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契約悪魔と魔法使い  作者: 高橋響
最終章
100/126

第99話 「託されたもの」

 高まっていく緊張感の中でも一切の動揺は見せていない。

 それは即ちアイラの集中が極限に達していたことを表している。


(とはいっても魔法は通じない……)


 エクスカリバーの存在があるかぎり魔法は意味を成さない。

 アイラもイフリートも、そこに苦戦していた。


「さて、エクスカリバーの力はここからが本番よ!」


 モリガンは地面にエクスカリバーを突き刺す。

 その直後、アイラの足元の地面から強大なエネルギーが溢れ出す。


「なに!?」

<避けろアイラ!!>


 地面は粉々になり、巨大な穴が空いている。

 火山の噴火を思わせるほどの攻撃を喰らい、アイラは数メートルの距離を吹き飛ばされた。



「が……!」

<アイラ!! しっかりしろアイラ!!>


 既に体中傷だらけになっている。

 動くだけでも全身に痛みが走った。


「悪いけど、ここで死んでもらうわ。ま、あのジジイと会えるなら本望でしょ?」


 エクスカリバーを手に、モリガンが近づいてくる。

 その冷酷さ極まりない表情がイフリートの憎しみを増大させていた。


<貴様……!!>



「残念だけど――」


 苦しさを押し殺し、アイラは口を開く。



「私はまだ長官――いえ、お祖父ちゃんに会うわけにはいかない」


 ボロボロの体でイフリートを地面に突き刺し、支えにして立ち上がる。


「私はあの人から託された。ならばすべてを終わらせるまではまだ死ねない!!」


 その執念はモリガンを圧倒し始めていた。

 絶対的不利な状況に追い込まれているはずだが、燃えたぎる闘志がアイラを纏っている。


 それはまさに炎のようだった。



「私は……第95代魔法省長官、アイラスペンサー!! 魔法省長官の名において、あなたに勝つ!!」




「ククク……バカな子……! この状況で勝てるわけないでしょ!!」


 エクスカリバーを振りかざそうとした、次の瞬間――。



<今だ!!>


 モリガンの足元の地面から大量の炎が噴き出る。

 炎はモリガンの腕を焼き尽くし、空へと昇った。



「ぐ……ぐあああ!!」

「あなたの攻撃がヒントになったわ……!」


 エクスカリバーはモリガンの手を離れ、アイラの近くの地面に突き刺さる。



「き、貴様……!! よくも――」



 モリガンの言葉を最後まで聞くことはなかった。


 炎が焼いた建物の一部がモリガンにのしかかったからだ。

 

「ぐはあっ!!」


 吐血したモリガンになすすべはない。

 燃え盛る建物の下敷きになり、後は焼け死ぬのを待つのみだ。



「……モリ――」



「来るなあぁ!!」


 思わず駆け寄ろうとするアイラに大声で叫ぶ。

 


「敵の情けなんて必要ない……! 何をどうあがこうと、勝つのは私達なんだから……!」


 燃えさかる炎に纏われていくモリガンの表情には苦痛はなかった。

 あったのは気味が悪い笑み。


「モリガン……」

「残念ね……新たな世界ができる瞬間に……立ち会えないのは……! 精々抗うがいいわ……最後の1人になって、絶望を叩き込まれるまでね……!!」


 炎に包まれながらもモリガンの高笑いが響き渡る。

 アイラはそれをただ聞いていることしかできなかった。



「……くっ!」

<アイラ!!>


 ようやく高笑いが止まった頃、アイラはその場に倒れこんだ。

 イフリートは悪魔に戻る。


「大丈夫か!?」

「ええ……」


 息は荒く、傷も負っている。

 最早戦える状態じゃないのは明白だ。


「一度休もう。この辺りのシェルターは――」

「いえ、まだ休めないわ」


 そう言うとアイラはイフリートに捕まり立とうとする。


「私は……長官だか……ら……」


 既に意識はなかった。

 力なく寄りかかるアイラを抱きかかえイフリートは立ち去ろうとする。




 が、イフリートの視界を捉えたものがあった。




「エクスカリバー……」





「はあ……はあ……」


 風魔法が竜巻を起こし、敵を薙ぎ払う。


「はあ……はあ……!! もう……何人を……」

<少し休みましょう>


 イギリス、ロンドン。

 シャーロットはこの地で敵と戦っていた。


 両親を助け出すことには成功したものの、この人数差はあまりにも過酷だ。

 


「いたぞ! 敵だ!」

「……また!?」


 すぐに増援が駆け付ける。

 休まる暇などありはしなかった。


<仕方ない、逃げましょう!!>

「……ええ」


 風魔法で空を飛び、遠くのビルの屋上まで避難する。

 不本意ではあるが、戦況はどう考えても不利だ。



「みんなは無事かな?」 

<分からないけど、今は信じましょう>

「……うん!!」


 水を飲み、一休みする。

 もう底をついていた体力が少しだけ回復していた。



 その時、後方で転送魔法の光が放たれる。


「敵――あなたは……!」



 姿を現したのは、かつて出会った男だ。


「少女、お前見覚えがあるな」


 白いローブを着た長身の男。

 ウェイドだ。



「……初めて会ったのも同じ状況でしたよね」

「そうか、横浜の時のあの少女か」


 2人を包む空気はどこか異様であった。

 そこには敵対心だけではない、何かが確実にあった。

閲覧ありがとうございます。

プロローグ含め100話到達です。

投稿開始がもう2年ぐらい前なのが驚き。


100回なのでもし番外編が読みたいキャラがいたら是非感想か活動報告へ!


感想、評価、レビュー、ブクマ大歓迎です。

次回もよろしくお願いしますm(_ _)m

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