変化する日々
最近フェアチャイルドさんが変わった。またかと思うかもしれないが本当の事なのだから仕方がない。
それに悪い方に変わったわけでもない。
気付いたのは最近だけれど、思い起こしてみれば夏の頃からフェアチャイルドさんは前向きで明るい雰囲気になっていたように思える。
都市外授業の時、歩いている最中はマスクはしないんだけれど、マスクを外しても咳が出ない事に気づいたらしく普段の生活では寝る時以外はマスクを外して過ごすことが多くなった。
それに伴ってなのかは不明だけれど、最近はよく笑うようになった。
前は表情の変化がマスクの所為もあって読み取りにくかったけれど、最近はころころと表情が変わるようになった。マスクが取れたのがうれしいのだろうか? アールスにも見せてあげたいな。いちおう手紙には書いておいたけれどまだ届いていないだろう。
一番変わったのはやはり夜だ。
それはある日の事だった。僕は少しの寝苦しさを覚えて夜中に目が覚めた。
元々眠りの浅い僕は多少の事で目が覚めてしまう事が多々ある。いつもなら気にせずもう一度目を閉じて眠るのだけど、今日は少し、様子が違った。
僕の横に暖かく柔らかい物が置かれている。横に視線をやると窓から入る光を薄ぼんやりと照り返している薄水色の髪があった。
僕は無意識にその髪を軽く撫でた。軽く癖のある髪は柔らかく手触りがいい。
髪の感触を楽しんでいるうちに僕はようやく何故フェアチャイルドさんが僕の横で寝ているのか? という疑問に至った。
起き出た後戻って来た時に間違えたのだろうか?
フェアチャイルドさんを元のベッドに戻すかどうか悩んだけれど、髪の触り心地……いや、動かすと起きてしまうかもしれないと考えそのままにしておいた。
朝起きると早速僕はフェアチャイルドさんに問いただしたけど、迷惑ですか? と可愛らしく上目遣いで言われ、僕は強く言い出す事が出来なかった。
実際迷惑というほどではなかったんだ。だから僕はその日はまぁいいかと軽く流した。
だけど、それ以来時々フェアチャイルドさんが僕のベッドに潜り込んでくるようになった。
一度きちんと話し合う必要があるだろう。
他にも、休日になるとフェアチャイルドさんは魔法の補講に通うようにもなっていた。
魔法を使う為というよりは魔法と精霊魔法の特性の違いをはっきりと知って僕とフェアチャイルドさんのできる事の違いをはっきりと知識として知っておきたいらしい。さすがに二つの魔法の違いは、精霊魔法をよく知らない僕では教える事は出来ない。フェアチャイルドさん自身が確認するしかないだろう。
魔法の補講は午後にやる為、午前に剣術の補講に通っている僕とは休日に会う時間が減ってしまった。
少し寂しい気もするけれど、フェアチャイルドさんに生気が漲っているように見えて僕は嬉しい気持ちで満たされていた。
そんな訳で休日の午後は一人で過ごすことが多くなった。もっとも、元々部屋に籠って特訓やら趣味の裁縫やらをしていただけなのでやる事は変わらないんだけれど。
話が逸れるが、裁縫の腕を見込まれて最近先生から依頼を受けるようになった。
依頼というのは下級生達の衣服の修繕だ。男の子の服女の子の服、まだ着られる物から下の子へのお下がりにする物まで僕は色々な服を請け負っている。
今も休日を利用して依頼された服を修繕している。
擦れて穴の開いた部分にアップリケで穴を塞ぐ作業を延々と繰り返している。
子供のお世話に服の修繕、それに普段の依頼の達成で今僕はちょっとした小金持ちだ。
もうそろそろフェアチャイルドさんの誕生日だから、今年は頑張っているフェアチャイルドさんへのプレゼントを奮発してもいいかもしれない。次の都市外授業が終わったらプレゼントを見繕わなくちゃな。
2016/10/03に設定のちょっとしたつけたしの為に『三人の休日 その2』の一部を改変しました。
一部の魔法の名称が変わっただけでストーリーには変わりはありません
具体的な設定の変更は、シエル様以外の特殊神聖魔法の名前をルビ付きにしました




