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エウネイラ その2

 首都ネルに着くと僕達はいつものように二手に別れ預かり施設の確認と宿を取りに向かう。

 僕は預かり施設に行くので通訳として宿を取りに行く人達にはゲイルも一緒に連れて行ってもらう。

 この街には四日留まる予定で、その間にエウレ湖までの案内人を探そうと思っている。国冒連で冒険者を募れば見つかるだろう。

 宿の確保には仲間内で最もエウネイラ文字が読めるレナスさんとその次に読めるカナデさん、そして外国に慣れているミサさんに一緒に向かってもらう。

 レナスさんとカナデさんほどではないが僕とアールスも一応エウネイラ文字は読めるので預かり施設を探すぐらいはできるだろう。

 それとアイネは移動中に馬車内の荷物の整理をアールスと一緒にやってもらうために僕と一緒に来てもらう事になった。


 首都ネルは活気があり、大通りにはきちんと歩道と馬車が通る車道が分かれていた。

 しかし、横断歩道のような物は無い。反対側に行くには車道を突っ切るしかない様だ。

 歩道と車道が分けられるだけ馬車の往来が多いのだろう。実際歩道を歩いている人の密度は高く走り抜けるのは不可能なぐらい人と人の隙間は狭い。スリに注意した方が良いだろう。

 そして、その人の多さの為か人を運ぶ為の馬車の需要も多いようで、乗合馬車をよく見かけた。

 しかもその乗合馬車は人数を多く乗せる為か大型馬車並みに大きく、引いている動物も馬ではなく象のような大型の動物だ。

 おかげでアースは珍しい動物以上の注目を浴びていない。アースはその事に少し不満そうだが。

 そして、水上都市という前評判の通り水路も多い。どうやら交通の便にも利用しているらしく水路の幅は広く小舟が行き交っていた。

 観光目的で一度乗ってみるのもいいかもしれない。


 小一時間程で目的の預かり施設を見つける事が出来た。

 そこで話を聞くとどうやらエウネイラでは道中で見た大型動物を預かる場所があるらしく、アースとヘレンもそこで預けるように言われた。

 どうやら荷物とは一緒に預かってもらう事は出来ない様だ。それならそれでいいだろう。

 荷物を預けた後大型動物用の預かり施設の場所を聞き、皆で教えてもらった場所へ向かう。

 

 アースとヘレンには馬車は無いが歩道は大型の魔獣が歩けるほどの幅は無いので仕方なく車道を歩いてもらう。

 その際に僕はアースに乗り、アールスにはヘレンに乗ってもらい二匹にちゃんと人がついている事を主張しておく。

 ナスとヒビキはアイネと一緒に歩道を歩いてもらう。

 大型動物用の預かり施設は荷物の預かり施設から西に向かい、郊外に出た所にあると聞いている。

 人の足なら歩きで十分もかからないというのですぐに見つかるだろう。


「マナを広げて場所探せないの?」


 アースが突然そんな事を聞いてきた。


「ん。出来るけどやろっか」

「そうしてくれる? 早く寝たいの」

「んふふ。分かったよ」


 普通の建物で商いしているお店を探そうとすると看板の文字まで読み取らないといけない為、広範囲を探そうとするとかなり脳と神経を使う。

 しかし、大型動物だけを預かる施設なら方角も分かっているし大雑把に広げて探るだけで分かるだろう。

 西の方向にマナを広げ探ってみるとすぐに分かった。どうやら街の外に牧場のような柵に囲われた土地があるようだ。大型の動物もその土地で歩き回っているのが感じられる。


「見つかったよ」


 方向を指示して郊外へ向かう。

 郊外へ出ると強い風が南の方から吹いてきた。南の方には柵に囲まれた土地があり、所々に大型動物の姿もある。きっと預かり施設か大型動物の貸し出し用の施設かも知れない。

 大型の動物はアースと同じくらいの大きさだけれど、短足気味なアースとは違い象のように足が長く、足の長いヘレンとは違い足が太い。

 頭には豚の鼻をさらに延長したような長い鼻があり、白い角が鼻の両脇から生えている。

 もうこれは象ではないかと思うが僕の記憶の中にある象とは違い耳が天に向かってピンと生えている。

 大きな身体のお尻には細く小さな尻尾がちょこんと生えている。

 そして、つぶらな瞳が愛らしい。

 そうやって改めてよく見てみれば大きさ以外の外見的特徴は象よりも僕の前世の記憶の中にある豚や猪に近いように見える。

 

「あの仔達も大きいね。アースと同じくらいの大きさかな」

「ぼふん。私の方が美しいわ」

「んふふ。あの仔達には無いみたいだけど、アースの体毛は本当にきれいだよね」

「当然よ」

「脚はあの仔達の方が長いけどね」

「振り落とすわよ」

「あははっ、ごめんごめん」


 身体を軽く揺らすアースに対して撫でて落ち着かせる。

 そして、預かり施設の受付っぽい建物を見つけるとアースから降りて建物の中に入る。

 受付に人がいたので魔獣達を預けられるかを聞いてみると問題なく預けられる事が分かった。

 ……と安心して魔獣達の詳細を話すと預けられるのは大型の魔獣だけだという事が分かった。

 というのもこの施設には大型動物用の厩舎しかなく、それ以外の大きさの動物は自由に移動できてしまうので預けられないのだという。

 なんという事だ。そうなるとナスとヒビキも一緒に泊まれる宿を探さなければならない。

 受付の職員さんにはちょっと待ってもらい急いでレナスさん達に連絡を取る事にした。

 アールスに頼んで連絡用に契約しているライチーを通してこちらの状況を伝えてもらう。

 元々ゲイルは一緒に宿に泊まる予定だったので動物可の宿を探しているはずだが、もしも探し出した宿が小型動物だけ泊まれる宿だとナスが泊まれないかもしれないのだ。

 そして、返って来た返事はもうすでに宿は見つかっていてナスも泊まれそうという事だった。

 これなら一安心だ。

 手続きを進めてアースとヘレンを預かってもらう。

 その際職員さんに世間話で僕達がアーク王国から来た事を告げると東にある海はもう見たかと聞かれた。


「海? 海があるんですか?」

「ええ、ありますよ。今の季節ではまだ泳げませんが海沿いには食事処が多くあるんですよ。

 海を眺めるながら食事を取るというのが観光客からは人気があるそうです」

「へぇ。でも街の東には川の中に水上都市があると文献で読んだ事があるのですが」

「ああ、違いますよ。よそから来る人は良く勘違いしますが、東にあるのは島なんです」

「島?」

「ええ、三角形をした島です。この街の北には北西から流れて来る川がありまして、その河口から流れ出てきた土砂が溜まって出来た島なんです」

「ああ、なるほど」


 中州ではなく三角州だったのか。

 三角州と大陸の間に水が流れているので川である事には違いないけれど、その川の先は海だったのか。

 そうなるとかなり大陸に食い込んでいる海だ。

 経度としては少なくともグランエルよりは北に位置するはず。そしてそのグランエルから海までは普通に歩いても一ヵ月近くかかる距離にある。

 ここが大陸の端っこというのならまだ分かるが東にはまだまだ大陸が続いている。

 まるで大陸が何かに抉られているかのようだ。もしかしたら神話の時代に神様達と魔物の実際に戦いの影響で削られてしまったのかもしれないな。

 エンソウでは一度浄化されたっぽいし可能性はありそうだ。 

 もしくは東側と西側は元々別々の大陸であり、大陸移動の影響でくっついた……というのも浪漫がある仮説かも知れないな。


「……あの、海に近いですが魔物とか大丈夫なんですか?」

「ええ、ええ、その質問も良く聞かれますよ。答えは大丈夫です。何故ならこの辺りの海は海の主の縄張りだからです」

「海の主ですか?」

「ええ、巨大なクジラの魔獣でしてね、魔物が嫌いらしく全部撃退しちゃうらしいんですよ。

 でも私達人間には無関心らしく危害を与えてこないので海で魚も捕れるんです」

「海の魚が食べられるんですか!?」

「まぁそれなりに高級品ですけどね。余裕があるのなら一度食べてみるのをお勧めしますよ。特に生の魚の肉を切ってシッケイラというたれに漬け込んだ後パスタに絡めて食べるマリアーヌという料理がおすすめです」

「生の……」


 刺身って事か?


「抵抗ありますか? あるのなら焼いた料理もありますよ」

「えと、シッケイラってなんですか?」

「シッケイラは黄色みのある透明なたれですよ。そのまま舐めるとしょっぱいですが魚の肉と一緒に食べると本当においしいですよ」

「なるほど……機会があれば食べてみようと思います」


 醤油か? 醤油なのか?

文章を訂正しました

大きさ以外の外見的特徴は僕の前世の記憶の中にある豚や猪に近いように見える。

そうやって改めてよく見てみれば大きさ以外の外見的特徴は象よりも僕の前世の記憶の中にある豚や猪に近いように見える。


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― 新着の感想 ―
>「シッケイラは黄色みのある透明なたれですよ。そのまま舐めるとしょっぱいですが魚の肉と一緒に食べると本当においしいですよ」 >醤油か? 醤油なのか?  これでしょっぱいが酸っぱいの聞き違いで、ポン酢…
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