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契約悪魔と魔法使い  作者: 高橋響
第二章「覚醒編」
23/126

第22話 「最凶の2人」

キャラクタープロフィール20


メフィスト・フェレス

 ・誕生日:不明

 ・好きなもの:シーフードピザ、メタル音楽

 ・嫌いなもの:レモン、じっとしていること

 ・趣味:手品

 ・特級魔法:???

 ・契約者:グレゴリー・スタイルズ

 ・長官の契約悪魔。金髪タレ目のイケメン青年だがとにかく目立ちたがりで陽気な性格が玉にキズ。

  かつてサタンと共に天界へ侵攻したためサタン及び大抵の悪魔とは面識がある。

  その後ファウスト博士とサバトを行った。長官のことはそのファウスト博士以来の逸材だと評価している。

 サタンとグレゴリーがイースター島に転送されてから、ほんの数分しか経過していない。

 しかし彼らは何時間も経ったような感覚を覚えていた。


 一瞬たりとも気を抜けない、コンマ数秒が命取り。

 死と隣り合わせのこの状況ですら、彼らは何物にも代え難い楽しさを感じている。

 まるで2人だけが別の世界にいるようだった。



 2人が辿り着いた境地、それは真の強者のみが行き着くことのできる世界。



「キ・テラー・シヌス!」


 サタンの唱えた念力魔法によりグレゴリーの体が宙に浮く。


「喰らえ!」


 そのままグレゴリーはモアイ像へ向かい吹き飛ばされた。しかし両足でモアイ像を蹴り前方へ着地する。


「良いねぇ! 楽しませてくれんじゃねぇか!」


 サタンの狂気に満ちた笑いが静かなイースター島にこだました。



(ったく、余裕ぶりやがって。こちとらその子の体を傷つけることなく戦わなくちゃいけねぇってのによ)

<大変だねグレゴリーも>


 他人事のように苦笑するメフィストに触れることなく、再びサタンへと向かっていく。


「チー・クリサ・チェイス!!」


 鎖魔法を唱えると、グレゴリーは鎖を鞭のようにし遠距離から攻撃していく。


「む……」

「つ~かまえた♪」


 鎖を攻撃のフェイントを入れることにより、サタンの腕に鎖を巻きつけることに成功したのであった。

 じわじわと鎖を引き寄せ、距離を近づけていく。


「お前一体何歳だ? こんな力ジジィには出せないだろ」

「さぁて、何歳じゃったかのう?」


 ふざけた回答でサタンを挑発する。

 もっとも当のサタンは全く気にしていないが。



「今確信したぜ、人間じゃお前が最強だ」


 サタンは腕の鎖を振りほどこうとしながらでも、嬉しそうな笑みを崩すことはなかった。


「どうかな。俺と同じくらい強い奴の心当たりはもう1人いるけどな」

「そうか、ならお前を倒してそいつも倒す!」


 腕の鎖を今までとは反対に一気に引き寄せる。


「うお!」


 その力にグレゴリーごと引き寄せられてしまった。



「喰らえ!」


 サタンはグレゴリーへパンチを繰り出す。


「させるかい!」


 グレゴリーはサタンの拳にメフィストの変形したパターを叩き付けた。

 その威力はあまりにも強烈なものであり、サタンは初めて表情を歪めたほどだ。


「ぐっ……!」


 拳を抑えながら距離を取る。


「テメェ……」

「そんじゃここいらでダメ押しといくか」


 その瞬間、グレゴリーの周囲のオーラが一瞬で変わったのをサタンも、遠くで見ていた切歌とアイラも感じ取った。

 

「ゲン・ミラン・マジル!」




 唱えられた呪文、それはグレゴリーの特級魔法。

 サタンは自分の目を疑った、それは切歌も同様だ。


「これは……!」



 彼等の目に映っている光景、それは何十人にも増えたグレゴリーだった。



「そうか、メフィストの特級魔法か」


 自らの周囲を囲む、何十人ものグレゴリーを見渡しふっと笑う。

 心の中にあるのはグレゴリーに対する賞賛、そして賛美。

 人間でありながら悪魔王と互角に渡り合える逸材と出会えたことへの、感謝。


「いくぞ!!」


 その掛け声を合図に、グレゴリー達は一斉にサタンに襲い掛かる。

 剣と体術を駆使し数多の敵を避けていくが、その数が尽きることはない。


 グレゴリーの特級魔法、それは幻覚魔法。

 この数十人のグレゴリーは本人を除き幻覚なのである。



「ったく……ディ・ショー・デリス!」

「あの呪文は!」


 サタンが唱えたのはあの時、ヴァニラの硬化魔法を解除させた魔法だ。



 その直後、数十人のグレゴリー達が次々に消えていく。


「あれはどういうことなの……?」


 切歌の問いに答えるために、槍の姿からイフリートが元へ戻る。


「あれはサタンの特級魔法だ。奴は他人の魔力を自由に操れるらしい」

「じゃ、じゃああの時のは……」


 すべて合点がいった。

 ヴァニラの魔力を特級魔法により0にし、硬化魔法を強制的に解除させたのだ。


 そうしている間にもグレゴリーの分身は次々に減っていく。


「さぁて、そろそろ尻尾を掴ませてもらうぜ」





「そんなもん分かっとったぞ」


 声が聞こえたのはサタンの真後ろだった。


「何!?」


 グレゴリーは振り向くサタンに飛びつき羽交締めの体勢で組み付く。



「あんたの特級魔法はメフィストから聞いてたんでな」

「初めから分身は囮ってことか……」


 後ろを取られたサタンは振りほどこうともがくものの、完全に組み付いたグレゴリーは離れない。



「今だ、メフィスト!」

<オーケイ!!>


 グレゴリーの合図を受けメフィストはパターの姿から悪魔の姿へと戻った。

 そして服から赤い鍵を取り出す。


「まさか……お前、何故それを!!」

「悪く思わないでくれよ、サタン!」


 そう言うとメフィストはサタンの胸に鍵を差し込む。

 鍵はサタンの胸に取り込まれていった。



「貴様らァァァァ!!」


 サタンの怒号がイースター島に響き渡る。その衝撃はモアイ像にヒビが入るほどのものだった。

 と同時に背中のグレゴリーを肘打ちで悶絶させる。


「ぐっ……!」

「喰らえ!!」


 思わず手を放してしまったグレゴリーに追い打ちをかけるように、蹴りを喰らわす。

 息が止まるほどの衝撃がグレゴリーの腹部を襲った。


「グレゴリー!! クソッ!」


 メフィストはサタンへスーパーマンパンチを狙う。

 だがサタンはそのまま後ろ回し蹴りで迎撃した。


「ごふっ……」

「メフィスト!!」


 切歌とアイラはグレゴリーのもとへ急ぐ。


「クソがァァ!!」


 うずくまりながらサタンは叫び続けている。



 倒れているグレゴリーは苦痛で表情が歪んでいた。


「長官! 大丈夫ですか!」

「ああ、ちいとアバラが折れたようだがな」


 今日は既に切歌の特級魔法は使ってしまっている。回復魔法は使えない。


「大丈夫かい、みんな?」


 口から血を出しながらメフィストが駆けつける。


「お前の方こそ無事なのか?」

「心配してくれるなんて優しいねぇ、イフリートのおっちゃん」


 イフリートの問いにいつもと変わらぬ調子で答える。


「その様子じゃ問題ないな」





「テメェら……、皆殺しだ!!」


 立ち上がったサタンの目は殺意に溢れている。それはもはや人間の目ではなかった。


「来るぞ!」


 イフリートは再び槍へと戻り、メフィストもパターへと戻る。

 グレゴリーは切歌の肩を借りながらでなければ立つことも困難であった。


「悪いね」

「いえ……」




「うおおおお!!」


 ゆっくりと歩きながら近づいてくるサタンの姿。

 その光景を見た切歌の心に生まれていた感情、それは“悲しみ”である。


 たとえサタンであっても、明日夢の姿が苦しむのを見るのが彼女には耐えがたい苦痛であった。



「クソがァァ!!」


 その言葉の後、光がサタンを包んだ。

 全員が目を閉じるほどの眩い光。





 光が収まり目を開ける。


「ルシファー……?」

「ルシファー!!」


 そこにいたのは倒れているルシファーと気を失っている明日夢だった。


「みん……な……!」


 全員が駆け寄る。


「大丈夫かルシファー?」

「何とかの……」


 口ではそう言いつつも、その顔は苦しさで一杯だった。



「櫻津君!! 大丈夫!?」


 ただ1人、切歌のみが明日夢に呼びかける。

 その声は本人には届いていない。ただただ空しく響き渡るだけだった。


閲覧ありがとうございます。

久々に主人公が復活です(笑)


劇中メフィストが使った鍵、あれはとある悪魔が関係しているのですがそれは次回明らかになります。

それと同じくメフィストが使おうとしたスーパーマンパンチは一見ギャグみたいな名前ですが実はこれ、実際に総合格闘技やプロレスで使われている技です。興味がある方は是非動画サイト等でご覧になってみて欲しいです。



来週から冬休みに入るため更新ペースが少し落ちるかもしれません。

ご了承ください。


それでは次回もよろしくお願いします<(_ _)>

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