガママなのだ。見た目を裏切らない子供っぽさでこの1週間俺を呆れさせてきた。

 藤導とヴァニラも相当手を焼いていたに違いない。

 だが契約者である俺には面倒を見る責任がある。


「じゃあ今日のデザートはなしな」

「うっ……!」


 こうするとルシファーは怯む。1週間一緒に暮らして大体飼いならし方が分かってきた。


「く、食えばいいのじゃろう、食えば!」


 鼻をつまみながら一気に野菜を口に入れていく。今にも倒れそうなくらいみるみる顔色が悪くなっていくのが分かる。

 それでも数秒のうちに野菜を完食し麺も一気にたいらげてしまった。


「よーし、よくできました」


 俺は今にも泣き出しそうな顔をするルシファーの頭をなでた。


「こ、子供扱いするなー!」


 いや、これは子供扱いしちゃうだろ。

 しかも面倒なのは食事の時だけではない。


 俺が風呂から出てようやく夕飯を食っていた頃、テレビを見ていたルシファーに風呂に入るように言いつけた。

 だがここでもルシファーのワガママが炸裂する。


「体洗うの面倒くさいから今日は入らんでええじゃろ?」

「お、お前……」


 なんというアホらしい屁理屈だろうか。こいつの精神年齢は成長が数千年も前に止まったようである。


 さすがの俺ももう我慢の限界だ。


「あーもう! 俺が体洗ってやるから来い!」

「お、そうか~! まあ、契約者としてこのくらい当然じゃがの!」

「お前俺を何だと思ってんだ……」

「ん? お前、悪魔が何故人間と契約するか分かるか?」


 ルシファーが問いかける。


「契約しないと魔法が使えないからじゃないのか?」


 これは藤導から教えてもらったことだ。悪魔は単体だと魔法が使えない。だから人間とサバトを行い魔

法を使えるようにするのだと。


「確かにそれもある。じゃが一番の目的はな……」

「お、おう……」

「契約すれば人間共に世話してもらえるからじゃ!!」


 悪魔ってのはニートみたいな連中の集まりなのか……?

 呆れて物も言えない状態の俺を気に留めることなくルシファーが立ち上がる。


「それじゃあさっそく風呂に行くとするかの! 早く来るのじゃ明日夢!」


 大きなため息をつき俺は後を追い風呂へ向かうと既にルシファーは服を全て脱いだ後だった。

 もっともその幼い見た目のせいかルシファーの裸に興奮することはない。いやあったら困るけど。

 

 髪をシャンプーでよく洗いボディソープで全身――――といっても一部は自分で洗わせたが、とにかく体を綺麗にした後ルシファーを湯船に入れる。その間俺は湯船の隣にある入口の小さい段差に腰掛けていた。


「ちゃんと肩まで浸かるんだぞー」

「分かっとる分かっとる~」



なあ 藤導よ、1つ聞きたいことがある。俺にルシファーを預けた理由、本当は面倒くさいから俺に押し付けたんじゃないのか?

今回からキャラクタープロフィールを始めました。本編で書ききれない設定や今後重要になる設定も載せるのでご期待ください。

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