第122話 「最後の魔法」
裏設定
ルシファーの強さ順位
天使ルシファー=サタン>堕天使ルシファー
となっております。
「これが俺の……最後の特級魔法だ」
これが最後、これで決める。俺の人生を歪ませた運命を俺は断ち切る。
「やめろおお!!」
奴は俺を妨害しようとこちらへ向かってくる。だけど俺には眼中になかった。
仲間達の声が届いていたから。
「行って!!」
「櫻津さん……!!」
「決めてください……!」
あいつら、意識が戻ったのか。ありがとよ、しっかり届いてるから。
背中を押してもらったんだ、それに応えないとな。
<さあ、唱えましょう>
「ああ」
自然と笑みがこぼれる。慢心したわけじゃない。けど出ちまったんだ。
「トー・クロウ・ルシフ」
全ての時間が遅く――いや、これは……!
「止まっている……?」
信じられないが、時間が止まっていた!
これが天使のルシファーの特級魔法なのか!
<これが私の本来の力です>
「……さすがだな、熾天使」
「櫻津君」
この声は……。
すぐさま声のした方へ視線を向ける。
「藤導……なんで?」
なぜだ? 時間が停止した中で唯一藤導だけは変わらず動いている。
「多分これのおかげ」
そう言って彼女はエクスカリバーを見せてきた。
そうか、エクスカリバーで特級魔法を無効化しているんだ。
「なるほどね」
<さすがですね>
っと、そうこうしているうちに時間は過ぎていく。早く決着を付けないと。
俺は大剣を担ぎ奴の方へ向かおうとする。
しかし――。
「待って!」
「……どうした」
藤導は俺を止める。
何の理由があるのかは分からないが、その眼には決意が漲っているのが分かった。それも並々ならぬものが。
「……私が決着をつける」
「おい……」
そんなことできるのか? 相手はたった一人の家族なんだぞ?
そんなことをさせるのは本人にとっても俺にとっても辛い。だから俺がやるつもりだった。
なのに……。
「できるのか?」
「……私がやらないといけないのよ」
そう言った彼女は強気な口調だった。けど俺はしっかり見ている。震える手を、悲しい瞳を。
無理しやがって。
俺は一つの決断をした。
地面に大剣を思い切り突き刺す。
「……すまねえルシファー。せっかく天使の力取り戻したってのに、剣として使ってやれなくて」
<いえ、素晴らしい選択だと思いますよ>
「何を?」
そのまま俺は藤導のエクスカリバーを掴んだ。
「俺も一緒にやる」
「えっ……?」
突然の申し出に困惑しているようだ。
悪いけど、俺も譲れねえ。
「お前一人にそんな辛い思いはさせない。俺も半分支える」
「櫻津君……! でも……」
必死に涙を堪えているみたいだった。そんな彼女に俺はそっと首を振る。
「これから先、辛いことは俺も背負う」
「……ありがとう……!!」
彼女にそっと微笑む。
そして俺達はぎゅっとエクスカリバーを握った。触れ合う手が、いつもより暖かく感じるのはなぜだろうか。
「いこうぜ」
「はい」
俺達はエクスカリバーを振り上げ、そのまま一気に振り下ろした。
奴の胸部に傷が付く。
これで、ようやく終わる。いや、本当に始まるんだ。
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完結まであと3回です。
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