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契約悪魔と魔法使い  作者: 高橋響
第二章「覚醒編」
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第18話 「11年越しの復讐」

キャラクタープロフィール17


戦極雅人せんごくまさと

 ・誕生日:4月29日

 ・好きなもの:パエリア、魔法を使った殺人

 ・嫌いなもの:抹茶、偽善者

 ・趣味:ギター

 ・特級魔法:???

 ・契約悪魔:べリアル

 ・謎のテロ集団所属の魔法使い。組織の中でも地位は高く魔法省においては第一級指名手配犯(もっとも顔も名前も知られておらず処刑鎌のみが手がかりであったが)である。

  人の命を奪うことに何の躊躇もない冷徹な性格。その上常に飄々とした態度で接しており明日夢をイラつかせている。

  11年前に明日夢の両親を事故に見せかけ殺害した張本人。

  サバトを行ってから長いため実力は高い。

 夜でも人通りの多い横浜のとある道で、人々はその光景を見た。


「何だあれ?」

「映画の撮影じゃね?」

「おい、あいつら何かの武器持ってるぞ!?」


 彼らの目に映っているのは対峙する巨大な処刑鎌(デスサイズ)を持った男と剣を持った少年、そしてその周りで起こっている戦闘であった。


「うわああ!!」


 その戦闘の中にいた数人が彼らに狙いを定める。

 恐怖でその場から逃げだすが、簡単に先回りされ囲まれてしまう。何の力もない人間には抵抗することもできない。


「よしよし、奴らが来る前に遊んでおくか」


 男は手にナイフを持ち不敵な笑みを浮かべ話す。


「な、何なんだお前らは!」


 わずかな勇気を振り絞り男性が震える声で問いただす。

 だが魔法使いにとってそれは“勇気”ではなく“無謀”である。 


「さぁてね? あの世で神様にでも聞いてみな?」


 手のナイフを振りかざすと、周囲の仲間達も同様に各々の武器を持った手を高く上げる。

 それは死刑宣告も同然であった。

 死を覚悟した彼らは目を閉じる。


 だが次の瞬間に聞こえてきたのは、今の今まで自分達を殺そうとしていた者達の予想だにしない声だった。


「うっ……!」

「何だこいつ……うわ!」


 恐る恐る目を開けると映っていた光景、それは屈強な男達を素手で倒していく銀髪の少女の姿。そしてどこからか飛んでくる矢が、男達の腕や足に次々と刺さっていくというものであった。最早漫画や映画の世界に連れてこられたような感覚だ。


「夢でも見てんのか……?」


 その台詞から数十秒で少女は敵を全て倒してしまった。


「みなさん怪我はないッスか?」

「大丈夫だけど......き、君は一体?」


 それは恐怖ではない、感謝から出た言葉である。


「いやぁ、名乗るほどの者じゃないッスから」


 特に表情も声のトーンも変わらず答える。


「それより早くここを離れた方がいいッスよ。向こうまで行けば安全ッス」

「……ありがとう!」


 その場にいた全員が目に涙を浮かべ感謝を述べる。

 名前も知らない少女だが、彼らにとっては命の恩人なのだ。


「じゃあ、お気をつけて」


 全員を避難させた後、持っていたトランシーバーで連絡を取る。


「大方は避難させましたけど、建物内に何人か残ってるっぽいッス」

『了解。今から援護へ向かいます』


 通信を終えたすぐ後、目の前に転送魔法の魔法陣が出現する。

 転送されてきたのは屋上から矢を放っていたシャーロットだった。


「櫻津さん達は?」

「まだ動きなしッスよ。まあルシファーさんとパイモンさんもいるし大丈夫でしょう。……っと、私達も人のこと気にしてる場合じゃないみたいッス」


 新たな敵が数十人で2人に襲い掛かる。


「もうすぐ魔法省から助けが来るらしいッスから。それまで頑張りましょう」

「うん!」


 2人は背中合わせで臨戦態勢を取る。

 明日夢達のことは心配ではあったが、2人共理解していた。

 “今やるべきことをやる”と。


 ◇


 息を深く吸い深く吐く。頭を冷静にし剣を構える。


「いくぜ戦極!」


 それに応えるように戦極はニンマリと笑う。


「いつでも来なよ」



<気をつけろ明日夢、べリアルの特級魔法は私達にとって最悪の相性じゃぞ>


 最悪の相性? どういうことだ?


「おい、それってどういう――」

<馬鹿! 敵から目を逸らすな!>


「イ・リーブ・エリッド!」


 しまった。一瞬でも敵前で気を抜いてしまうとは致命的な失態だ。やらかした!

 液状化魔法で俺の足元の道路がドロドロの状態へ変わっていく。


「クソ!」

「おいおい、どうしたんだい?」


 あの野郎、余裕ぶって笑ってやがる!

 一刻も早く抜け出さないとマズい!


「さあて、もう終わりになっちゃうのかな!」


 処刑鎌べリアルを振りかざしこっちに向かってくる。このままじゃ確実に死ぬぞ。


 こんなとこで終わってたまるか!



「チー・クリサ・チェイス!」

「ほう……」


 俺は鎖魔法を唱えた。それも上空に向かって。

 俺の手から出現した鎖は、俺の真上にある信号機に巻きつく。


「うおらぁぁ!」


 鎖を手だけで登り、液状化魔法から脱出した。

 そして振り子のような揺れを利用し、戦極に向かって蹴りを繰り出す。


「おっと!」


 さすがに蹴りは避けられた。

 まあ俺自身あれで終わるとも思ってないが。


「へぇ、意外にやるじゃない」


 ナメ腐りやがってこの野郎。

 とはいえ今のは俺のミスだしな。


<今度はこっちからいくぞ!>

「おう!」


 ルシファーを強く握り戦極へ向かい走り出す。


「キ・テラー・シヌス!」


 念力魔法で奴の近くにある店のガラスを破壊し戦極に飛ばす。

 かなりの勢いで飛ばしたので、速度は非常に速い。心臓を狙えば普通に殺せるレベルだ。

 もっとも俺は足元と腕しか狙っていないが。


「喰らいやがれ!」

「甘いねぇ!」


 そう言うと処刑鎌べリアルを高速で振り回し全てのガラスを弾き飛ばした。


「嘘だろ……」


 どれだけ戦えばここまで自由自在に使いこなせるんだ。

 俺は念力魔法が破られたことによりもう一度距離を取る。


「さあて、今度は俺のターンだな」


 ヤバい、何か来る!

 戦極から発する殺気が一段と強くなったのを本能的な何かで感じた。




「ファ・ソーク・ドライブ!」


 何の呪文だ?



「え……」


 次の瞬間、戦極は俺の目の前から姿を消していた。

 姿を消す魔法か?



<明日夢、右に飛べ!>


 声に反応し反射的に右に飛んだ。



 刹那、俺の左腕が切り付けられた。幸い傷は浅く戦えなくなるほどではなさそうだ。


「ぐっ……!」


 倒れこみ顔を上げるとさっきまで俺が立っていた場所に戦極がいた。


「ほう、避けるとはやるじゃない!」


 そう言いながら処刑鎌べリアルを振りかざしてくる。

 何て野郎だこいつ!

 人を殺すことに何の躊躇もないのは分かっていたつもりだったんだが……。


「うおっ!」


 座り込んだ体制のまま処刑鎌べリアルを避ける。


「往生際が悪いねぇ!」

「生憎な!」


 そんなやり取りをしてはいたが、俺の方が圧倒的に追い込まれてる。

 何とかしなければ。


「クソッ!」


 俺は無我夢中で戦極の足に絡みつく。

 処刑鎌べリアルはリーチが長い分組み付かれると何もできないはずだ。


「チッ! 考えたねぇ」


 ざまあみろ!



 と思ったのも束の間、顔面に膝を喰らってしまった。

……!」


 距離がなかったのでダメージは少なかったが、戦極はそのまま距離を取り離れる。



「さて、もういっちょいくぜ。ファ・ソーク・ドライブ!」


 まただ、奴の特級魔法。

 ならこっちもやるしかないだろ。

 正直まだ使いこなせてはいないけど、他に方法はねえんだよ!


「トー・クロウ・ルシフ!!」


 俺の特級魔法により俺以外の全ての時間が遅くなる。

 周囲の敵も、信号の点滅も、そして奴も――――。





「遅くなるとでも思ったかい?」

「なっ……」


 何故だ、奴は俺の特級魔法に対し普通に動けている。

 どういうことなんだ!?



「おいルシファー、これは一体……!」

<あれがべリアルの特級魔法じゃ。やつの魔法は加速魔法>


 加速魔法だと? だから奴は今まで通りに動けるということか。


 あの時ルシファーが言った相性が悪いという意味、それを今ようやく理解した。

 通じないんだ! 俺の特級魔法が!


「どうよ、これが俺の特級魔法さ。って言っても今は打消しされちゃってるけど」


 さっきいきなり俺の後ろに現れたのはそういうことか……!




「あれ?」


 しまった、特級魔法が切れた!

 使いこなせていないのに使ったのが響いたか。


「ヤベ――」

<後ろじゃ!>


 後ろと聞いてすぐに振り返りながら前方へ飛ぶ。



 が、遅かったようだ。

 左足を思いっきり切られてしまった。


「がっ……!」

<明日夢!>


 痛え……! 足をやられちまった! 血も止まらねえしこのままじゃマズい……!

 間違いなく殺される!



「あーらら、こりゃ決まりかな」


 チクショウ、この野郎余裕ぶって見下してやがる!!

 悔しさと恐怖が入り混じって体が震え始めた。





「警察だ! 大人しく投降しろ!」


 警察が来てくれたのか。助かっ――。


「うっせえな……おい!」


 その一言で周囲の仲間が一斉にパトカーに攻撃し始めた。


「や……めろ……!」


 こいつ狂ってやがる!


「じゃあ、これで終わりだね!」


 処刑鎌べリアルを大きく振りかぶる。

 これはもう避けれねえな。


 みんなすまねえ、あとは頼む!

 情けないと思いながらも死を覚悟し目を閉じる。





「……あれ……?」


 生きてる? あいつが見逃がしてくれるはずはないが……。


「櫻津君!」


 遠くから聞こえる声の方を見ると転送魔法で来た藤導がいた。


「藤導、なんで来ちまったん……だ…………」



 なんだよこれ、何でこうなってんだ?





 何故俺が生きているのか、この光景が全て表している。 

 前を向いた俺の目に映ったのは、両手を大きく広げ処刑鎌べリアルで胸を貫かれているパイモンの姿だった。


「パイモン……」

<パイモン! パイモン!>



 消滅していくパイモンが最後に見せた顔、それは血に塗れた笑顔だった。

読んでいただきありがとうございますm(__)m

パイモンは連載開始前から考えていた“ドMな男の娘”というキャラクター像に実際に男の娘設定のある72柱のパイモンを合わせたキャラでした。第2章に入ってやっと書けたのですが今回、ストーリーの都合上退場となります。ちょっと残念ではありますがまぁ仕方ないのかなと割り切ってみたり。


次回は第2章のサブタイトルの意味が明らかになります。というか重要な回ですので読んでいただけたら幸いですm(__)m


後書き機能を利用してこんな感じのウラ話なんかもしていきたいと思います。

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