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契約悪魔と魔法使い  作者: 高橋響
第二章「覚醒編」
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第20話 「悪魔王サタン」

今回はキャラクタープロフィールはなしです。一応ここに出てきていないキャラもいますが今後の展開のために温存しておきます。


それでは本編をお楽しみください<(_ _)>

「俺は悪魔王サタン。神をも超える存在」



 その言葉に皆恐怖し、混乱した。

 目の前にいるのは間違いなく明日夢だが、その中身は明らかに別人だ。



「悪魔王……サタン……」


 周囲は水を打ったように静まり返る。


<サタンだと!? まさかあの小僧、サタンを覚醒させたってのか!?>


 べリアルの焦りが戦極にも手に取るように伝わっている。

 11年一緒にいて、ここまで動揺しているべリアルは初めてだ。


「おいべリアル、サタンってのは何なんだよ!?」

<堕天使ルシファーのもう一つの人格だ! 悪魔を率いて天界に侵攻した後、封印されたと聞いていたが……>


 悪魔でその名を知らぬ者はいない。サタンの絶対的恐怖を前に、べリアルは処刑鎌デスサイズの姿でありながら背スジの凍る思いであった。



「2人は……櫻津さんとルシファーさんはどうしちゃったんですか!?」


 シャーロットの叫びにも近い問いかけに、笑みを浮かべたままサタンは答える。


「櫻津ってのはこのガキか? こいつは良いモン持ってやがるぜ。ガキのくせに相当な量の魔力だ」


 舌舐めずりするサタンを見て、その場の全員が最悪の予感を感じた。


「そ、そんな……」

「ルシファーは!? ルシファーはどこへ行ったの!?」


 完全に冷静さを失った切歌が問い詰める。

 その様子はいつもの彼女ではなかった。


「ルシファーならここにいるぜ。この俺自身がな」


 サタンは親指で自らを指さし笑う。


「何をふざけたことを――」

「嘘じゃねえぜお嬢ちゃん」


 戦極が横やりを入れる。


「べリアルの話じゃ、こいつはルシファーのもう一つの人格らしい」

「な……!」


 それはルシファーと付き合いの長い切歌とヴァニラですら知らなかった事実であった。



「ヴィネは知ってたの?」

<……ええ……>


 シャーロットの問いに静かな声で答える。それはあまりにもか細い声だった。


「じゃあ……ルシファーさんと櫻津さんは……」


 3人は完全に絶望へと陥った。

 ただでさえ理由も分からぬまま明日夢がサタンになり、その上ルシファーを失ったのだ。



「おい、サタンさんよ」


 戦極が口を開く。


「あんたつええのか?」

<よせ戦極!!>


 べリアルが引き止めるものの、戦極は全く気に留めていない。



「お前、さっきべリアルと言ってたな。まさかその処刑鎌デスサイズがべリアルなのか?」

「だったらなんだってんだ?」


 臆することなく戦極は答える。

 いや、最初はその力に畏怖していたが今は違う。それ以上に彼の中で勝っていたもの、それは“強者と戦いたい”という戦闘欲だった。


<馬鹿野郎! 逃げるぞ戦極! お前じゃ……いや、誰も勝てねえよ!>


 つい数分前までとは完全に別人のようだった。

 悪魔の中でも上位の強さを持つべリアルがここまでの恐怖を見せるのは異常事態だが、戦極の耳にはもはや届いていない。


「面白い……久々に遊んでやるよ、べリアル!」

「行くぜ! ファ・ソーク・ドライブ!」


 いきなり特級魔法を唱え加速状態に入る。



「ガンガン行くぜぇ!」


 加速状態のままサタンの後方へ周り、処刑鎌べリアルでサタンを切りつけにかかる。

 加速により攻撃の威力も上昇するため、当たれば一瞬で終わるだろう。



「櫻津君!!」



 だが次の瞬間、サタンは振り返りもせず剣で処刑鎌べリアルを防ぐ。


「なんだと!?」


 その光景に戦極も切歌達も驚きを隠せない。



「こんなもんかよ? テメェの力は」


 鋭い眼光で睨みつけるサタンを見た戦極は、これまで感じたことのない最大級の恐怖感に包まれた。


(なんだコイツは……!?)



 その時、処刑鎌べリアルが元の悪魔の姿へと戻った。


「サタン、ここは俺達の負けだ……降参するよ」


 両手を挙げ降伏を示す。


「随分堕ちたもんだな、べリアル。俺はそんな弱者には用はねえ」


 弱者と呼ばれる屈辱を唇を噛みしめることで耐え、戦極に撤退を促す。


「帰るぞ」

「……ざけんじゃねぇぞ……!」


 戦極は未だに闘志を失ってはいない。だがここは圧倒的に不利だ。


「サタン、次に会った時は俺が勝つ!」


 そう言い残しべリアルと共に転送魔法で消えていった。





「さて、俺の相手をしてくれるのはお前らか?」


 サタンは3人の方を向く。


「ど、どうしましょう……」


 シャーロットは既に恐怖に囚われていた。

 頭では平静を保とうとしても、全身の震えが止まらない。



「来ねえのか? ならこっちから行くぜ? キ・テラー・シヌス!」


 そう言うと後方で戦いを続けていた敵の残党と、魔法省のエージェント達を念力魔法で吹き飛ばした。

 その威力はどう考えても下級魔法ではない。


「そんな馬鹿な!」

「下級魔法があの威力なんて……」


 3人は今初めて実感した、悪魔王サタンの恐ろしさを。



「ヴァニラ! シャーロット! 構えて!」


 このような状況だからこそ自分がしっかりしなければならない、そう頭で理解していた切歌が声を震わす。本心では彼女自身も恐怖に屈しそうになっていたのだが。


「まずはお前だ」

(マジッスか……)


 サタンはヴァニラへ向かう。


「危ない!」


 シャーロットがすかさず弓矢を放とうとする。



 だが手が震え狙いを定めることができない。


<シャーロット!!>


 その理由は2つ。

 1つはサタンの恐怖、もう1つは乗っ取られているとはいえ明日夢の体を傷つけることができないからであった。



「さあて、楽しませてくれよ!」

「ヴァニラ!!」


 サタンの剣の腕は完全に一流であった。

 反対にヴァニラはシャーロット同様、明日夢の体が枷となり反撃できずにいる。

 とはいえサタンの剣術はヴァニラにとって反撃と回避、両立など到底不可能な攻撃であるが。



「マ・テイル・タリカ!」


 硬化魔法を唱え硬化した体でサタンに組み付く。

 硬化状態であれば簡単には抜け出せない。


「硬化魔法とはな、面白い!」


 サタンは変わらず余裕の笑みを浮かべている。


「2人共、今ッス!」


 その一声で切歌が刀を捨て走り出す。彼女もまた明日夢を傷つけたくない思いがあったからだ。


(ごめんなさい櫻津君! すぐに助けるから!)




 その時、サタンは小さな声で唱えた。

 サタンの特級魔法を。


「ディ・ショー・デリス」


 その瞬間、ヴァニラの硬化が解除された。


「な……!」


 サタンは力ずくで腕を抜き、ヴァニラの顔面にパンチを繰り出す。

 強烈なパンチを受けヴァニラは数メートル近く殴り飛ばされた。


「ヴァニラちゃん!」

「ヴァニラ!」


 サタンはそのまま切歌のハイキックを素手で受け止め、水面蹴りの要領で足を崩す。


「くっ……!」

「中々楽しませてくれるねぇ、お前ら」




 刹那、サタンの足に矢が飛んできた。

 サタンはその矢を素手で掴みへし折る。


「次はお前か?」


 シャーロットの目にはもう恐怖は消えていた。


「よくも……よくも!」

「来いよ」


 再び矢を放つ、そして彼女も唱えた。


「フィ・ケイ・カーズ!」


 先ほどとは比較にならない速度で飛んでくる矢を避ける。


「面倒だな……レ・テン・テレイル!」

「何!?」


 この状況で転送魔法を使われるのは不利である。

 もしこのまま逃げられたら追うのは不可能に近い。



「シャーロット、後ろよ!!」


 立ち上がった切歌の声に反応しすぐさま振り返ると、真後ろに転送魔法の魔法陣と共にサタンが現れた。


「そんな……」


 この距離では弓矢は使えない。

 完全なサタンの作戦勝ちである。


「喰らえ」


 サタンは剣でシャーロットを切りつける。


<シャーロット!!>

「う……あ……」



「さて、これで終わりだな」


 剣を大きく振りかざし倒れたシャーロットにとどめを刺しにいく。


<シャーロット!!>







「テメェ……」


 サタンを止めたのは、抱き付き動きを封じている切歌であった。


「離せ」

「もう止めて……」


 その声は風前の灯という比喩がよく似合うほど弱々しいものだった。




「邪魔だ娘!!」


 サタンは片手で切歌の首を絞める。

 その力は素手の人間、まして女子高生程度では到底太刀打ちできるものではなかった。


「が…………!」

「貴様から殺してやろう、娘」


 サタンは徐々に絞める力を強くしていく。

 次第に遠のいていく意識の中で、彼女は死を覚悟した。


「切歌様……!」

(ごめんなさい……櫻津君……!)








「ファム・ファイン・フレイア!!」


 その呪文が唱えられると同時にサタンを炎が襲う。

 同時に切歌が手から引き離された。


「何者だ!!」



 突如として現れたのは透明化魔法を解き切歌を抱きかかえたレオンと、元の姿に戻りシャーロットを抱えたヴィネだった。

 そして後方には白の戦闘服に身を包んだアイラが炎を放ち続けている。


「誰だテメェら……」

「アイラ、2人共助けたぜ!」


 その言葉を聞き、アイラは火炎魔法を止める。

 2人を抱えたままレオンはヴァニラのもとへ向かう。


「ローベルトさん……」

「動かなくていい。そこで休んでな」


 切歌をそっと地面に寝かせサタンの方を向く。



「2人は?」

「生きてるぜ、怪我はしてるけどな」


 4人から離れたレオンはアイラのもとへ行き状況を話す。


「お前ら、かなり面白そうだな」


 戦闘狂と化したサタンを前にして、レオンもアイラも何とも言い難いものを感じていた。


「あの野郎、本当(マジ)にサタンなのかよ」

<私も初めて見ましたが……、やはり信じがたいですね>


 アルプは冷静さを保ってはいるが、伝説級の悪魔サタンの存在に妙な高揚を覚えている。



<まさかあの小僧がサタンになるとはな>

「とはいえ信じるしかないでしょう、この状況じゃ」


 イフリート同様、アイラも本心では明日夢がサタンと化したことを信じ切れずにいた。だが目の前のこの状況を見てしまった以上、信じざるを得ない。




 サタンは両指を鳴らし剣を構える。


「さて、第3ラウンドといくか」

「いや、お主の相手はこっちだ」




 道の向こうから歩いてきた声の主、それは動きやすいように改良されたスーツを身に纏ったグレゴリー長官であった。


閲覧ありがとうございます。

久しぶりに長官が登場しましたが次回、初めて戦闘します。

こういう強いジジィキャラって結構好きです。


今回はレオンとアイラが初めて絡みましたがこの2人の絡みは前から描きたかったのでようやくやれたなって感じです笑

メインメンバーが皆高校生なので今の2人は“大人の代表”として描いてます。いつもはルシファーにその役目をさせているのですが現状不在なので。

アイラは当初はただの秘書官に過ぎなかったのですがイフリートを登場させるために契約者となってもらいました。話を進めていくうちに段々好きになっていき今では私のお気に入りの1人です。


前回も触れたように次回新たな悪魔が登場します。

読んで下さっている皆さんに私のキャラはどう思われているのかと思うと不安ですが1人でも好きになってもらえたら嬉しいです。


それでは次回もよろしくお願いします。

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