表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
契約悪魔と魔法使い  作者: 高橋響
第二章「覚醒編」
22/126

第21話 「覚悟と意志」

キャラクタープロフィール19


グレゴリー・スタイルズ

 ・誕生日:6月1日

 ・好きなもの:チーズバーガー、自由な時間

 ・嫌いなもの:青汁、仕事

 ・趣味:ゴルフ

 ・特級魔法:???

 ・契約悪魔:???

 ・第94代魔法省長官。年齢は不明だが既に還暦は超えている模様。

  自由奔放でよく仕事をサボってはアイラに怒られている。

  しかし魔法使いとしては最強の部類に入り誰もがその実力を認めている。

「お前が俺の相手だと?」


 グレゴリーを前にしたサタンは、より鋭い目つきで問いかける。


「おお。ジジイだからってガックリしたかい?」


 笑いながらグレゴリーが答える。

 その顔には不安、畏怖、心配といったものは一切なかった。


「いや、お前タダ者じゃねぇだろ。そんくらい分かる」

「ご名答!」


 そのやりとりは周囲の人間にとって楽しんでいるようにも見えた。



「なぁサタンさんよ、その体はその子のもんだろう? 大人しく返してくんねぇかい?」

「俺が頼まれて素直に答えると思うか?」


 頭を掻きながら困り顔でグレゴリーが頼み込むものの、当のサタンは全く取り合わない。


「どうしてもってんなら力ずくで来い」

「まぁ、結局こうなるわな」


 ため息をつき腕を大きく回す。



「レオン、ここは任せたぞ! アイラ、その子達をすぐ病院へ連れて行け!」

「あいよ」

「了解です」


 各々が答えた後、サタンが首を鳴らす。

 それは戦闘準備は完全に済んでいることを表していた。


「さて、それじゃ始め――」

「その前に!!」


 右手の掌を前に突き出しサタンの言葉を遮る。


「何だ?」

「2つ頼みがある。1つは場所を変えよう。もう1つは是非とも私の契約悪魔を紹介したいんだが……良いか?」


 お願いするように両手を合わせる。


「ふむ……、2つ目はともかく場所ねぇ」


 サタンは口に手を当て考える。




「長官って契約悪魔がいたんスか?」


 仰向けに寝転がった状態で話を聞いていたヴァニラがアイラに聞く。


「ええ、そんなことよりあなたは大丈夫?」

「たぶん鼻が折れたッス……」


 止まることのない鼻血がそれを物語っている。


「アイラ様、私は先に病院へいかせてもらいます」


 切り付けられ重体のシャーロットを抱えたヴィネは明らかに冷静さを失っていた。


「待って、魔法省に医者の準備をさせてあるわ。私が連れて行きます」

「アイラ、ここは俺が見てる。早くそのを連れていけ」


 レオンにこの場を託しアイラ、シャーロット、ヴィネは転送魔法で魔法省へ転送していった。


「ヴァニラちゃん、もうちょっと待ってくれ」




 その時だった。


「う……」

「切歌様!!」


 気を失っていた切歌が目を覚ましたのである。


「おい、大丈夫か!?」

「……ローベルト……さん……?」


 視界も意識も完全にはハッキリとしていないものの、レオンを認識することはできた。



「じっとしてろ! すぐに医務室へ連れてってやる!」

「櫻津君は……?」


 意識とともに気を失う前の記憶を取り戻してきていた。

 そして彼女が一番に気にかけたのは他でもない、サタンと化した明日夢のことであった。


「あいつならサタンから救うためジイさんが戦ってる」


 レオンは後方のサタンとグレゴリーを指さす。


「長官!」


 切歌は戦闘用のスーツに身を纏うグレゴリーの姿を見るのは初めてであった。その衝撃と、今もなおサタンに乗っ取られている明日夢とルシファーの姿が先ほどまで彼女を襲っていた恐怖と悲しみを再発させた。


(櫻津君……、ルシファー……)



 同時にアイラが再び魔法省から転送してきた。


「2人共、早く魔法省へ――」

「私は残ります」


 立ち上がりながら切歌はアイラへ伝える。

 その言葉には固い意志があった。


「切歌様!?」

「何を言ってるの!? あなたも早く治療を――」

「私は大丈夫です。それよりもヴァニラをお願いします」


 切歌の目はもはやサタンとグレゴリーにしか向けられていない。


「冗談はよしな。お嬢ちゃんにゃできることはねぇよ」


 レオンの言葉は冷たく突き放すような言い方だが、実際には切歌を想っての言葉である。


「レオンの言う通りよ、ここは長官に任せて――」




「私は櫻津君をこの世界に引き入れた張本人です。でも私は彼を守れなかった……」


 俯きながら拳を強く握る。


「だから私が途中で逃げることはできません!!」


 

 その言葉でレオンもアイラも切歌の意志の強さを感じ取った。


「アイラ、お前はヴァニラちゃんを連れていけ」

「レオン!?」


 レオンはそのまま切歌の肩に手を置く。


「俺が付いてれば大丈夫だろう」

「ローベルトさん……、すみません」


 レオンは黙ってただ首を横に振る。


「分かったわ、行きましょうヴァニラちゃん」

「切歌様……」


 不安が拭い切れたわけではなかったがレオンの存在、そして切歌の意志がヴァニラの不安を和らげた。





「いいだろう、ここは戦うには狭すぎる。お前の言う通りにしてやるよ。で、その悪魔はどこにいるんだ?」


 サタンは不気味な快楽感を覚えていた。


「なんつーか、目立ちたがりな奴でな、登場も派手にしたいらしい」



「ほう、そりゃ楽しみだ」


 サタンが感じている高揚感をグレゴリーも感じていた。


「来い…………メフィスト・フェレス!!」

「メフィスト・フェレスだと?」


 グレゴリーの掛け声を合図に、遠くから微かに聞こえる声が段々と大きくなっているのが分かった。







「イーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッツ! ショーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーゥタァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーイム!!」




「何だ!?」


 近くのビルの屋上から叫びながら飛び降りてくる人影。

 その人影は見事にグレゴリーの隣に着地する。


「ローベルトさん、あれが長官の?」

「ああ、奴の名はメフィスト・フェレス」


 メフィストは赤と黒のチェック柄のスーツとソフトハットという派手な服装、見た目は20代ほどの若さ、金髪、ハットの下には2本の角とタレ目という容姿である。



「久しぶり~サタン!」


 異様なほど明るいメフィストのペースに飲まれることなく、サタンは冷静なままだ。


「まさかお前が人間に付くとはな、メフィスト」

「いや~、マイバディが気に入ってんだよね俺。彼は紛れもない、ファウスト博士以来の逸材だよ」


 久しぶりという言葉では表しきれないほど長い年月を経て再会した2人であったが、そこに気まずさはなかった。



「さて、場所を移すんだっけか? どこへ行くんだ?」

「うむ、俺が連れて行こう。メフィスト!」

「オーケイ、マイバディ‼︎」


 グレゴリーの掛け声と同時にメフィストが光に包まれ、その姿を変える。

 赤と黒の光に包まれた後、グレゴリーの手にはメフィストが変形したパターが握られていた。


「行くぞ、レ・テン・テレイル!!」


 グレゴリーとサタンは転送魔法により別の場所へ消えていった。

 この時、敵の残党の多くが確保されていたがもはやそのことは切歌とレオンの頭にはなかった。


「2人はどこへ……」

「アイラなら知ってるはずだ。あいつ戦闘場所の確保を言い渡されてたしな」


 その言葉を言い終えるとほぼ同時にアイラが転送してきた。


「ヴァニラちゃん達は?」

「魔法省の医療スタッフに任せてある。命に別状はないそうよ」


 アイラの言葉を聞いた切歌は安堵のため息をつく。



「安心するのは早いわ。長官はもう転送したの?」

「ああ。お前ならジイさん達がどこへ行ったのか知ってるだろ?」

「イースター島よ」


 レオンは周囲を見渡し、横浜の現状を確認する。


「アイラ、ここの後始末は俺がやっとく。お嬢ちゃんを連れてってやれ」


 既に戦闘は終わっていたが、このままでは人間達に魔法を知られかねない。

 そのために周囲の監視カメラ等は一つ残らず破壊しなければならないのだ。


「分かった、ここは任せるわ」


 サムアップをしレオンはその場から移動していった。


「行きましょう」

「お願いします」


 アイラが呪文を唱え、転送魔法の光が2人を包む。





「ここは……」


 目を開けた切歌の隣にはモアイ像。間違いなくイースター島である。


「長官はどこに――」





「チー・クリサ・チェイス!!」


 鎖魔法を唱えた声の主はグレゴリーだった。


「あそこよ!」


 視線の数十メートルほど先に鎖に巻きつかれたサタン、そしてサタンに向かっていくグレゴリーの姿。

 その動きは、グレゴリーの見た目からは到底考えられないような俊敏さである。


「うおらぁ!!!」


 鎖が巻きついた腹部に蹴りを喰らい、サタンは後方へ倒れこむように吹き飛ぶ。

 鎖が巻きついたまま倒れたサタンは微動だにしない。


「やったの……?」










「おい、狸寝入りはよせ。あんたの実力はそんなもんじゃねぇだろうが、悪魔王さんよ!!」


 グレゴリーがその言葉を言い終えるとサタンはヘッドスプリングで立ち上がり、力ずくで鎖を引きちぎる。

 その顔は依然として不気味な笑みを浮かべていた。


「さすがにバレるか」

「当たり前だろうが、馬鹿にしやがって」


 既に2人の意識は何物も入り込むことのできない世界と化している。

 いつの間にか切歌とアイラは言葉を失うほど見入っていた。



「ったく、年寄りは労われよ……と言いたいんだが」


 グレゴリーは言葉を途中で止めニンマリと笑う。


「あんたの方が年上だっけか?」


 同じようにサタンも笑い答える。


「違えねえな!」


 2人は笑った、戦いの最中とは思えぬほどの声で。





「そんじゃあ……いくぜ、クソジジィ!!」

「来いよ、クソガキ!!」

閲覧ありがとうございます。


新キャラのメフィスト・フェレス、いかかでしたでしょうか?前々からこういったタイプのキャラを味方として出したかったのでかなり力を入れてます。といっても今回は顔見せですが。

覚えている人がどのくらいいるか分かりませんが6話で長官が初登場した時に持っていたパター、あれはメフィストです。6話の時点でメフィストの設定は完成してたのでかなり時間が経ってからの登場となってしまいました。

パイモン同様にやっと描けたって気分ですね。


豆知識ですがメフィストのセリフに出てくるファウスト博士はファウスト伝説においてメフィストを呼び出したとされる有名な人物です。神話好きな方なら大体の方が聞いたことある名だと思います。



次回はサタンVS長官のガチンコバトルです。何卒よろしくお願いします。

感想、評価、レビュー大歓迎です。質問等も感想で承りますm(__)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ