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エウネイラ その4

「海を見に行こう」


 国冒連で無事案内人を確保し、一先ずの準備の相談も終わったので余った時間で海を見に行く事になった。

 だがまずはアースも見に行きたいと言っていたので海に行く前にアース達を迎えに行かなくては。

 道中ではまだ見ぬ海に対してすっかり舞い上がってしまっているアールスとアイネのお陰でにぎやかな物となった。


 アースとヘレンと合流してとりあえず東へ向かう。

 行き方は分からないが探知をして街の作りを確認しながら行けば迷子になる事はない。

 今日僕はレナスさんと一緒にヘレンに乗せてもらい移動だ。アースの方はカナデさんとミサさんが乗っている。

 普段は魔獣に乗って移動はしないので滅多にしない体験にカナデさんとミサさんははしゃいでいた。

 三十分も歩けば道の先に海が見えてくるようになった。


「レナスさん見えてきたよ」

「えっ、どこですか?」

「道の先だよ」


 海が見える方向を指さすと僕の後ろにいるレナスさんは僕の肩に両手を置いて身を乗り出した。いい匂いがする。


「あっ、本当ですね。何か見えます。黒いですが」

「天気が悪いからだと思うよ」


 今日はあいにくの曇り空だ。


「天気が悪いと黒く見えるのですか?」

「海は光を反射してるからね。太陽の光の量が少ないと暗く見えるんだよ」

「なるほど。なら天気のいい日はさぞや眩しく輝いて見えるのでしょうね」

「そんな事無いと思うよ。水は光を透過もするからね。吸収しきれなかった光が反射されて海に色がついているように見えるんだよ。もっとも魔素が融けてるこっちの海はどうなってるのかは分からないけど」

「そうなのですか……天気のいい日にも見たいですね」

「そうだね。でも今は雨期だから難しいかもね」


 帰りはまっすぐフソウに向かう予定だからエウネイラに寄る予定はない。


「やはりアーク王国に帰った後イグニティに旅行に行くという話も真剣に考えるべきですね」

「んふふ。そうだね」


 そして、アースに乗っているカナデさん達も気づいたようで大きな声が聞こえてきた。


「あっ! あれが海ですねー!」

「えっ、どこですカ?」

「あれですよあれぇ~」

「海見えたの!? あたしも見たい!」


 アイネも上にいる人間には海が見えてきた事に気づいたようで騒がしくなってきた。

 それから五分くらい歩くとようやく開けた場所に出た。

 道の先には背の低い堤防があり、堤防に近寄ってみると堤防の先は非常に低くなって二階建ての家位の高低差があった。

 どうやら堤防から下にある浜辺には降りられないようになっているようだ。

 

「すげ~。ひろーい!」

「降りられないのかなー」


 アールスも降りられないか周囲を見渡していた。

 堤防周りをうろついているアールス達に対して僕とレナスさんはヘレンに乗ったまま海を見ている。


「近くで見るとちょっと赤っぽいですね」

「そうだね。海が暗い所為で分かりにくいけどちょっと赤っぽいや」


 海は今の所穏やかで波の音も穏やかだ。

 左手方向には事前に聞いていた通り三角州があり、そこへ架かる橋も見える。

 右手方向を見れば小さな岩場がありカモメのような白い鳥が集まっているのが見える。


「空気中の魔素もそんなに濃くないんだよな。海の近くなら濃くなると思ったんだけど」

「不思議ですね」

「世界は意外と魔素に包まれていないのかもしれない」

「ナギさんナギさん。見てください。あそこに見た事のない動物がいますよ」


 レナスさんの腕が背後から伸びて来て海の右手側を指した。

 鳥のいた岩場よりも手前の浜辺に確かにアザラシのような動物がいる。


「本当だ。なんていう動物だろうね」

「足の代わりにひれがついていますし魚でしょうか? 陸に上がる魚もいるのですね」

「いや、多分魚じゃないんじゃないかな。前の世界でも似た動物はいたけど哺乳類だったよ」

「哺乳類? あれがですか?」

「うん」


 たしか尾ひれの付き方で魚類と区別がついた気がするがこっちではどうだろう。


「水の中でも暮らせるんですね……人間もやろうと思えばできるのでしょうか?」

「難しいんじゃないかな。ああいう動物は水中に適応できるように進化してるわけだから……」

「残念ですね。海の中も興味があるのですが……」

『レナスー。わたしがうみのなかみせようかー?』

「それはいいね。僕も興味あるよ」

「じゃあお願いできますか?」

『まかせて!』

「あっ、海の中を映すのはいいけどあまり大きな画面にしちゃ駄目だよ。騒ぎになっちゃうかもだからね」

『ぶー。それくらいわかってるもん!』

「んふふ。ごめんごめん。でも他の皆にも見えるようにしてくれるかな?」

『それぐらいかんたんにできるもん』


 ライチーは海の方を向き、自分のマナを海へ向けた。

 水というのは流体だからかマナをしみ込ませやすい。僕も試しに海にマナを向けてみるが魔素が融けているにもかかわらずするりと入っていく。

 というか普通の水よりもさらにマナをしみ込ませやすい気がする。色々な成分が溶け込んでいる分普通の水よりもマナが入り込む隙間が多い様だ。


『レナスー。出すよー』


 ライチーが僕達の目の前に海の中の光景を映し出してくれた。

 その映し出してくれた光景はは色調補正しているようで明るく色鮮やかだ。しかもちゃんと魚や海藻も動いている。


「ライチーすごいな。ちゃんと動かせるんだね」


 僕がナスの雷霆の力を借りても動かす事は難しいだろう。マナで受け取った光景を写真のように切り取る事しかできない。


『えへへ、すごいでしょー』

「ライチーさんすごいです! これが海の中なんですね」

「この色って本当にこうなってるの?」

「んー? あかるいときとかわらないよーにはしてるよー?」


 海の中は薄桃色だった。前世の青い海中を想像していた僕からしたら違和感がある光景だ。

 色が薄いお陰で視認性は悪くない。前世の海と同じくらいには見えていると思う。


「じゃあ本当に赤いんだ」

「すごいですね。湖とは全然違います。植物みたいな物もありますね」

「うん。海にもああやって植物が生えるんだ。物によっては出汁に使ったり食べられたりするんじゃないかな」

「へぇ……こちらでも使っているんでしょうか?」

「後で市場に行って売ってるか確かめてみる?」

「ですね。間近で見てみたいです」

「じゃあ決まりだ」




 海を堪能した後は三角州へ渡る橋を近くで見る為に堤防沿いに北上した。

 本当なら三角州側にも渡ってみたいが今日はさすがに時間がない。

 橋はとても大きく遠くからでもその威容を窺い知る事が出来たが、近づけば石で出来た巨大な橋は今まで見てきたどんな橋よりも大きく、堅牢な作りに見えた。

 幅も大型の馬車が横に四台は通れそうなほど広くこれならアース達も安心して通れるのではないかと思わされるものだった。


 そして、橋を後にして預かり施設に向かう途中にある市場へ寄った。

 市場には僕達が見た事のない食材が多くあった。

 海藻はもちろんの事東側の食材もあるようで様々な食材を見て楽しむ事が出来た。


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