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契約悪魔と魔法使い  作者: 高橋響
プロローグ
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第0話 「屋上のサバト」

初投稿作です、よろしくお願いします。

 もしクラスの女子から呼び出されたら、しかもその子が好きな子だったとしたら、ほとんどの男子は浮かれ気分で呼び出された場所へ向かうだろう。

 それは俺、櫻津明日夢おうづあすむも同じことだ。そう、俺は今ある女生徒からの呼び出しを受けて屋上へ向かっている。


 一刻も早く着きたい気持ちからなのか、自分自身でも信じられないスピードで階段を駆け上る。

 当然こんな経験は初めてで、正直高校生にもなって今にもスキップしたくなるぐらい浮かれている。

 きっともうあの子は来ているのだろう。男として女子を長時間待たせるのは絶対にダメだ。



 俺を呼び出した女子の名は藤導切歌とうどうきりか。2年生になって転校してきて同じクラスになったのだがこの2ヶ月間俺が彼女に持ったイメージは何というか、“ミステリアス”な女性だということだ。彼女は見た目はロングヘアーの美人だしスタイルも良いし基本クールで清楚な女性なのだが、なぜか笑顔を見せたことは一度たりともない。休み時間も昼食も基本1人で過ごしているし、誰かと登下校している様子もない。


 けど俺はそんな彼女にいつの間にか惹かれていた。いつからか、それは自分でも覚えていない。彼女と話したこともほとんどないのに俺は気づけば彼女が好きになっていた。

 多分彼女の持つミステリアスさが俺を惹きつけたんだと思う。俺は彼女のような女子が昔から好みで不思議と憧れを持ってしまう。その上あの容姿。俺が彼女を好きになるのに時間はかからなかった。

 そして今日、俺は彼女から放課後の屋上に呼び出されたというわけだ。



(もしかしたら、告白……かな……? なんてな……)

 そんな淡い期待を胸に秘め俺はいよいよ屋上のドアへたどり着いた。

 息は切れて体中汗だくだ。俺は呼吸を落ち着かせ汗を持っていたミニタオルで拭き、加えて汗ふきシートで全身を拭いた。


「多分大丈夫……だよな」


 心臓の鼓動が毎秒上がっていくような感覚が頭から足まで伝わってくる。手はもう緊張で震えている。

 でもここでビビッてたらこの先何もできない。行くしかない。俺は覚悟を決めドアを開いた。

(よし……! いくぞ……!)

 音を立てドアが開く。



「……え……?」




 俺の眼に飛び込んできたのは屋上の床一面に描かれた巨大な魔法陣とその中央に立つ藤導の姿だった。


「急に呼び出してごめんなさい、櫻津君」


 俺が来たのを待っていたように話し出す藤導。俺は目の前の光景に驚きを隠せずにいたがとりあえず返事をし藤導の方へ近づく。


「い、いや………、別に大丈夫だけど……」

「今あなたは冷静ではないでしょうけど、落ち着いて聞いて欲しいの。今日、ここに呼び出したのはあなたにお願いがあるからよ」


 淡々と話を続ける藤導。その姿に俺はいつの間にか見入っていた。もちろん話もしっかり聞いていたのだがそれ以上に藤導の姿は美しく、まさに可憐という言葉が似合うのだ。


「お、お願いってなんだ?」


 俺の中にかすかに残っていた期待が再燃した。

 この魔法陣は気になるけど、ただのドッキリかもしれない。第一藤導が書いたものとは限らないんだ。そうだ、これは関係ないんだ。

 という風に頭の中で藤導と魔法陣は関係ない、そう決めつけて俺は彼女の話を聞く。実際にはただの願望なのだが。



「簡潔に言うわ。櫻津君、あなたに悪魔と契約して魔法使いになってほしいの」



 …………ん?

 何を言ってんだ藤導? 深夜アニメにでも影響されたのか?


「いやいや、いきなりこんな冗談言われても――」

「冗談なんかではないわ。私は本気で言ってるの。いきなりで混乱してるかもしれないけど言う通りにした方が身の為よ」


 何なんだ一体? こいつ本気か? だいたい悪魔なんているわけ――



「答えなさい。契約するかしないか」


 おいおいおいおいおいマジかよ。『悪魔なんているわけない』と喉元まで出かかっていたその時、突如藤導は俺の体に刀を向けてきた。


「お、おい……!」

「答えなさい」


 藤導は刀を向けたまま徐々に俺に近づいてくる。

 ヤバい、この目は本気だ。


「い、いきなり契約しろなんて言われても『はい分かりました』なんて言えるかよ!」

「そう……」


 藤導は小声で呟いた。前髪の影と重なってよく見えなかったが心なしか、悲しそうな目をしていたような気がする。

 だが俺だってそんなわけの分からない契約なんて結ぶわけにはいかない、だから断った。




「……は……?」


 次の瞬間、俺は藤導に刀で切られていた。

 胸部に鋭い傷ができ、俺の頬に血が付着する。


「ぐあああああ!!」

「あなたが拒否するというのならば、その先にあるのは死よ」



 いていていていていていていていてえ!!

 何なんだこれ!? なんでこんなことに!? マジにヤバい! このままじゃ殺される!


「や、やめろ! く……来るなぁ!」


 刀を構えている藤導に血まみれの手を振りかざし遠ざけ、俺の今現在出せる力を全て使い屋上のドアへ向かった。胸のあたりからは大量の血が出ており魔法陣の一部を真紅の血で染めている。


 ここにいたら死ぬ!

 不思議と藤導は俺を追ってこない。ただ立ち尽くし俺を見ているだけだ。

 その理由はドアノブを握ったらすぐに分かった。


「あ、開かねぇ……!」

「無駄よ。そのドアには既に鍵がかけられているもの」

「いつの間に鍵が……!?」


 俺がここに来てからほんの数分しか経っていない。その後に誰かが来た気配も鍵が閉められた様子もなかったはずだ。


「櫻津君、あなたにはもう道は残されていないわ」

 もう選択肢はない。このままだと殺されるかいずれ大量出血で死ぬ。

 それだけは嫌だ。死にたくない。生きたい。まだキスすらしてないのに死にたくない。

 さっきまで緊張で震えていた俺の体は今は痛みと恐怖で震えていて涙も出ている。もう立つ力もなくなり俺はその場に倒れこんだ。

 残された微かな力を振り絞り答える。



「わ……分かっ……た……」


 意識が朦朧もうろうとしてきた。急がないと死ぬ。


「け……契約……する……か……ら……」



 

 薄れていく意識の中、ほんの僅かながら聞こえた会話があった。


「おい切歌、早くサバトを済ませないとこの小僧死んじまうぞ」

「分かっているわ。すぐ始めましょう。彼を死なせるわけにはいかないもの」


 サバトって確か悪魔の集会だか何だかの名前だっけか?

 この明らかに藤導とは違う声の主は誰なんだ?

 

 気を失う前の俺が最後に見た光景、それは俺の体から発しているまばゆい光、そしてぼんやりと映った少女の姿であった。

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